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前進か撤退か? BYODがワークスタイル変革に与えるインパクトすご腕アナリスト市場予測(1/3 ページ)

各社、捉え方が違うBYODをあらためて整理しながら、ワークスタイル変革にBYODが与えるインパクトを考察する。

» 2015年03月19日 10時00分 公開
[渋谷 寛IDC Japan]

アナリストプロフィール

渋谷 寛(Shibutani Hiroshi):IDC Japan PC、携帯端末&クライアントソリューション シニアマーケットアナリスト

国内シンクライアント/クライアント仮想化市場とその投資対効果(ROI)、BYODなどワークスタイルの拡大に関する調査を担当。IDC Japan入社前は、ソフトウェア開発、組み込み系装置、サリュテーションなどのプロジェクトに従事。その後、テクニカルサポートエンジニアとしてPC関連の障害対応解析業務を経験。また、プリセールスエンジニアとして、通信、メディア、製薬など大手企業を担当し、高い実績を上げる。


 仕事は会社の机でするものという常識が変わって、モバイルワーク、サテライトオフィス、在宅勤務など、さまざまなワークスタイルが登場してから数十年はたつ。それが特定な社員だけでなく、全社、全従業員に広がり始めたのは、この数年スマートフォンとタブレットがビジネスで活用されてきたからだ。携帯電話やモバイルPCが着々と築いてきた会社外での情報利用の手法がここにきて一気に花開き、社会の隅々にゆきわたろうとしている。

 ところが実際には、企業システムも社会も、まだこの変革を完全には受け止めきれていない。BYODはその典型で、話題は多く注目はされてもそこまで普及の速度は速くない。今回は、そんなBYODを含めモバイルデバイスを利用するワークスタイルの課題とこれからを、現実に即して考えてみよう。

BYODはどこまで浸透しているのか

 既にビジネスの世界に定着した感があるBYODだが、キーワードの露出頻度と実際の導入、活用の間にはまだ大きな隔たりがあるようだ。導入企業が増加していることは、IDC調査の結果からも間違いないのだが、さて導入企業でどこまで広く活用されているのかについてはまだはっきりと見えてきていない。それには、BYODの捉え方が各企業で違っていることに一因がありそうだ。

BYODとシャドーITの定義は?

 IDCでは、BYODを「従業員の私物のモバイルデバイス(携帯電話、PC、スマートフォン、タブレット)を企業、教育機関、官公庁、自治体のシステム、あるいは契約しているクラウドサービスにアクセスして、企業が利用ポリシーに準じて認めた従業員が業務で利用」し、かつ「企業が業務において私物端末の使用を認めたもの」と定義している。

 しかし一般的にはもう少し幅をもって解釈されていることも多い。例えば、社内で明確な規定がなく、許可も不許可もしていないのに社員が自分の端末を業務に使う、いわば「黙認」状態も含めてBYODと呼ぶ場合があり、時には社内で個人端末の業務利用を禁じているにもかかわらず、勝手に自分の端末を業務利用している場合までBYODと誤認されていることさえある。

 IDCではこれらの「勝手使用」ケースや社内での私物端末利用規定がないケースを「シャドーIT」と呼んでいる。会社が把握していない管理外のITの業務利用という意味だ。

 またBYODの正しい認知がされていないうちに、BYOA(Bring Your Own Application:個人所有アプリケーションの業務利用)や、BYOC(Bring Your Own Cloud:個人契約のクラウドサービスの業務利用)、BYOS(Bring Your Own Software:個人所有のソフトウェアの業務利用)など種々の「BYOx」がキーワードとして続々登場してきており、さらにはCYOD(Choose Your Own Device:企業が選択した複数のデバイスの中での従業員による自由選択制、あるいは従業員が選んだデバイスの会社支給)という派生形も現れた。

 この状況を少し整理してみると、図1のようになる。「会社許可」している場合、つまり利用規定が会社で整備されて、利用に問題なしとされている場合のみが本来のBYODであり、それ以外でモバイルデバイスを業務利用するのは全てシャドーITということになる。

 シャドーITの中には、会社が明確に業務利用を禁じている「会社不許可」の場合と、会社に利用規定がない場合が含まれている。問題になりがちなのは当然シャドーITの2つの形だ。社内で制御できない状態での利用には情報漏えいのリスクが潜んでおり、それを危惧する企業は特に日本には多い。

 これまで被害が顕在化したケースはあまりないのだが、万が一にも情報漏えいを起こして報道されるようなことになると、ブランドイメージの低下につながることが恐れられているためだ。海外ではそこまでの心配はされておらず、会社規定の有無にかかわらず、むしろ個人のビジネス効率アップのために積極的にモバイルデバイスを活用する傾向が強いようだ。

会社規定とBYOD、シャドーIDの関係 図1 会社規定とBYOD、シャドーIDの関係(出典:IDC Japan)
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