2021年9月13日、RPA BANK はキーマンズネットに移管いたしました。
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IT関連の市場調査会社であるミック経済研究所が2018年6月11日に発表した調査結果によると、ツール販売や導入のコンサルティング、実装の支援といった「RPAソリューション」の今年度の国内市場は、前年度の倍以上となる444億円に急拡大。さらに21年度まで年平均65.1%という高い成長が続くと見込まれている。一方で同調査は、RPAをいち早く導入した大手金融などの大型案件はピークを過ぎたと指摘。今後、市場拡大の重点が中堅・中小企業のユーザーに移っていくことを示唆している。
企業規模や業種、地域を問わない“RPA普及期”の到来で、ベンダーの新規参入も相次いでいる。さる5月からRPAソリューション「CREO-RPA」の提供を開始した株式会社クレオ(東京都品川区)もその1社だ。ERP(基幹業務システム)やBPM(ビジネスプロセスマネジメント)の製品を持つ強みを生かしたソリューションのコンセプトや特徴について、担当者らに聞いた。
−RPAに対する期待が高まる一方で、社内で増大するロボットの“労務管理”や、人とロボットが混在する業務手順の可視化も求められる中、くしくも貴社は人事・会計ソフト「ZeeM」や、BPMツール「BIZ PLATFORM」をラインアップしています。RPAソリューションへの参入においても、やはりそうした優位性を生かす狙いがあるのでしょうか。
井上誠氏(ソリューションサービスカンパニー マーケティング統括部 事業企画部部長): このほどリリースした当社のRPAソリューションでは、何よりも「これから多くの企業が、安心して導入できるRPA」を目指しています。
山田耕大氏(同部 RPA推進グループシニアマネージャー): 事業化に先立って、必ずユーザーの立場でソリューションを試してみるのが当社が大切にしている考え方です。今回も昨年から、国内実績の多いRPAツール「BizRobo!」を社内に導入して活用法を検討してきました。
現在およそ10業務でロボットが稼働中ですが、従業員数500人弱の当社ではRPAの代表的な用途とされる「定型業務の自動化」に用いられているのは半数ほどにとどまります。このため、膨大な定型業務にターゲットを絞っていち早くRPA導入に成功した大手金融などの事例とは異なったRPA利用のご提案ができるのではないかと考えました。
今回サービス化したソリューションでは、国内で今後RPA導入が検討される際に課題となりうるいくつかの課題の解消を図っています。そうした取り組みの中で、われわれが得意とするBPMのノウハウも役立てられたという形です。
−では、これからRPAの導入を検討する企業にとって、具体的にどのような点が課題になると考えていますか。
井上氏: まず、導入時の初期コストです。セミナーなどでRPAがよくリーズナブルと言われるのは、あくまでも経営層によるトップダウンの導入を想定し、多額の投資を伴うシステム構築と比較しているためです。これがもし、現場からのボトムアップで上層部に働きかけるのだとしたら、いきなりライセンス購入の上申を出すのは難しいと思います。
これまで企業の現場レベルでは、RPAに対する関心よりも「自分の仕事を奪うのでは」という警戒感が上回っていましたが、今年に入って「繁忙期の業務負担を減らせる」といったメリットが着実に浸透していると感じます。そうした機運の中、RPAを使って働き方を見直そうと考えた方々が、社内の承認をスムーズに得るためには、導入するソリューションにも相応の「説得力」が必要です。そこで当社は、通常はライセンス購入が必要なBizRobo!を、完全従量制のクラウドサービスとして提供することとしました。
費用は“使ったぶんだけ”ですから、PoC(概念実証)の段階から実地でさまざまな検証が可能であり、気軽に試行を繰り返して効果的な用途を探し当てていくことができます。イニシャルコストと失敗のリスクを抑えつつ、業務の生産性を高められる特長を前面に出せば、マネジメント層がゴーサインを出しやすい導入計画を立てられるのではと考えています。
−初期コストのほかに重視した点はありますか。
山田氏: 運用管理の手間をなるべく少なくすることです。これからRPAの導入を検討する企業においては、導入推進の担当者がそのままロボットの運用管理まで任されるケースが増えていくと思います。働き方を見直し、生産性を高めるためのRPAですから「ロボットのせいで担当者の残業が増えた」といった本末転倒の事態を招かないようにしたいと考えました。
