バックアップツールの満足度調査はいつも「満足」とする回答者が多い。だが満足の中身を見てみると、あまり使いこなしていないからこそ満足なのかもしれない。リプレース意欲を積極的に発信した回答者はどのくらいいただろうか。
キーマンズネットは2019年8月30日〜9月13日にわたり、「BCPとバックアップツールの導入状況に関する調査(2019年)」を実施した。全回答者数79人のうち、情報システム部門は45.6%、製造・生産部門が15.2%、経営・経営企画部門が7.6%、財務・会計・経理部門が5.1%などと続く内訳であった。前編ではBCPの実施状況を調査した。
今回はバックアップツールの「導入状況」や「満足度」「ツール導入時に重視したポイント」など、企業におけるバックアップツールの導入状況を把握するための質問を展開。全体の73.5%がバックアップツールを導入済みで、満足度も87.9%と高評価を得ている現状などが明らかになった。なお、グラフ内で使用している合計値と合計欄の値が丸め誤差により一致しない場合があるので、事前にご了承いただきたい。
はじめにバックアップツールの導入状況を聞いたところ「既に導入済みである(追加リプレースなし)」が60.8%、「既に導入済みである(追加リプレースあり)」が12.7%と続き、まとめると導入済みは73.5%であった(図1)。また導入を検討している割合は、追加リプレースと新規導入予定を合わせた14.0%となり、全体の1割強にとどまる結果となった。
昨今、社内外で収集・蓄積するデータを活用することで、意思決定スピードを早め、有用なインサイトを発見するなど経営に生かしていく“データマネジメント”の視点が注目を浴びる。特に日本では成熟市場と捉えられがちなバックアップ市場において、新規導入やリプレース需要を活性化させるのはまさに“データマネジメント”がどのように日本で成長を遂げるのかが大きく影響してくるだろう。
次に導入済みのバックアップツールに対する満足度を聞いたところ「とても満足」が8.6%、「やや満足」が79.3%と続き、満足度は87.9%と非常に高いことが分かった(図2)。
「満足」と回答した方のフリーコメントでは「このツールを直接原因とした障害が発生していない」「バックアップに頼らなくてはならない事象が発生した事がまだ無いので」「運用の手間が大きくないこと」など、有事の際に備えたバックアップ運用がそこまで手間をかけずに実現できていること、にメリットを感じている方が大半であった。
一方、導入済みのバックアップツールで行う「バックアップの頻度」について調査したところ「毎日行う」割合が81.0%と大半であった。一方でリストアを行ったことがある割合は39.7%と導入者全体の4割にとどまっていた(図3)。すなわち「リストアを行うべき部署に所属していない」22.4%を除いても、バックアップツール導入者の約半数がリストア経験が“ない”ということになる。バックアップツールの導入目的としてBCP対策を挙げる声が多い中で、災害など緊急時にデータのバックアップができていることはもちろん、迅速な業務復旧を見据えリストアしてデータを戻せることまでをセットに準備を行っておく必要がある。そういった側面で今回の調査ではBCPを見据えたバックアップ運用の少し心もとない現状が垣間見えたとも言えそうだ。
最後に、導入済みのバックアップツールを導入した際に重視したポイントについて調査した。その結果「運用管理の容易さ」が65.5%、「安定性」が48.3%、「導入工数・コスト」が44.8%、「保守・サポート体制」が37.9%、「既存システムとの親和性」が31.0%などと続いた(図4)。
前項の満足度でも挙がっていた通り、運用管理の容易さや安定性、保守・サポート体制などバックアップにかかる運用負荷を極力軽減したいというニーズが見て取れる。ベンダーもスケジューリングやジョブ管理機能、バックアップ運用支援サービスなど多くのソリューションを展開しており、バックアップが日常的に行われる業務だからこそのニーズであるとも言えよう。
またコスト面も重要視されている。サイバー攻撃や自然災害などいつ起こるか分からない緊急事態に備える一方で、増え続けるデータを一定期間保持し続けなくてはならない。自社ローカル環境に加えて仮想環境やクラウド環境へのバックアップも組み合わせた運用を検討する必要があるだろう。導入実績や事例にも19.0%と一定の票が集まるのも、事業継続性に加えて運用負荷やコストなど複合的な視点で検討しなくてはならないバックアップならではの特徴とも言えそうだ。
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