光で超伝導状態のオン、オフができる世界初の「光駆動型超伝導トランジスタ」が登場した。外部電源不要の超伝導技術がITの未来をどう変えるか。
今回のテーマは、光を当てると超伝導状態のオン、オフができる世界初の「光駆動型超伝導トランジスタ」だ。データセンターの電力消費を大きく削減し、冷却電力を相殺してもはるかに余りある低電力化、高速化を実現する可能性を秘めた新しいトランジスタとは一体どのようなものか。
光駆動型超伝導トランジスタは、外部電源がない状態でも紫外光を当てると電荷が蓄積するとともに超伝導状態に転移してその状態を保持、可視光を当てると元の状態(絶縁体)に戻るトランジスタだ。
自然科学研究機構分子科学研究所(協奏分子システム研究センター)の須田理行助教、山本浩史教授、理化学研究所の加藤礼三主任研究員らの研究グループが2015年2月に世界で初めての開発発表を行った。今回は山本教授に概要を聞いた。
超伝導とは物質中の電気抵抗がゼロの状態のこと。回路などでの電力ロスがなく、発熱もしないことから、もし超伝導状態で動作するマイクロプロセッサ、キャッシュメモリや主メモリ、データバス、電源回路、光ファイバーとバス間での信号変換装置などが実現すれば、超高速、超低消費電力のデータセンターが誕生する。
エクサフロップス単位の処理能力が求められるといわれる将来のデータセンターにおいては、既存技術では数Gワットの電力が必要とされるのに対し、主要デバイスを超伝導化した場合は、超伝導状態を維持するための冷却を含めても、全体の電力コストを大きく削減できる。
例えば、超伝導技術開発に取り組む名古屋大学では、現状の半導体などの技術を用いたデータセンターの10万分の1の低消費エネルギー化を目指すほどだ。また、施設や設備サイズのコンパクト化にも大きく寄与し、巨大な敷地面積と建物を必要としている従来のデータセンターを、冷却設備も含めて家庭のタンス程度の大きさにするともいわれる。
加えて、量子コンピュータ実現のために重要な鍵を握っているのも超伝導デバイスだ。そうした超伝導デバイスに新しい機能性をつけ加え、夢のITシステム実現に一歩近づいたのが今回の開発だ。
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