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AI翻訳はどこまで実務で使えるか 「100種類超の文書を2カ月で翻訳」を迫られた神戸製鋼の実例(1/3 ページ)

以前から日本語を母語としない従業員を採用してきたが、日本語の読み書きができないスタッフを迎え入れるのは初めてだ。しかし、社内文書の多くは日本語版。そこで自動翻訳サービスを利用することを思い付いた。しかし、セキュリティ、コスト、短期導入と求める条件は多い。神戸製鋼はどうしたか。

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 海外にも多数の顧客企業を抱えるグローバル鉄鋼メーカー神戸製鋼所(以下、神戸製鋼)では、契約書や技術文書、マニュアルなど外国語で書かれた文書を扱う機会が多い。文書の翻訳には機密性や重要度を考慮し、業者に依頼したり辞書を片手に自分で翻訳したり、時には翻訳サイトを利用することもある。

 ただ、人手で翻訳するにせよ翻訳サイトを利用するにせよ、ドキュメントファイルを丸ごと翻訳するのは労力を要するため、必要な部分を抜き出して部分的に翻訳することも多かったという。

 ある時、技術開発本部に急きょ欧州から2人の技術者を迎え入れることになった。以前から日本語を母語としない従業員を採用してはいたが、日本語の読み書きができない技術者の受け入れは今回が初めてだ。だが、社内文書は全て日本語。周りの従業員も十分に他の言語でコミュニケーションを図れるわけではなかった。突如直面した「言葉の壁」にどう対応したのか。神戸製鋼の担当課長に話を聞いた。

技術者の受け入れまでに残された時間は2カ月

 神戸製鋼の長峯 勲氏(技術開発本部 企画管理部 ICT担当課長)は、2人の技術者を受け入れることになった当時の状況について次のように振り返る。

神戸製鋼 長峯 勲氏
神戸製鋼 長峯 勲氏

 「当社の業務に従事するには、まず社内規定や規則が書かれたマニュアル全てに目を通し理解してもらわなければなりません。しかし、マニュアルは日本語版が主です。欧州から技術者を迎え入れるに当たり、それら全てを英訳する必要がありました。問題は、受け入れまでに残された時間です。配属まで2カ月に迫り、マニュアル全てを英訳する余裕などありませんでした」(長峯氏)

 人手で翻訳するにしてもアウトソースするにしても、100種類以上もの膨大なマニュアルの翻訳には相応の時間を要する。残された選択肢はビジネス向け自動翻訳サービスの活用だ。早速、サービスの比較検討に取り掛かった。必須条件は「低コストで導入できること」「2カ月で現場のPoC(概念実証)から導入までを終えられること」「サービスが神戸製鋼のセキュリティポリシーを満たしていること」だった。

 神戸製鋼ではクラウドサービスを利用する場合、既定のセキュリティ要件を全て満たす必要がある。「サービスベンダーの仕組みや構成、運用、体制が神戸製鋼の定める基準に達しているか(『ISO27000』やプライバシーマークの認証を受けているか)」など、これらを全てクリアしなければ、利用できない。

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