ある企業では、従業員2万人に「Microsoft 365 Copilot」の導入を計画していたが、その方針を突如撤回した。その理由は単なるコストといった問題ではなかった。
住友商事や伊藤忠商事、デンソーなど、日本企業でも導入が進む「Microsoft 365 Copilot」。ビジネスシーンでも、生成AIの活用が日常の業務に着実に浸透しつつある。
一方で、ある企業は従業員2万人規模での「Microsoft 365 Copilot」導入を計画していたが、突如としてその方針を撤回した。なぜ同社は導入を見送り、方向転換したのか。
その背景には、Copilotそのものの“人気”が影響していた。
Microsoft製品に特化したテック系メディア「Windows Central」が2025年6月25日付の記事で、「CopilotよりもOpenAIの『ChatGPT』が好まれる」と報じた。
記事では、「Microsoft Teams」や「Microsoft SharePoint」など、同社のコラボレーションツールを統括するジェフ・テーパー氏の発言を紹介した。同氏は「CopilotとChatGPTは本質的に同じものだ」と主張する。その背景には、CopilotがOpenAIの「GPT-4」や「GPT-4o」を基盤としていることがある。
一方でテーパー氏はCopilotの優位性についても強調している。具体的には、ChatGPTよりも高いセキュリティ性や、「Microsoft 365」製品群との密接な統合による優れたユーザー体験を挙げた。また、Microsoftが自社独自の次世代AIモデルを開発中であることにも触れ、CopilotはChatGPTの単なる代替ではないと主張する。
そして同記事では、2025年6月24日付のBloombergによる報道を引用しながら、製薬大手AmgenがMicrosoft 365 Copilotの導入計画を撤回したことに触れた。
Amgenは2024年春、約2万人の従業員に対してMicrosoft 365 Copilotの有償ライセンスを導入する方針を発表していた。数十億ドル規模のAI投資の一環であり、Microsoftもこの取り組みを積極的に広報していた。だが2025年5月、同社は突如この計画を撤回した。一方で、同社内ではChatGPTの利用が広がっているという。
Amgenのシニア・バイスプレジデントであるショーン・ブルイック氏によれば、科学文書の要約や研究支援といった領域においては、CopilotよりChatGPTの方が優れているという従業員からのフィードバックが多数寄せられたという。ブルイック氏はまた、CopilotはTeamsなどのMicrosoft 365ツールとの連携においては優位だが、その能力は「Microsoft製品と併用して初めて最大限に発揮されるものだ」とも指摘している。
このように、Amgenのケースは一企業の判断にすぎないようにも見えるが、Windows Centralはさらに、2025年2月時点での米国内におけるChatGPTの利用実態にも言及している。同月のChatGPTへのアクセス数は1日当たり約1億7330万回と、Copilotの実に52倍以上に達していたという。
一方でMicrosoftは、FORTUNE 500企業の約70%がCopilotを導入しており、ビジネスライセンスユーザーは約300万人に上ると主張する。このようにユーザー数と実際の利用状況が明示される中で、「人気」や「好ましさ」といった定性的な評価をどう捉えるかは一筋縄ではいかない。
Windows Centralは記事を締めくくるに当たり、こうしたユーザーの評価や利用動向が、MicrosoftとOpenAIのパートナーシップに今後影響を及ぼす可能性があると指摘する。
MicrosoftはOpenAIに対し、数十億ドル規模の巨額投資を進め、戦略的パートナーシップのもとでCopilotにGPTシリーズを採用している。つまりCopilotは、OpenAIが開発した生成AIの成果をビジネスツールに統合するフロントエンドのような存在だ。
ただし最近、Microsoftが独自の大規模言語モデル(LLM)を開発しているといううわさもあり、将来的には自社製のAI基盤を持つ可能性も否定できない。また、OpenAI側でも組織体制の変化や他企業からの資金調達が進行する可能性が指摘されている。
現時点では、Microsoftは引き続きGPTシリーズを活用していくとみられる。同社が今後も強調すべきは、「CopilotはChatGPTに劣らない高性能なAIアシスタントであり、Microsoft 365との連携によって、業務効率化において大きな価値を提供できる」という点に他ならない。
今後、それぞれのAIアシスタントの人気が、ユーザーの選択や企業戦略にどのような影響を与えるのか。引き続き注目が集まる。
上司X: MicrosoftのCopilot、実際のところChatGPTより人気がないのかも、という話だよ。
ブラックピット: 「人気がある」とか「好き」だとか、漠然とした指標ですねえ。
上司X: まあそうかもしれないけど。しかしAmgenの導入計画の撤回が、従業員がChatGPTをよく使っているからというのが、ある意味で象徴的というか。
ブラックピット: 確かにそうですね。数字的には、MicrosoftのCopilotはMicrosoft 365ユーザーを中心に多数いる、というのは明白でしょう。ChatGPTについては一応利用者数は非公開てことらしいですね。
上司X: OpenAIのアルトマンCEOによれば「何十億人の潜在ユーザーがいる」ということらしいが。よく分からん。週次で最大800万規模のユーザーということらしいが。
ブラックピット: だいぶよく分からない感じなんですね。
上司X: Copilotの有償ライセンス数は明白かもしれんが、ChatGPTを利用するユーザーを何を持って1ユーザーとしてカウントするのか、っていうのはあるだろうからな。
ブラックピット: 調べてみたら、ChatGPTの課金ユーザー数についても発表されていないんですねえ。何か戦略的な意味があるのでしょうけど。
上司X: しかしだ、実際のところ今回紹介した記事ではタイトルでも「ユーザーはChatGPTを好んでいる」と示されている。生成AI戦国時代だからこそ、ユーザー数にかかわらず好まれている・いないっていうのは大きな指標になるだろうな。さて、これからどうなることやら……。
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