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会議の実施状況とIT活用(2020年7月)/前編

2020年1月と比較して今の会議の実施状況はどう変化したかをアンケート調査。全体としては会議時間が短くなる傾向が見えたが、時間が短縮したことがそのまま生産性アップにつながっているかは疑問が残る結果となった。

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 キーマンズネットは2020年7月1〜15日にわたり「会議の実施状況とIT活用」に関する調査を実施した。直近で同様の調査を実施したが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)感染拡大を受けた、いわゆる「コロナ禍」を契機としたテレワークの導入が進んだことから(関連記事1関連記事2)、現状を知るべく、改めて調査したものだ。全回答者130人の内訳は、一般部門が48.5%、情報システム部門が35.4%、ベンダーやSIerとしての立場が12.3%などだった。

 今回の調査では、会議時間に縮小傾向が見られることが明らかになったが、その背景には、単純に効率化して生産性が高まっているとは言い切れない可能性が見えた。なお、グラフ内で使用する合計値と合計欄の値が丸め誤差により一致しない場合があるので、事前にご了承いただきたい。

コロナ禍で会議はスリム化が進む傾向

 調査ではまず1週間当たりの会議数や会議時間を調査した。

 会議数は「週2〜4回」、会議1回の平均時間は「30分以上、1時間未満」がそれぞれ4割を超えて最も高い結果となった。また会議への平均出席者数は「6〜10人」が、会議が開催される時間帯は「13:00〜15:00」が、こちらもそれぞれ4割近くの票を集めて最も高く、この結果などからコロナ禍にどのような会議がなされていたのか、平均的な会議形態が見えてきた。

 そこでこれらをコロナによるテレワークや在宅勤務などの影響を比較的受けていなかったと思われる2020年1月の調査と比較した。その結果、会議開催の頻度に変化は見られなかったが、会議時間は短くなる傾向が見られた。具体的には会議の平均時間を「1時間未満」とする割合は2020年1月は49.1%、今回は57.7%と半年足らずで8.6ポイント増えた。テレワークなどの影響で遠隔会議が増えたことが影響しているものと考えられる。会議時間を1時間ではなく50分のように、次の会議への切り替え時間を想定して設定するケースや、1回あたりの時間制限があるツールの利用などが影響した可能性もある。物理的な会議室を時間で確保する場合、時間いっぱいまで場所を使う意識が強く働いていた可能性もある。

図1
図1 会議の回数

長い会議への不満は減少傾向に

 テレワークを推奨する状況が生まれたことによって会議への不満や課題感にも変化はあったのだろうか。

満足度を調査したところ、全体の63.8%が不満を抱えていることが分かった。具体的には「開催するまでもない会議が多い」が51.8%、「1回当たりの会議時間が長い」「結論が出ない会議が多い」「参加の必要性を感じない会議が多い」の3項目が同率で44.6%、「参加する会議が多く業務時間が削られる」が30.1%と上位に続いた。

 この結果をコロナ禍以前の2020年1月の調査と比較したところ、不満との回答が76.3%から63.8%と12.5ポイント減少していた。

 また不満に感じる点についても、前回は「1回当たりの会議時間が長い」が60.5%と1位であったが、今回は2位で44.6%と15.9ポイントも減少している。前項でもコロナ前後で遠隔会議が普及したことによる会議の「短縮化」傾向に触れたが、この点においては会議に対する満足度の向上につながっているようだ。一方で会議数についてはコロナ前後で特に変化はなく「参加する会議が多い」や「開催するまでもない会議が多い」「結論が出ない会議が多い」といった不満は残り続けているようで、今後は会議の開催目的や参加者の役割などの明確化や進め方の改善などが課題となってきそうだ。

 ただし、これら課題の解決に何か取り組んでいるかどうかで言えば「何も取り組んでいない」が全体で53.0%と半数を超える結果になっている。

図2 
図2 会議に対する課題や不満

「Web会議のために出社」「顔色うかがい会議」の生産性

 コロナ禍での会議で影響を受けるのは社内だけではない。取引先などの社外関係者と会議や商談をするケースにおいても、この環境下ではできるだけの工夫や配慮をしなくてはならないだろう。そこで実際に業務遂行上、問題となったことをフリーコメントで聞いたところ、大きく分けて2つの問題が浮き彫りになった。

 1つ目は会議そのものに関する課題だ。

 課題が大きいと思われるのは過去の慣習から脱却できない組織が残っている点だ。「会社が変化を求めない方針なので、そもそも顔を合わせる以外の方法を考えていない」「Web会議をするのに、なぜか会社に出社させていた」など、感染症流行前と変わらず対面型会議のために出社を求められるケースもあったようだ。変化を嫌い、従来の方法に固執して新しい方法や解決策を受け入れない組織は、従業員にリスクを負わせる状況にあるようだ。

 中には、新型コロナウイルス感染症の拡大を受けて会議の「3密」(密閉、密集、密接)を回避しようと、参加人数を削減したが、「テレワークに移行してWeb会議を導入した結果、参加メンバーを増やせるようになり、かえって不要な会議に呼ばれるようになった」という意見もあった。手軽に参加しやすいWeb会議ツールは会場の制約がない分、ステークホルダーになる可能性があるメンバー全員を招へいできてしまう。数十人が参加するWeb会議で発言は数人のいといった、「情報共有会」への招待が増えて辟易する方もいるようだ。

 この他、「直接会って話ができないので雰囲気が分からず、余計に時間や気を使ってしまう」「直接面と向かっていないので、顔色などが判断できず真意を測りかねるときがある」と、"空気”が読めないことを課題とする意見も多かった。仮に、空気が読めないゆえに会議が報告会化して議論が活性化せず、結果的に開催時間が短縮しているのだとすれば、今後の生産性の面で課題が残る可能性も考えられる。

 2つ目はWeb会議やテレビ会議ツールなど遠隔会議にまつわる課題で「音声が聞こえない」「映像が遅延する」「マイクをONにすることでハウリングが発生する」「ミュートしない人のせいで雑音が入る」といった、音声や映像が参加者の通信環境に依存してしまっているため、十分なコミュニケーションが取れないといった声が多かった。他には「誰がどこで何に参加するかの確認が煩わしい」「通信環境が十分でない」などの意見も上がった。会議への参加方法や参加者同士での環境格差などから、会議全体の生産性に影響を与えてしまっているケースもあるようだ。

 新型コロナウイルス感染症の流行に伴うパンデミック対策前後で会議運営の在り方にはやや変化が見られた。個人の見解としては「参加する意味のない会議」など取捨選択の意思は見られるものの、コミュニケーションの在り方や会議そのものの意義の再確認などに踏み込んだ変化は見られなかった。

 短期間での収束が難しいとされる今回の感染症流行に対しては、既存業務フローを本質や目的から見直してうまく状況に合わせていく必要がある。会議や報告の形態も現状に合わせて見直し、従業員の安心、安全と事業継続をバランスよく判断してほしい。

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