あるユーザーは新しいディスクドライブにデータ移行しようとした直後、突然Microsoftアカウントがロックされ、OneDriveに保存していた全データにアクセスできなくなった。利用規約を違反した覚えもないという。
「Microsoft 365」の「Microsoft OneDrive」(以下、OneDrive)や「Googleドライブ」「iCloud」「Dropbox」「Box」などのクラウドストレージ。PCのデータをクラウドに保存するだけでなく、スマートフォンの普及とともに、限られた端末の容量を補うためのバックアップ手段としても欠かせない存在となっている。
あるユーザーは新しいディスクドライブにデータを移行しようとしていた。その直後にアカウントがロックされ、OneDriveに置いてた全てのデータにアクセスできなくなった。利用規約に抵触した覚えもないという。一体、何が起こったのか?
そんなショッキングなトラブルに見舞われたのが、仮名「deus03690」と名乗るユーザーだ。彼はこれまで30年間にわたって蓄積してきた写真や仕事関連のデータを、MicrosoftのOneDriveに保存していた。ところがその直後、Microsoftアカウントが突然ロックされ、全てのデータにアクセスできなくなってしまったという。彼はこの出来事をソーシャルメディア「Reddit」に投稿し、それが注目を集めた。
投稿によると、deus03690氏は引っ越しのタイミングで、複数の古いドライブからデータを取り出し、新しいドライブに統合しようとしていた。その一時的な保管先としてOneDriveを選び、全てのデータをアップロードした。古いドライブを処分した後、新しいドライブにデータを戻そうとしたところで、Microsoftアカウントがロックされた。
そうなると、OneDriveへのアクセスはもちろん、「Microsoft Outlook」や「Microsoft 365」「Microsoft Teams」といった各種サービスも使えなくなる。「Windows」のサインインにアカウントをひも付けていれば、PC自体の起動も難しくなる可能性がある。
なぜロックされたのか、はっきりとした理由は分かっていない。本人は「ランダムにロックされた」と語っているが、利用規約に抵触した可能性もある。不審なログインやログイン失敗の連続、botによるアクセス、「BitLocker」の回復キーに対する異常なアクセスなど、ロックの原因となり得る操作は幾つか考えられる。
deus03690氏はロック解除を求めてMicrosoftに18回も連絡したが、自動返信のメールが返ってくるだけで、全く解決に至らなかったという。彼はRedditで「正当な手続きも警告も説明責任もないまま、誰かのデジタルライフを人質に取るようなやり方は許されるべきではない。もしこれが物理的な倉庫なら、手続きも権利も猶予期間もあるはず。でもクラウドには何もない。これは企業の怠慢が生んだ、まるでカフカ的なブラックホールのようだ」と怒りを込めて書いている。
ここでいう「カフカ的」とは、チェコの作家フランツ・カフカの作品に見られるような、「理不尽で不条理で助けも説明もない世界」を意味している。
また、テック系メディアの「Neowin」もこの件を記事で取り上げ、MicrosoftアカウントのロックがBitLockerの回復キーの喪失につながるリスクについても言及している。
というのも、BitLockerの回復キーはMicrosoftアカウントに保存されているケースが多く、アカウントがロックされると暗号化を解除できなくなる可能性がある。特に、2024年10月にリリースされた「Windows 11」のバージョン24H2では、BitLockerによるドライブを自動的に暗号化する仕様になっており、ユーザーが気付かないまま暗号化されているケースも考えられる。いざというときに回復キーが使えなければ、データは永久に失われてしまう恐れもある。
Neowinの記事では「アカウントがロックされても削除されるわけではない」とする一方で、「ロックされたアカウントにひも付くデータやコンテンツが削除される可能性がある」といったMicrosoftの利用規約の一文も紹介している。つまり、たとえアカウントが回復されたとしても、アップロードしたデータが既に失われている可能性も否定できないということだ。
Redditでは多くのユーザーが彼にアドバイスを送っているが、記事執筆時点ではまだ解決には至っていない。本人は法的手段も検討しているという。
この一件が示しているのは、クラウドストレージが万能で安全なバックアップ先とは限らないということだ。30年分のデータの重みは、多くのユーザーにとって人ごとではなく、共感せずにはいられないだろう。どうにかして彼のデータが戻ることを願いたい。
上司X: OneDriveをバックアップに使ったら、Microsoftアカウントが凍結されちゃって30年分の各種データが失われてしまった、という話だよ。
ブラックピット: うーん。これはなんとも悲しい。本人にしたら「バックアップを取った」というより「データを盗られた」という感じでしょうね。
上司X: 30年のデータというと、だいたい1995年。つまり「Windows 95」時代から蓄積されてきたデータということだからな。ダメージは小さくないだろう。
ブラックピット: その頃だとデジカメは……登場してましたかね?
上司X: ああ、あったよ。民生用のデジカメとして大ヒットしたCASIO「QV-10」が登場したのが1994年11月だから、1995年当時で最先端のデジタルフリークたちならデジタルカメラに手を出していてもおかしくはないだろう。
ブラックピット: そうですか。しかし、僕もクラウドにデータを保存してますけどね。やっぱりどこかでしっかりとしたバックアップ先を検討しておくべきなんでしょうね。
上司X: バックアップには「3-2-1ルール」ってのがある。「オリジナルと2つのコピー、合計3つのデータを保存」「異なる2種類のメディアに保存」「1つはオフサイト(離れた場所)に保存」ってヤツな。
ブラックピット: いやあ、それはなかなかタイヘンな……。でも30年とは言わないまでも、ここ10年の写真だったりいろいろなデータだったりと思えば、多少は苦心してバックアップするのも必要かもしれませんねえ。
上司X: だろう? ともかく、今回の件でクラウドストレージを過信してはいけないということがわかっただろう。そして、バックアップの手順もな。なぜ、先にローカルの古いドライブの始末をしてしまったのか。データ消去は作業が全部が終わってからで良かったのではないか、と思ってしまう俺だ。自分も気をつけたいものだよ……。
年齢:36歳(独身)
所属:某企業SE(入社6年目)
昔レーサーに憧れ、夢見ていたが断念した経歴を持つ(中学生の時にゲームセンターのレーシングゲームで全国1位を取り、なんとなく自分ならイケる気がしてしまった)。愛車は黒のスカイライン。憧れはGTR。車とF1観戦が趣味。笑いはもっぱらシュールなネタが好き。
年齢:46歳
所属:某企業システム部長(かなりのITベテラン)
中学生のときに秋葉原のBit-INN(ビットイン)で見たTK-80に魅せられITの世界に入る。以来ITひと筋。もともと車が趣味だったが、ブラックピットの影響で、つい最近F1にはまる。愛車はGTR(でも中古らしい)。人懐っこく、面倒見が良い性格。
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