2021年9月13日、RPA BANK はキーマンズネットに移管いたしました。
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前編に続き、全社的なRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)活用の態勢をこのほど整えたオリックス株式会社の取り組みを紹介する。オリックスグループでロボットの導入と運用にいち早く取り組んだのは、バックオフィス部門を担うオリックス・ビジネスセンター沖縄株式会社(OBCO)。短期間のうちにデジタルレイバーを仲間にできた同社には、地道な「働き方改革」の蓄積があったという。
強みである柔軟な事業展開をグローバルに拡大するため、オリックスグループは国籍や年齢、性別、雇用形態などを問わず、あらゆる社員にとって働きがい・生きがいある職場を目指した「価値ある職場づくり」というコンセプトを掲げている。定型業務にいち早くRPAを採用し、ヒューマンエラー発生の不安感から解放する方向へ舵を切ったOBCOの取り組みも、こうした方向性と軌を一にしたものといえる。
もともとOBCOは1999年の設立以来、オリックスグループ内の業務改善において先導的な役割を担ってきた。これは、バックオフィス業務を沖縄に集約することで各事業部門がフロント業務に集中しやすい環境をつくるというOBCOの設立目的とも関係するが、加えて「各社から業務を受託する性質上、移管による効率化のメリットを明確に説明できるよう業務の可視化・定量化を進めてきた」(オリックス業務改革室業務改革第三チーム主任・鈴切俊毅氏)という事情も大きい。
「ゆいまーる」と呼ばれる助け合いの精神が根付く沖縄。OBCOのスタッフは9割が女性で、子どもの急な発熱といった家庭の事情に対応できるフレキシブルな働き方へのニーズも高い。そうした事情の中、ロボットが職場へスムーズに溶け込み「すでに1人の働き手として認められている」(鈴切氏)背後には、OBCOが築いてきた独自の仕組み「ECOまるマネジメント」が存在する。
話は2009年にさかのぼる。リーマン・ショック後の景気後退により、当時のOBCOは部署間の繁閑差が拡大。いつも定時に帰れるチームの隣で、別のチームが残業に追われる事態が続いていた。その対策として始まったのが、他チームへの応援業務を可視化することで助け合いを促す「ECOまる(「いい効率ゆいまーる」の略)」の取り組みだった。業務量の管理は当初Excelベースで行っていたが、リアルタイムでのマネジメントを実現するため、2014年には専用の管理システム「ECOまるアーツ」も開発・導入している。
ECOまるアーツでは、社員の労働時間を「所属チームでの作業」「他チームへの応援」などに区別して管理。必要な人員を予測するための予実管理機能に加え、業務を細分化した各工程で要した時間を測定する機能なども備えている。OBCOではこれらの機能を活用しながら労働時間の平準化を進め、同時に「パフォーマンスの高いスタッフのやり方を学ぶ」「滞っている工程に絞って担当者を増やす」といったオペレーションの見直しも実行した。地道な積み重ねが実り、2015年には終業時刻を40分前倒しの17時20分に変更。社員が子どもの保育園へ迎えに行くまでの時間的余裕を持たせることができた。人員配置の精度が高まった結果、フレックス勤務や短時間の有休取得(1時間単位)も推進され、家族のケアを担う優秀なスタッフの離職防止にもつながっている。
その後OBCOは、RPAの導入にも踏み切る。多くの場合、ロボットによる業務効率化で成功のカギを握っているのはターゲットとなる業務の正確な実態把握だ。この点でOBCOは、ボトルネックの工程を見つけて応援のスタッフを充てるといった従来の取り組みに近い感覚でロボットを採り入れることができている。オリックスグループ内の模範ともなっている円滑なRPA化は、それに先だってECOまるが根付かせていた業務分析のたまものと言ってよい。
とはいえ本来ECOまるは、ある程度融通が利く人間のスタッフを想定してきた仕組みだ。過去の蓄積をそっくり転用しただけでは、詳細な指示を求めてくるロボットを使いこなすまでには至らないのもまた事実という。
鈴切氏は「従来『準備』『入力』といった大まかなレベルで足りていた業務分析が、ロボット化を検討する場合は『管理画面を開く』『特定のボタンをクリックする』といったより詳細な水準まで求められます。しかも、そこからさらにロボット向きの工程に見直す場合も多い」と指摘。「OBCOでの事例をみても、作業を細かく分析できていた業務ほどスムーズにロボット化できたのに対し、分析の粒度が粗いままロボットに移行させようとしたケースでは開発中の手戻りが多発していました」とも証言し、RPAの導入を機にいっそう徹底した業務分析に取り組む必要性を強調する。
業務効率化も進み、効果として210人分相当の業務の自動化に成功しているOBCO。最先端のツールを用いた業務効率化の知見がグループ各社に行き渡ろうとしている現在、オリックスはその先に向けて、いかなる将来像を描いているのだろうか。
鈴切氏は「オリックスグループ全体としてみると、現段階の取り組みには、営業をはじめとするフロント部門を本業に専念しやすくするという意義があります」と説明。人手不足で十分な数の事務職社員がおらず、顧客訪問に充てるべき時間に営業職社員が書類仕事を強いられるといった状況を、まずロボットで解消するのが最初のステップだという。
それが確立した先には、第2のステップも見据えている。「フロント業務を直接補完するようなロボットも目指したい。例えば、価格比較サイトを自動巡回して見積もり業務を支援するようなツールをRPAで広めていきたいのです。バックエンドもフロントエンドも一体となって売上に貢献する。そこに仲間として加わるのがロボットだと考えています」と鈴切氏。創業50年を経てなお勢いを増す企業のバイタリティーが、ロボットの活躍の場も広げていくようだ。
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