2020年から商用サービスの展開が期待される「5G」。次世代通信規格として企業の目を集めるが、5Gに積極的に投資する産業分野とは。
IDC Japanは「国内法人向け5G関連IT市場予測」を発表した。
2020年に次世代モバイル通信規格「5G」の商用サービスの開始が予定されており、それに併せて「ローカル5G」にも注目が集まる。5Gの最大のターゲットの一つは産業分野のIoT(モノのインターネット)であり、今後、産業分野において5Gネットワークを活用したさまざまなIoTアプリケーションが構築されると考えられる。
IDC Japanは、ユーザー企業や通信事業者、ベンダーなどに対する調査結果から、国内の法人向け5G関連IT市場の2026年の市場規模を1436億円、2020年〜2026年の年間平均成長率を198%と予測している。
また今回の調査によって、企業への5Gの普及が無線LANや固定ブロードバンドといった既存のネットワークの置き換えではなく、新規のデジタルトランスフォーメーション(DX)用途やスポットでの導入から始まることが明らかになった。
5G活用のユースケースとして、スタジアムなどのイベント会場や観光、ゲームなどでの新しい映像体験の提供が挙げられる。産業分野では、無線化による生産設備などのフレキシビリティの向上や画像を基にした設備の監視や予兆保全、自律移動機器(自動搬送車、ロボット、ドローンなど)の活用、検査/点検、遠隔からの作業支援、3Dシミュレーションなどの現場のソリューションに期待が集まっている。その背景には、人手(熟練者)不足や作業員の安全確保、働きがいの維持、防犯、生産性、品質向上など、多くの企業現場に共通する課題がある。
5Gの普及拡大には、5Gサービスの提供エリアの早期拡大やコストの低廉化、端末やアプリケーションなどエコシステムの発展、自律運転や遠隔操作の安全性に関する法制度の整備など、5G利用環境を整える必要があり、やや時間を要すると予測される。
また、5Gだけでなくユースケースを実現するようなAI(人工知能)による画像認識などの技術の発展も不可欠だ。今後数年間にわたって、新しい技術と市場の成熟、法制度の整備が進むことで、5Gのユースケースの普及が加速するとIDC Japanはみている。
5Gに積極的に投資する産業分野は、人手不足などの課題に対して革新的なソリューションの実現に取り組む製造業や運輸業、建設業、医療業、メディアなどさまざまな分野が挙げられる。中でも、産業機器メーカーなど製造業自身による5Gを活用した現場のDXやR&D活動と、それによって得た知見を自社製品と組み合わせて新たなソリューションとして販売する取り組みは、顧客である多くの企業に波及するとIDC Japanは考える。
さらに5Gは導入が容易であることから、社会システム間の新たなデータ連携を促進すると考えられる。IDC Japanの小野陽子氏(コミュニケーションズグループ リサーチマネージャー)は、「5Gは、まずDXによって企業課題を解決するために導入される。そしてそれらの取り組みは、より広範な社会課題を解決するする動きへと広がっていくであろう」とコメントする。
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