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グローバル大企業で多数のRPA成功事例を持つBlue Prismが大切にする製品への想いと今後の製品ロードマップ――Blue Prism CTOデイビッド・モス(David Moss)氏に聞く

» 2019年06月13日 10時00分 公開
[相馬大輔RPA BANK]

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RPA BANK

同社ではなぜ多くのグローバル企業からの信頼を得て、かつRPAの定着とスケールを実現する製品を提供できているのだろうか。共同創業者の一人で、現在は同社の最高技術責任者(CTO)であるデイビッド・モス氏に、製品の礎となる込められた想い(コンセプト)と特徴、そして日本国内でもニーズが高まりつつあるRPAとAIの連携や、今後の製品ロードマップについて聞いた。

■記事内目次

目次

1. Blue Prism製品に込められた想い

2. エンタープライズの機敏な経営を実現する「connected-RPA」構想

3. 日本の独自のカルチャーに寄り添ったプロダクト開発


Blue Prism製品に込められた想い

―RPA市場には、現在多くのRPAソフトウェアが提供されています。御社のRPAツール「Blue Prism」のコンセプトと特徴について教えてください。

基幹業務、ミッションクリティカルな業務も含め全社的に自動化を図りたいといったお客様のニーズに耳を傾けて培われた「Blue Prism」の重要なコンセプトは、「IT管理(Technology Controlled)」のもと、「ビジネス側が推進しやすい(Business Led)」ことです。

ビジネス側の推進のしやすさが意味するところは「開発・改修の容易性」「運用管理のしやすさ」、そして「汎用性」が備わっていなければなりません。

  • 開発・改修の容易性:コーディングスキルが不要、オブジェクトの再利用性、検索・検証のしやすさ
  • 運用管理のしやすさ:集中管理が可能なコントロールルーム、柔軟なワークキュー管理、稼働率・生産性管理
  • 汎用性:様々なアプリ、ウェブプログラム、システム、デスクトップツールを操作できる、繋がりやすい

しかしながら、RPAを全社やグループに展開するにはシステムとして信頼できるよう、「セキュリティ」、「管理ログ」、「監査対応」、「弾力性・堅牢性」といったITガバナンスやコンプライアンスを満たす必要があります。

  • セキュリティ:サーバー内で強固に守られたRPA
  • 管理ログ:標準装備として包括的かつ改ざん防止機能に守られたロボット処理ログ、アクセスログ、ロボット定義の変更ログ、等
  • 監査対応:システム及び財務監査に耐えうる詳細な証跡、集中化、可視化
  • 弾力性、堅牢性:エラー発生時にも持続できる機能、回復機能、耐障害性

そして「IT管理」&「ビジネス主導」を維持しつつ全社的に拡張するためにBlue Prismが確立した導入・運用メソドロジー「ロボティックオペレーティングモデル(ROM: Robotic Operating Model)」も重要な要素です。

金融機関での導入実績を多く持つ当社は、厳しい規制内でも全社レベルで運用するのに必要な機能を提供し続けてきました。この考えは「インテリジェントプラットフォーム(Intelligent Platform)」に進化した今日の製品にも脈々と受け継がれています。

エンタープライズの機敏な経営を実現する「connected-RPA」構想

―今後の製品ロードマップについてお聞きしたいと思います。御社は2018年に、AI領域でマイクロソフトやグーグルなどとの提携を相次いで実施しました。どのような意図があって提携へ至ったのでしょうか。

ご存知の通りマイクロソフト、グーグルなどの先端企業では、AIやコグニティブ技術を積極的に提供するようになってきました。我々の顧客企業が業務自動化の対象領域を拡大させるためには、それらの技術を自由に選べ、当社製品に容易に取り込めるような環境を顧客に提供したいという思いが、彼らとの提携に至った背景です。

また、最先端のAI技術を使って、我々の製品自体も、もっと賢くすることができないかという思いもありました。たとえば、ロボットにさまざまなタスクを割り当てるとします。現在は、ヒトが介して、ロボットの稼働タイミングや優先順位を決めていますが、AI技術を組み合わせることで、ロボット自身が時間帯やプロセスの進捗状況を見ながら、優先するべきタスクを決めて順番に実行してくれる、そのようなスマート・タスク・マネジメントが実現できると考えています。

