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表で分かる「Microsoft 365」と「Google Workspace」のプランを徹底整理【2025年版】

Microsoft 365とGoogle WorkspaceはOfficeツールだけではなく、AI活用やローコード開発のプラットフォームとしても企業の関心が集まる。ライセンス体系や含まれる機能、サービスの違い、利用料金などをプランごとに整理した。

» 2025年08月04日 07時00分 公開
[酒井洋和てんとまる社]

 「Microsoft Word」や「Microsoft Excel」「Microsoft PowerPoint」といったOfficeアプリに加え、メールアプリやWeb会議、チャット、カレンダー、オンラインストレージ、セキュリティ機能など業務に欠かせないをサービスを包括的に提供するのが「Microsoft 365」と「Google Workspace」だ。これらは、月額制のサブスクリプションサービスとして提供されている。

 多くの企業が利用しているこれらの業務プラットフォームは生成AIやローコード開発の基盤としても活用されており、従来以上の活用を検討する動きが広がっている。機能追加やライセンス体系の見直しが進み複雑化する中で、両プラットフォームのライセンス体系の違いを整理する。

今も残るOffice 365、Microsoft365のサービス内容との違い

 Microsoft 365には家庭向けのプランとして「Microsoft 365 Basic」「Microsoft 365 Personal」と「Microsoft 365 Family」などがあるが、ここでは法人向けプランに焦点を当てて見ていく。

 法人向けプランの基本となるのがMicrosoft 365 Businessで、「Basic」「Standard」「Premium」の3つのプランに分かれる。また、デスクトップ版Officeだけを安価に使いたい個人事業主や小規模利用向けには「Microsoft 365 Apps for business」がある。さらに、「Microsoft Teams」(Teams)が含まれない「Basic」「Standard」「Premium」もあり、一部の機能を制限することで利用コストを抑えることも可能だ。

表1 Microsoft 365 Business Basic、Microsoft 365 Business Standard、Microsoft 365 Business Premiumの月額料金と、管理機能の有無など

 大企業向けプランとして位置付けられているのが「Microsoft 365 E3」と「Microsoft 365 E5」「Microsoft 365 F3」だ。E3とE5についてはMicrosoft Teamsが含まれておらず、アドオン扱いとなる。Microsoft Teamsを利用できるライセンスは「Microsoft Teams Enterprise」と呼ばれ、年払い換算で月787円ほどが追加費用として必要になる(本稿公開時点)。

表2 Microsoft 365 E3、Microsoft 365 E5、Microsoft 365 F3の利用料、機能などの違い

 なお、Officeアプリケーションや「Microsoft OneDrive」「Microsoft SharePoint」「Microsoft Outlook」、Teamsなどが利用できる「Office 365」ライセンスもあるが、デバイス管理やセキュリティ強化で不十分な面がある点には注意が必要だ。

表3 Office 365とMicrosoft 365のサービス内容や管理機能の違い

 作業の効率化に寄与するAI機能「Microsoft 365 Copilot」は、個別に契約が必要となる。Microsoft 365ライセンスを契約してれば、「Microsoft 365 Copilot Chat」や、各アプリケーションで作業データに基づいたAIチャットを利用できる。さらに、AIエージェントの構築に対応した包括的な開発・運用基盤として「Microsoft Copilot Studio」も提供されており、メッセージ数に制限があるプランと、従量課金制のプランが用意されている。

 これらの情報は2025年7月時点のものであり、ライセンス体系は複雑化しているため、自社の運用方針やニーズに応じて慎重に比較・検討する必要がある。

Google Workspaceの4つのライセンスと価格

 Google Workspaceには、「Business Starter」「Business Standard」「Business Plus」「Enterprise」の4つのプランが用意されている。Web会議機能は全てのプランで利用可能だが、「Google Meet」の参加上限など一部の機能はプランによって異なる。また、最も低価格なプランでも、機能が限定されながらもAI機能「Google Gemini」との対話が可能だ。より高度なAI機能を活用したい場合は、「Gemini AI Pro」(月額約2900円)や「AI Ultra」などの上位プランがある。

 個人事業主や小規模チームには「Starter」、中小規模企業やセキュリティ要件が高い組織には「Standard」または「Plus」、大企業や教育機関には「Enterprise」が推奨されるプランと言えるだろう。

