「脱Excel」の移行先として人気のツールは何か。それらのツールを選ぶ際のポイントはどこにあるのか。また移行時にはどのような課題が発生するのか。キーマンズネットの読者調査を基に紹介する。
Excelによる情報の非効率なバケツリレーや動作の重さなどを課題に感じ、脱Excelを図る企業もある。移行先として人気のツールや選定のポイント、移行時の課題などについて、キーマンズネットの読者調査「Excelの利用状況/2024年(実施期間:2024年7月5日〜19日、回答件数:428件)を基に紹介する。
はじめに、Excelからの移行経験について聞いた。「置き換えたことがある」(33.9%)と「置き換えたが、機能せずExcelの戻った」(5.1%)を合わせて39.0%の回答者に移行経験があった(図1)。100人以下の中小企業では「今後、置き換える予定」が、他の規模の企業よりわずかに高い傾向があった。
Excelからの移行先としてどのツールが人気なのだろうか。
移行先ツールとしては「Microsoft Access」(30.5%)が最も多く、「BIツール」(26.3%)、「Googleスプレッドシートなど」(22.2%)や「クラウド型ビジネスアプリ作成ツール(Kintoneなど)」(13.2%)が続いた(図2)。Microsoft Accessは、複雑なクエリの実行や、大量のデータの効率的な処理などが可能なため、特にExcelの動作性などに悩んでいた企業には有効な移行先だ。業種別で人気にそれほど大きな差はないが、流通・サービス業の利用率が最も高かった。
BIツールは、複数のデータソースからの集計や分析に便利だ。製造業での導入が多い傾向にある。BIツールによって、サプライチェーンや製造工程、品質管理、在庫管理など多岐にわたるデータソースを統合し、一元管理することでデータの整合性と可視化を図る目的があると考えられる。
Googleスプレッドシートは、Excelとインタフェースが似ており、データの共同編集が可能といった利点がある。特に流通・サービス業で多く利用されているようだ。
ちなみに、今後、他ツールに置き換える予定とした企業には「BIツール」(27.8%)や「クラウド型ビジネスアプリ作成ツール(Kintoneなど)」(27.8%)、「セルフサービスBIツール」(22.2%)、「クラウド型データベースツール」(16.7%)の順で人気が高かった。分析やレポーティングを中心とした専用ツールへの置き換えが主流のようだ。
移行先ツールを選定するポイントについては、「複数ユーザーでの情報共有機能」(45.8%)、「ライセンス費用」(38.4%)、「ユーザーフレンドリーな操作性」(31.9%)、「大量のデータを処理する際の応答速度」(30.8%)が上位に挙がった(図3)。従業員規模別の結果では、100人以下の中小企業で「外部システム(クラウドサービス)との連携機能」や「モバイル対応」が、1001人を超える大企業帯では「基幹システムとの連携機能や」「既存資産の移行機能」に票が集まった。
大企業は長年にわたり蓄積された膨大な既存資産を効率的に移行し、運用コストをおさえることを重視するようだ。多くの基幹システムを使用しているため、新しいツールとのシームレスな連携も重要なポイントになる。これにより、既存のワークフローを維持しつつ、効率を高められる。一方、クラウドサービスの利用によるスピーディーな情報活用や、モバイル対応による場所を問わない働き方が重視されている。
Excelを他ツールに置き換えない理由としては「現状で満足している」(48.6%)が最多で、「何に置き換えるべきか分からない」(41.2%)や「既存のExcelデータの整理ができない」(17.3%)、「現場の運用を変えることに手間がかかる、現場からの反対が多い」(16.9%)が続いた。特にExcel運用が長い中堅・大企業では、現場の反対への対応やデータ整理にかかる移行コストを不安視する意見が多かった。
なお、「何に置き換えるべきか分からない」場合は、こちらの記事で移行先の選定ポイントを取材しているのでぜひ参考にしてほしい。
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