―2019年1月末に発表された「connected-RPA(コネクテッドRPA)」構想もその一環と言えるのでしょうか。

その通りです。connected-RPA構想は、エンタープライズ企業にとっての重要なソリューションになると考えています。

ビジネスを取り巻く環境を見てみると、デジタル化の進展により、今までの市場を壊す「ディスラプター(最新テクノロジーを巧みに利用して既存の市場を切り開く)」とも言えるスタートアップ企業が次々と登場しています。

身軽で小回りの利くスタートアップ企業に比べて大企業は複雑な社内ガバナンス、多額の投資などの観点から意志決定や開発プロセスなどに時間を要するため、フットワークがどうしても重くなり、IT投資や開発のスピードも遅くなってしまいがちです。大企業においても、改善マインドを持った(Innovativeな)従業員が多く存在するにもかかわらず、力を発揮できずにいます。

Connected-RPAの狙いは、こうした大企業が抱える課題を克服できるよう、業務の機敏性を高めることにあります。上記に述べたような「IT管理のもと、ビジネス側が推進しやすい」プラットフォームだからこそ、大企業であっても安心・安全に最先端のクラウドサービスやAI、コグニティブ技術に簡単にアクセスして、従業員が活用できるようになります。

一般の従業員が手軽に使えるようなRPAということでしょうか。

おっしゃる通りです。我々の開発哲学の一つに先ほどお話しした「スケーラビリティ(拡張性)」がありますが、そのなかには「リユーザビリティ(再利用性)」「コーディングスキルが無くても作れる」といった意味合いも込めています。つまり、プログラミングスキルがなくても基礎トレーニングを受ければ容易に開発でき、また再利用できるオブジェクトが蓄積されていくことにより開発負荷も下がります。

一Connected-RPA構想の要素の一つに、「Blue Prism Digital Exchange(Blue Prism DX)」があります。どのようなものか教えてください。

これまで、Blue Prismを利用いただくユーザー企業のみなさまから「ロボットを実装するまでの時間を短縮したい」「より優れたインテリジェントなツールと組み合わせて使いたい」という要望を多くいただいていました。

こうした声を踏まえて実現させたのがインテリジェントオートメーションマーケットプレイス「Blue Prism Digital Exchange」です。AppStoreでiPhoneのアプリをダウンロードするように、ユーザーは、各テクノロジー分野の先進企業が開発したインテリジェントオートメーションアセットを、数クリックで製品内に取り込むことができ、Blue Prismの開発スタジオ上で「ドラッグ&ドロップ」にて応用することができます。現在、110以上のアセットのダウンロードが可能となっています。

昨年11月のBlue Prism DXの立ち上げ以後、半年が経過した時点で既に登録企業約715社、4,120人を超えるユーザーのみなさまにお使いいただいています。今後も多くのスキルを追加し、ますます進化させていきます。

日本の独自のカルチャーに寄り添ったプロダクト開発

―日本の企業には独自のカルチャーもあり、RPAの取り組み方やアプローチも海外とは異なる点があるかと思います。こうした点を踏まえて日本のマーケットへのメッセージをお願いします。

当社が英語以外のバージョンで初めて作ったRPA製品が、日本語バージョンでした。我々は日本市場に力を入れており、日本の企業のみなさまの声を大切に、今後も製品開発に取り組んでまいります。

ご指摘いただいた通り、日本の企業には優れた独自のカルチャーがあると捉えています。たとえば、製造業のなかには「ジャスト・イン・タイム」という独自のコンセプトを取り入れたり、ロボットにより生産プロセスを自動化・効率化してきた会社が多々あります。実はBlue Prism製品の開発を行うにあたっては、こうした独自に築かれてきた高い利便性、自動化、効率化を追求する日本のカルチャーに刺激を受けてきました。

また、日本企業は他の国の企業と比べても、積極的にRPAに取り組んでいることは間違いありません。ただ、急速に普及しているなかで、エンタープライズ規模でのRPAを導入・運用をしようとした時に、さまざまな壁にぶつかるケースもでてきていると認識しています。

私はホワイトカラーワーカーの領域においても、日本は世界に負けない圧倒的な生産性を達成できる高いポテンシャルがあると信じています。当社のコンセプトであるIT管理のもと、安心・安全に拡張しやすいインテリジェントプラットフォームをご活用いただく事で、高いROI、生産性の飛躍的向上、そして真の働き方改革実現に貢献することができたら幸いです。

―急速に広まる日本のRPA導入と、顕在化してきた課題を踏まえ、グローバルで長年に渡り実績を積んできた御社が製品に込めたコンセプトは、足元を見つめ直すきっかけになる貴重なお話でした、本日はありがとうございました。今後の製品開発についても期待しております。

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