表4 Business Starter、Business Standard、Business Plus、Enterpriseの料金や含まれるサービス内容の違いなど

企業の関心はどちらのAIが優秀かよりも、RAGとAIエージェントに

 AI活用の選択肢は、既に導入している業務プラットフォームに大きく依存する傾向が強い。Microsoft 365を利用している企業はCopilotを、Google Workspaceを採用している企業はGeminiを活用する傾向がある。だが、現在はどちらのAIが優れているかという議論よりも、企業の関心は「検索拡張生成」(RAG)による社内情報を基にしたアウトプットの生成や、タスクを自律的に実行するAIエージェントの整備に集まっている。

 また、「Phi-3」(Microsoft)や「Alli LLM App Market」(Allganize Holdings)、「JAPAN AI AGENT」(JAPAN AI)といった「第3のAIプラットフォーム」も登場し、既存の業務基盤にとらわれず、複数のAIツールを併用する企業も増えている。

 コスト面を見ると、Microsoft 365 E3/E5に加えてCopilotを利用する場合、月額約4500円が必要となり、全体では1万円前後のコストがかかる。また、AIエージェントを構築するには別途Copilot Studioの契約も必要になる。一方でGoogle Workspaceは利用回数に制限があるものの、Geminiの無料版が標準で利用でき、AIへのアクセスハードルが低い。高度な機能を求める場合は「Gemini AI Pro」などの上位プランが用意されているが、導入初期段階におけるハードルの低さは魅力的だ。

 ただし、Microsoft 365 CopilotはOfficeアプリと親和性が高く、単なるチャット型AIを超えた業務パフォーマンスの向上が期待できる。AI活用の価値は料金比較だけでは測れず、既存業務との統合性や運用シナリオに応じた見極めが求められる。

企業はローコード開発プラットフォームとしても注目

 各プラットフォームで注目されるもう一つの視点が、ローコード開発基盤としての活用だ。Microsoft 365では「Microsoft Power Apps」、Google Workspaceでは「Apps Script」がそれぞれの開発ツールとして提供されており、自動化やデータ分析といった用途に対応している。機能面では大きな差はないが、Apps Scriptはややエンジニアリングスキルを要するなど、使い勝手に違いが見られる。

 ローコード開発ツールについても生成AIと同様、導入済みの業務プラットフォームとの連携を重視する傾向が強く、プラットフォーム選定の決定打にはなりにくい。とはいえ、「kintone」のような第3の選択肢を取り入れる企業も一定数ある。

 いずれにせよ、既存プラットフォームに備わるローコードツールを活用し、業務の自動化や効率化を図りたいというニーズは高く、パーソルビジネスプロセスデザインにも多数の問い合わせが寄せられているという。

生成AIやローコード開発の支援を手掛けるパーソルグループ

 生成AIを組織に定着させるには、ツールの導入だけでなく、従業員の意識改革やスキル向上を含む包括的な取り組みが欠かせない。こうした背景の中、生成AI活用を支援するソリューションへの注目が高まっている。

 例えばパーソルグループでは、「GPT-4o」や「Dify」を使った社内専用生成AI環境を構築し、業務効率化に取り組んでいる。この実践知を基に、生成AIやAIエージェントの導入・活用を支援するコンサルティングサービスも提供している。

資料提供:パーソルビジネスプロセスデザイン

 同社の強みは、ツールベンダーやプラットフォーマーに偏らない中立性と、BPO事業を通じて培った顧客の業務・ビジネスプロセスへの深い理解にある。

 これを生かし、業務改善やシステム導入に豊富な経験を持つ業務コンサルタントと、多様なスキルを備えたDX人材が一体となって支援を提供する。目的設定や環境構築、業務適用、人材育成の4つのポイントに注力し、組織への生成AI/AIエージェント活用の定着と促進を図っている。

 具体的には、基礎からプロンプト作成や開発まで段階的に学べる研修、業務活用コンサルティング、プロンプト開発・AIアプリ開発支援など多彩なメニューを用意している。また、ローコード開発を含む各種ソリューションも提供しており、生成AIやローコード開発環境の整備を検討する企業にとって有益な支援となるだろう。

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