セキュリティに対する懸念が払しょくされ、パブリッククラウドに対する注目度が高まっている。一方で、プライベートクラウドもマネージドサービスの拡充が進み市場の成長を促している。
IDC Japanの発表によると、2018年の国内プライベートクラウド市場規模は前年比38.6%増の5764億円であった。同市場の2018年〜2023年の年間平均成長率(CAGR:Compound Annual Growth Rate)は36.4%で推移し、2023年の市場規模は2018年の4.7倍である2兆7194億円になると予測する。
現在、国内市場ではプライベートクラウドよりも、パブリッククラウドに対する注目度が高まっている。その背景には、ユーザー企業のパブリッククラウドに対するセキュリティの懸念が解消傾向にあるとともに、パブリッククラウドへの移行を促すベストプラクティスの整備やマネージドサービスの拡充などがある。
一方で、プライベートクラウドもセキュリティ機能やサービスの強化、インフラストラクチャからアプリケーションまでを網羅したマネージドサービスの拡充が進み、プライベートクラウドを選択するユーザー企業も多く、国内プライベートクラウド市場の成長を促進している。
これまで、国内においてプライベートクラウドは既存システム(特に、基幹系システム)の移行に適したクラウドであると考えられる傾向があった。しかしプライベートクラウドは発展し、「コンテナ環境」「人工知能/機械学習」「オープンAPI」などの新技術にも対応している。さらには、ハイブリッドクラウド環境における統合運用管理の発展も進んでいる。企業のプライベートクラウドに対する関心は、ITの効率化からデジタルトランスフォーメーション(DX)へと拡大している。
パブリッククラウドとプライベートクラウドの技術基盤は、相互に強い影響を与えて発展している。パブリッククラウドの課題であった「過去資産の継承性」「柔軟な運用性」は、解消傾向にある。現在、ユーザー企業のプライベートクラウドに対する期待は「コストの優位性」「セキュリティ要件やネットワーク環境を考慮したシステム/データの配備場所」「産業特化型サービス」に置かれている。
「ほぼ全てのベンダーは、ユーザー企業の期待に対応すべくプライベートクラウドの低価格化、セキュリティ/ネットワークの強化を進めており、ベンダー間の差別化が困難となっている。ベンダーは、ユーザー企業のOT(Operation Technology)の変革を支援するといった特徴あるサービスの提供が競争力を高めるためには必要である」と、IDC Japanの松本 聡氏(ITサービス リサーチディレクター)は分析する。
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