運用管理の課題は、いつどのレポートを見ても同じで変化はない。レガシーなシステムを得意としてきたIBMもクラウドネイティブを意識して、判断の自動化、最適化など、人間の行動を軸に運用管理ツールを見直し中だ。
日本IBMは2017年8月1日、「IBM Cloud Application Performance Management」の提供を開始した。オンプレミス向けのライセンス販売の他、月額課金制のSaaS版も提供する。IBM Cloud Application Performance Managementは「IBM Tivoli」を源流に持つシステム運用管理ツールだ。しかし、「このツールは“あのTivoli”ではない」と、IBMクラウド事業本部 クラウド・ソフトウェア事業部製品統括部長の澤 崇氏は強調する。
「IBMのサービスマネジメント製品は変わったということを伝えたい」――製品発表を含む、直近の製品戦略に関する記者説明会の冒頭で澤氏が語った言葉だ。
1996年、IBMはTivoliを買収、その後も時々に応じて企業買収などを通じてシステム運用管理のポートフォリオを拡充してきた。とはいえ、TivoliにはレガシーなUIデザインや高価なライセンス費など、ネガティブなイメージを持つ方も少なくないだろう。澤氏はIBMシステム運用管理ソリューションを一新し、「使いやすく分かりやすく、購入しやすいソリューションに変化させている」という。昔のTivoliユーザーには思いもよらない話だろう。
「われわれはもちろん、国内で多くのユーザーを抱えるITソリューションベンダーも、運用管理ツールを提供してきたにもかかわらず、IDCの調査を見ると、いまだにシステム運用管理の課題は大きな変化がない状況。これは反省すべき問題」(澤氏)
IBMが考えるハイブリッドクラウドの運用管理では、オンプレミスの「トラディショナルなシステム」の運用とクラウドネイティブなシステムの運用とで分けて、それぞれに提案するとしているが、そのいずれもが「運用高度化」を目指した実装だ。
澤氏は「Tivoliを含む運用管理ソリューションの多くは各層でそれぞれ個別の情報を監視しようとする発想が強かった」と過去を反省、運用管理ツールの目的である「運用高度化を目指した自動化や可視化」に注力していることを示し、「情報の流れ」を軸に、目的指向でデータを自動処理したり、各ツールを連携したりして、人の判断までの工程を効率化しようとしていることを説明した。
この思想を元に、同社のオンプレミス環境向けの運用管理ツールのポートフォリオを見ていくと、アプリケーションモニタリングでは(1)「IBM Cloud Application Performance Management(APM)」を使い、一定の閾値を超えたデータを(2)異常挙動解析「IBM Operations Analytics Predictive Insights」に渡す。異常値の情報はさらに、(3)「Netcool Operations Insight」に伝達。Netcool Operations Insightでは、イベントパターンを考慮した自動制御やレポートを行う、というように、「情報の流れ」を作ることができていることが分かる。
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