業界から注目を集めていた新興企業が、突如として破産を宣言し、倒産へと追い込まれた。世界中の企業や投資家の注目を集めていたこの企業は、なぜ突然破綻したのか。
OpenAIの成功に触発され、多くのスタートアップ企業がAI事業に参入し、投資家やベンチャーキャピタルは莫大な資金を投資している。
生成AIビジネスを営むある新興企業は、コード生成に特化した独自のAI技術を駆使して、ノーコード開発を支援する革新的なサービスを提供していた。この企業は、世界中の企業や投資家の注目を集め、Microsoftをはじめとする多くの企業から期待の星として投資を受けていた。
だが、2025年5月、この企業は突如として破産を宣言し、倒産へと追い込まれた。なぜ、有望なAI企業が突然破産に追い込まれたのか?
話題の中心となっているのは、2016年にロンドンを拠点に創業されたBuilder.aiというAI開発企業だ。Microsoftを筆頭に、カタール投資庁(QIA)や複数のベンチャーキャピタルから累計4〜5億ドルに上る出資を受け、一時は企業価値15億ドルを誇る「ユニコーン企業」として注目を集めた。
同社は、自社開発の生成AI「Natasha」を活用したノーコード開発プラットフォーム「Builder.ai」を提供していた。「ピザを注文するようにアプリを作れる」というキャッチコピーのもと、AIチャットbotとユーザーとの対話によってアプリケーションを構築できる仕組みだ。
Microsoftも同社へ出資し、Builder.aiの機能を自社製品に統合する計画を発表するなど、大きな期待を寄せていた。だが、2025年5月20日、Builder.aiは破産申告し、事実上の経営破綻に追い込まれた。
この破綻の背景については複数のメディアが報じているが、その中でもインドの経済誌『Business Today』が2025年6月1日に掲載した記事によると、その原因は「AIウォッシング」にあるという。
AIウォッシングとは、自社のAI技術やサービスを誇張し誤認を招くような虚偽の主張をする、「AI詐称」とも呼べる行為だ。驚くべきことに、Builder.aiがNatashaとして提供していた機能は、700人のインド人エンジニアによるものだったという。
記事では、投資家のベルンハルト・エンゲルブレヒト氏が「X」(旧Twitter)に投稿した内容を引用し、同社が提供するサービスの実態を暴露した。ユーザーからのアプリ開発のリクエストは全てインドのオフィスに送られ、エンジニアが手動でコードを書いていたことが明らかになった。
さらに同氏は、「Natashaが生成したアプリには不具合が多く、コードは読みにくい。機能も正常に動作しないこともある。それがむしろ、AIが生成したかのような“リアルさ”を生んでいた」と皮肉を交えて指摘する。
このAIウォッシングの発覚に加え、社内告発により売り上げの不正計上も明るみに出た。これによりBuilder.aiは債務不履行に陥り、2023年に同社へ5000万ドルを融資していたViola Creditは、保有資産のうち3700万ドルの差し押さえに踏み切った。さらに、インド国内の資金も凍結され、同社は英国で正式な破産手続きに入ることとなった。
Builder.aiと提携していたインドのコンテンツ配信企業VerSe Innovationにも、架空循環取引の疑いが掛かるなど、事態はさらに複雑化した。多額の資金を調達し注目を集めたBuilder.aiが再びユニコーン企業として復活することは、現時点では極めて困難とみられている。
今後、Builder.aiのAIウォッシング問題がどのような展開を見せるかは不透明だ。だが、AI技術が急速に進化し、社会のあらゆる分野で活用されている今、こうした事例は業界全体の信頼性を大きく損なう可能性がある。まさか自社開発のAIが、実は700人のエンジニアによる「人力AI」だったとは。このようなケースが例外であることを願わずにはいられない。
上司X: AIを活用したノーコード開発ツールを提供していたBuilder.aiが偽っていたことが判明し、倒産を迎えようとしている、という話だよ。
ブラックピット: なかなかツッコミがいのある話ですね。コード生成AIが、実は人力だったと。
上司X: そうなんだよ。ビックリなことに、AIが生成していたとされるコードは、実はインド人エンジニアが人力で書いていたというね。
ブラックピット: しかも700人って! AIの皮を被った人海戦術じゃないですか。
上司X: なかなかな話だよな。正確なコードじゃなかったらしくて「AIぽいね」っていう感じだったんだが、それも実のところ人間の手によるものだったから、というね。
ブラックピット: なんとも皮肉な話ですね。
上司X: 会計の不正も見つかったりして、いろいろあって破産宣告し、倒産を迎えようとしているようだな。
ブラックピット: AIウォッシングってヤツですね。投資してきた企業はさぞガッカリしたことでしょう。
上司X: そうだろうなあ。このところ、AIは万能だという世論の印象があるようだ。もちろん決してそんなことはないし、全てのAIスタートアップが成功するという保証もない。ちょっとした「AIバブル」の様相の中、ユーザーも企業も、投資家たちも冷静になる必要があるのかもしれないな。
年齢:36歳(独身)
所属:某企業SE(入社6年目)
昔レーサーに憧れ、夢見ていたが断念した経歴を持つ(中学生の時にゲームセンターのレーシングゲームで全国1位を取り、なんとなく自分ならイケる気がしてしまった)。愛車は黒のスカイライン。憧れはGTR。車とF1観戦が趣味。笑いはもっぱらシュールなネタが好き。
年齢:46歳
所属:某企業システム部長(かなりのITベテラン)
中学生のときに秋葉原のBit-INN(ビットイン)で見たTK-80に魅せられITの世界に入る。以来ITひと筋。もともと車が趣味だったが、ブラックピットの影響で、つい最近F1にはまる。愛車はGTR(でも中古らしい)。人懐っこく、面倒見が良い性格。
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