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kintone×RPAで「1万1000時間」削減 化学メーカーの業務自動化実践例

ある化学メーカーはkintoneを導入して業務改善を図った結果、約1万1000時間の削減を実現した。kintoneとRPAの組み合わせによる業務自動化の実践例を紹介する。

» 2025年04月10日 07時00分 公開
[金澤雅子キーマンズネット]

 化学メーカーのartienceは、サイボウズの「kintone」によって約1万1000時間を削減した。kintoneはさまざまな利用方法が可能なツールだが、同社はどの業務にkintoneを適用し、どのようなプロセスで自動化を進めたのか。なぜ導入半年でこれだけの成果を出せたのか。

導入半年で「1万1000時間」削減 自動化した業務は?

 2024年1月に東洋インキSCホールディングスから社名を変更したartienceは、グループの垣根を超えた情報共有基盤の整備を目指し、kintoneを全社的なデジタルトランスフォーメーション(DX)推進のプラットフォームとして導入した。

 kintone導入の決め手は何か。

 もともと同社グループの事業会社がkintoneを業務プラットフォームとして使用していた。事業会社がkintoneを高く評価していたため、グループ全体のワークフローの活用基盤として検討を開始したという。

 決め手となったのは、kintoneが簡便なUIを備え、現場で開発しやすい設計であることと、事業会社が蓄積したデータをグループ全体で活用できる点だ。セキュリティ対策やガバナンスを考慮して運用できる点も評価した。

 導入に当たっては、事業会社で利用していたkintoneとのドメイン統合後、グループ全体での業務改善プラットフォームとして展開した。

 2025年3月時点で、artienceグループの約10社で1400人以上の従業員がkintoneを利用している。artienceはkintoneの普及を優先してアプリ作成の権限を現場に付与したことで多くのアプリが作成された。稼働しているアプリは530個以上に上る。申請承認のためのワークフローアプリや案件管理アプリといったSFA(セールスフォースオートメーション)アプリや議事録共有アプリ、FAQアプリなど利用目的も多岐にわたる。

kintone導入の効果 従業員の意識にも影響

 artienceはkintone導入によって2024年4月〜同年10月の間で1万1000時間を削減した。kintoneで作成したアプリを個別にシステム構築した場合と比較して、約4000万円のコスト圧縮効果を見込む。kintone導入によってペーパーレスも進んでおり、年間で約6万枚が削減される見通しだという。

kintoneの導入による効果(出典:サイボウズのプレスリリース)

基幹システムとkintoneとの連携 業務自動化をどう実現した?

 artienceは、基幹システムとkintoneを連携させて製品の価格を登録する「価格登録アプリ」による業務自動化を実現した。

価格登録アプリの導入前と導入後(出典:サイボウズのプレスリリース)

 価格登録アプリは基幹システムから製品情報をCSV形式で出力し、そのデータをRPAでkintoneに投入する。営業担当者が製品価格をkintoneに登録した後、kintoneから製品価格データをRPAで取得して基幹システムに戻す仕組みだ。

 営業担当者の業務を省力化できるアプリとしてartienceグループの複数社で導入され、artienceグループ全体にkintone活用が広がる契機になった。

 artienceはkintone導入後、PoC(概念実証)の一環として業務アプリを自由に作成するツールとして利用を推進してきた。2025年3月時点では基幹システムに関連する全社共通の業務のkintoneへの移行を進めている。今後はkintoneの利用促進とガバナンスを両立させる運用体制を整備する。グローバルな事業展開を見据えて、海外拠点も含めた現場の課題解決にkintoneを利用する予定だ。

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