APIエコノミーに参画するのは、この3者だけではない。APIを集め、選びやすく、使いやすい形で提供する「API取引所」や、「APIマネジメントサービス業者」が存在する。
API取引所は「APIマーケットプレース」などとも呼ばれる。API提供業者はこの取引所に自社のAPIを登録し、取引所はそのAPIを選びやすく使いやすいように整理してWebサイトなどで紹介する。
APIを求める会社や個人は、自分でAPI提供業者にあたって適切なAPIがあるかどうかを確認する手間が省ける。APIを提供する側は、自社で広報、宣伝しなくとも取引所での情報公開により利用者を獲得することができる。
世界最大といわれるAPI取引所は、米「RapidAPI」(R Software)だ。8000以上のAPIが登録され、世界50万人の開発者に利用されているとうたう。R Softwareと楽天は2018年7月に独占的戦略パートナー契約を締結し、共同で「Rakuten RapidAPI」マーケットプレースを運営することになった。
今のところ登録APIのほとんどが海外製APIであり、日本語の解説は少なく、詳細はAPI提供会社の英語のページへのリンクが記されているだけの場合が多いが、海外製APIを英語で理解して活用できる開発者には便利に違いない。
登録API数で国内でRapidAPIに次ぐ取引所は、2018年3月にオープンし、現在約1300件のAPIを登録しているAPIbank(AOSテクノロジーズ)である。日本発の、日本語ベースで使える全ジャンルを網羅した初めての取引所だ。
ここには日本製のAPIが多く登録されている。例えば、「地域経済分析システム 特許一覧取得API」「気象庁防災情報XML 検索API」「星をみるひと 星座情報 取得API」が現在の利用者の人気トップ3だ。ベスト20の中に海外製APIは画像認識用の「Immaga API」だけだ。
APIbankのWebサイトでは、APIがカテゴリー分けされており、それぞれのAPIリストが閲覧できる。API名をクリックすると概要、価格、機能が表示され、APIによっては「テストボタン」で実行結果を画面上で確認することもできる。
APIbankを運営するAOSテクノロジーズの担当者は、「豊富なAPIの中から自社のビジネスなどに役立つものを探し、試してみて、それから使ってみるという段階を踏んで利用することになりますが、APIbankはそのうち『探す』に重点を置いたサービスです。登録しているAPIは全部当社で調査をして、テスト可能なものとして登録したものは、全て動作チェックをしています。また、評価の実感をブログなどで記事化しており、APIの使い方、組み込み方についての情報発信も日本語で随時行っているので、発見しやすく使いやすいサービスだと自負しています」と語る。
APIbankでは、3つのミッションとして次の役割を担うという。
なお、APIbankではユーザーから利用料金を徴収することは考えていない。現在はボランティア的にAPI利用普及のための活動を続けているという。つまりAPIを探すことについて料金は発生しないわけだ。ただし、APIを利用するときには、条件により有償になるものがあることに注意しておこう。また特定のユーザーだけに公開しているクローズなAPIの中には別途利用契約が必要なものがある。
なお、APIbankは顧客の動向や意見を見ながら、ゆくゆくはAPIの販売サポート、Web広告、API提供企業への集客サポート、蓄積されたデータの提供などにより、収益事業化していきたい考えはあるとのことだ。
また、特定領域に特化したAPI取引所も国内で登場している。KDDIは「KDDI IoTクラウドAPIマーケット」としてIoT関連の APIを集めたサービスを提供している。金融機関ではフィンテックに対応するAPIの提供や、他社APIとの連携による新サービスへの取り組みを強めており、総合的なAPI取引所とはいえないものの、有用なAPI情報を大手銀行などが収集、広報している。
APIエコノミーは今後拡大していくことは間違いないが、それには何より、有用なAPIがどこにあり、どう使えるのかの周知が不可欠。API取引所には、開発者ばかりでなく、経営層や業務部門の人にも利用価値を知らしめ、利用へのハードルを低くするための情報提供を期待したい。
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