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「Windows XP」正規のライセンスキーが“割れキー”と誤解されたワケ:852nd Lap

「FCKGW」という文字列を聞けば、かつて話題を呼んだWindows XPのライセンスキーを思い浮かべる人も多いだろう。発売前に広がったことから「不正に認証を回避するキー」だと誤解されていたが、それには理由があった。

» 2025年10月24日 07時00分 公開
[キーマンズネット]

 「Windows XP」にまつわる“あのライセンスキー”と聞けば、往年のユーザーならすぐに思い浮かぶだろう。25桁の「FCKGW-RHQQ2-YXRKT-8TG6W-2B7Q8」は、まさに伝説として語り継がれてきたもので、先頭の「FCKGW」だけでも通じる人は多い。

 このキーを用いることで認証を回避し、アクティベーションが可能だったため、一見ハッキングによって生成された不正な「割れキー」と思われがちだ。だが実は、Microsoftが正式に発行した正規のライセンスキーだ。その誤解が生まれた背景には、ある理由があった。

 Windows XPが日本で発売されたのは2001年11月16日(米国では同年10月25日)。当時、インストール時にはライセンスキーの入力が必須で、OSの提供形態はCD-ROMだった。そのため、ディスク自体を複数人で使い回したり、コピーして海賊版として配布したりすることも容易だった。

 こうした不正利用を防ぐために導入されたのが「Windows Product Activation」(WPA)だ。ユニークなライセンスキーと、インストール先PCのハードウェア構成をひも付けてインターネットまたは電話で認証サーバに登録し、アクティベーションする仕組みだ。認証していない場合、インストールから30日後には再認証が求められ、使用が制限されることもあった。

 ところが、このWPAを突破できるキーとして知られたのがFCKGWキーだった。リリース直後から出回ったこのキーは「Windows XP Professional Edition」(Windows XP Pro)に対応し、アクティベート済みと称する海賊版が販売されるほどに広まった。もちろん違法だ。他のXP ProのCD-ROMでも同様の手法でアクティベーションを回避できたとされる。

 そんなFCKGWキーが再び注目を集めたのは、2025年10月9日にTech系メディア「tom’s HARDWARE」が掲載した記事によるものだ。きっかけは、かつてWindowsの開発とWPAの検証に携わったデヴィッド・プラマー氏が「X」(旧Twitter)に投稿した内容だった。

 プラマー氏によると、FCKGWキーはWindows XPの正式リリースの約5週間前、「devils0wn」というWarezグループによってリークされたという。Warezとは不正コピーソフトを指すスラングで、日本では「割れ」や「割れ物」と言われている。彼らはFCKGWキーを含むWindows XP Proの最終開発版とされるCD-ROMイメージをインターネットに公開し、キーが一気に拡散された。

 このことから、FCKGWキーはハッキングによって生成された不正キーと思われがちだが、プラマー氏によれば実際は正規のボリュームライセンスプロダクトキー(VLK)の一つだったという。当時、企業はボリュームライセンス契約によりXP Proを導入し、FCKGWキーを入力することでWPA認証をスキップし、合法的に使用できた。つまり、FCKGWキーは企業向けにMicrosoftが発行した正規のキーであり、発売前に何らかの経路でMicrosoftまたは取引先企業から流出した。それが真相とされている。

 記事では、当時のMicrosoftはVLKを大口顧客に提供する際のリスクを十分に考慮していなかったのではないか、と指摘されている。現在、MicrosoftはVLK方式を廃止し、より安全性の高い「Key Management Service」(KMS)や「Multiple Activation Key」(MAK)といった仕組みを採用している。

 プラマー氏の投稿によれば、「FCKGWキーは既に数年前にブラックリスト化された」とのことだが、Windows XP自体は2014年にサポートを終了しており、いずれにしてもこのキーは過去の遺物となっている。

 なお記事では「2001年当時はブロードバンドが普及しておらず、海賊版ISOをダウンロードするのは難しかった」と書かれているが、日本では同年がブロードバンド元年と呼ばれた年でもある。実際にはファイル共有ソフトによって多数の海賊版Windows XPが流通していたことは想像に難くない。

 いずれにせよ、一部で「割れキー」や「神キー」などと称されたFCKGWキーが、実は企業向けの正規ライセンスだったというのは意外な真実だ。約四半世紀を経て明らかになったこの逸話、古参ユーザーとの昔話として披露すれば、きっと盛り上がることだろう。


上司X

上司X: かつてWindows XPで不正に使われていたFCKGWライセンスキーが、クラッキングされたものではなく、実は正規のライセンスキーだった、という話だよ。


ブラックピット

ブラックピット: Windows XPとはまたずいぶんな話題ですね。


上司X

上司X: さすがに仕事で使っている人は多くないだろうが、2025年9月の調査ではまだWindows XPユーザーが0.3%ほどいるらしいぞ。


ブラックピット

ブラックピット: えええ……。だいぶ少ないですけど、いるんですねえ。


上司X

上司X: 例のWindows XPのライセンスキーだよ。当時はかなり出回ったもんだ。


ブラックピット

ブラックピット: いや、存在は覚えてないこともないですけど……関わったことはなかったハズですよ、たぶん。もうすっかり忘れています。


上司X

上司X: 「たぶん」か(苦笑)。まあ、使っていたら非合法になるからな。


ブラックピット

ブラックピット: でも20年以上も昔のことじゃないですか? もう追求しなくてもいいのでは? 僕みたいにいろいろ忘却のかなた、なんて人もいるでしょうし。


上司X

上司X: 著作権法違反は、刑事上の時効が「犯罪行為から7年」で、民事上の損害賠償請求が「知ったときから3年または不法行為から20年」とされているようだな。ということは「今となっては……」ということか。まあ、それはともかくとして、今回の話題を聴いて久しぶりにWindows XPのことを思い出したし、あのキーの秘密も知ることができて楽しかったよ。

川柳

ブラックピット(本名非公開)

ブラックピット

年齢:36歳(独身)
所属:某企業SE(入社6年目)

昔レーサーに憧れ、夢見ていたが断念した経歴を持つ(中学生の時にゲームセンターのレーシングゲームで全国1位を取り、なんとなく自分ならイケる気がしてしまった)。愛車は黒のスカイライン。憧れはGTR。車とF1観戦が趣味。笑いはもっぱらシュールなネタが好き。

上司X(本名なぜか非公開)

上司X

年齢:46歳
所属:某企業システム部長(かなりのITベテラン)

中学生のときに秋葉原のBit-INN(ビットイン)で見たTK-80に魅せられITの世界に入る。以来ITひと筋。もともと車が趣味だったが、ブラックピットの影響で、つい最近F1にはまる。愛車はGTR(でも中古らしい)。人懐っこく、面倒見が良い性格。


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