当社のソリューションでは、RPAに関連して新たに生じる業務フローを、RPA管理ツールを提供することにより一元的に把握できるようにしています。ロボット開発や運用管理の担当者は、個々のロボットの開発・稼働状況の確認はもとより、導入現場からの問い合わせへの対応や、ロボットの稼働環境を管理する当社との連絡を、すべてこの画面から行うことができ、やりとりの履歴はすべて自動で残るようになっています。
この管理ツールをご利用いただくことにより、RPA管理担当者の業務負担を軽減できることはもとより、RPA利用業務の可視化と統制が取れ、内部統制・監査の観点からもガバナンス整備が容易になります。
−PC上の定型業務の自動化に有効とされるRPAですが、企業規模や業種によっては、そうした業務がさほど残されていないケースもありそうです。ユーザーとしての立場から、RPAの用途をどのように考えていますか。
増田卓己氏(新基幹システム推進室): 私自身、社内でRPA導入を担当した経験から、大きく2つ考えられると思っています。
1つは、RPAの導入を通じて「内部統制」の強化が期待できることです。上場企業の経理・財務部門においては、業務フローを検証可能な状態に保つための文書化が行われていますが、法律による義務化から10年が経った現在、つい日常業務ばかりを優先してしまい、内部監査の前に慌てている部署は少なくないと思います。そこで内部監査の対応を再確認、再検討するきっかけとして、RPAの活用を検討してみるのは有効なアプローチではないでしょうか。
もう1つは「既存業務をラクにするためのロボット」というだけでなく「できればやったほうがよい」レベルの作業についてもロボットに任せることです。さきほどあった通り、当社のRPAにおいてもルーチンワークを代替する用途は半数にとどまっており、自社や競合他社の株価・出来高の変動をチェックして経営企画部門にメールで知らせるといった“プラスアルファ”の業務でロボットが活躍しています。人間の手が回りきらない部分をロボットがサポートしていけば、自動実行による早さ・正確で作業の高品質化が図れるだけでなく、業務水準をステップアップさせられる余地もかなり大きいと思います。
−国内導入実績が豊富で、取り扱うベンダーも多いBizRobo!ですが、クラウドサービスとしてはどのような特徴がありますか?
本間順和氏(ソリューションサービスカンパニー マーケティング統括部 事業企画部 RPA推進グループチーフ): クラウドでRPAツールを提供するサービスはBizRobo!を用いたものも含めていくつかありますが、当社は技術的に独自のアプローチを採っています。
具体的に言うと、われわれのソリューションでは、ユーザーから管理対象ロボットをお預かりし、指定の時刻に実行されるよう登録します。指定の時刻にユーザー企業のサーバー上でロボットが実行されるという構成を採っています。クラウド型RPAでは、Webサービス間の連携といったブラウザ上で完結する作業のみを対象とするものもありますが、当社のサービスではそこからさらに踏み込み、既存のシステム上で動く業務への幅広い対応を実現しています。
桑本武司氏(ソリューションサービスカンパニー マーケティング統括部 プロモーション部シニアマネージャー): クラウドサービスの特徴としては、提供側のわれわれがユーザーの利用状況をリアルタイムで詳細に把握できることもポイントです。うまく活用している企業に成功のポイントをうかがって他のユーザーに紹介したり、操作でつまずきがちな箇所を早く発見して改善につなげたりといった取り組みを進め、ユーザー同士で情報共有できるコミュニティーも育てていく予定です。
−RPAは、導入後も適切な運用と絶え間ない改善が重要となるだけに、ツール単体の機能と同等以上に、ベンダーから得られる情報の質やサポート体制が重要な要素となっています。
井上氏: パッケージソフトの開発を通じて、当社には人事・経理・ITに関する豊富な業務知識があります。それらをもとに、実務上よくある作業内容についてはロボットを作業テンプレートとしてご用意し、微修正のみですぐ使える環境も整えていくつもりです。
RPAやBPMの構築・運用だけでなく、導入対象となるバックオフィス業務そのものを理解しており、ありがちなボトルネックをどう解消するかのノウハウを持つ点は、実はわれわれの大きな強みなのですが、アピールが足りていないですね(笑)。トータルの業務改善も視野に入れたRPA導入のパートナーとして、より多くの方に認知いただけるよう努めていきたいです。
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