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Office 365やチャットツールが重い、つながらないのはなぜ? 原因と解決策を解説

テレワークで業務を進める際、「Office 365」などのツールが使い物にならないくらい遅くなることがある。どんな原因が考えられるだろうか。自社内で改善できる対策を解説する。

» 2020年05月18日 08時00分 公開
[キーマンズネット]

 「Office 365」や「G Suite」などのオフィススイートをはじめ、さまざまな業務でSaaSアプリを利用することが増えた。インターネットに接続できればどこからでも業務を遂行できるとあって、テレワークなどの新しい働き方にも適している。

 だが、従来オフィスからインターネットに接続することが多かったトラフィックの状況にも変化がみられるようになってきた。特に多くの従業員が日常的に利用するアプリをSaaSで使う場合には、通信速度が業務効率に直接影響を与えるため、ちょっとした遅延でも問題となりやすい。

テレワーク利用者拡大で「Office 365が重い」の問い合わせが増える理由

 業務アプリが重くなる理由は幾つか考えられる。1つは在宅の従業員が利用する通信回線そのものが遅くなっていることだ。またサービスそのものに障害が発生するケースも考えられる。これらは通信事業者やサービス運営元の障害情報を確認し、復旧を待つより他はないだろう。

 もう1つ、従業員が自宅からインターネットに接続する際の通信速度に問題がなく、サービスプロバイダーから障害情報が出ていないにもかかわらず、「重い」といった問い合わせがくる場合も考えなくてはならない。この場合、従業員の端末とSaaSアプリとをつなぐ経路に問題がある可能性が高い。

 多数の従業員が一斉にインターネットなどを経由して社内にアクセスし、そこからインターネットに出ていくトラフィック設計になっている場合、ネットワークのキャパシティーを超えてしまうケースが考えられる。

 働き方改革への親和性の高さや、運用・保守管理の容易さから、国内でもOffice 365やG SuiteなどのSaaSアプリを導入する企業が増えている。Webブラウザがあればどこでも業務をこなせるのに加え、ライセンスによってはチャットツールなども備えておりコミュニケーション基盤としても活用できることから、テレワーク体制にも適している。

SaaSアプリが重くなる原因は

 SaaSアプリにはメリットが多い一方で、導入すると新たな課題が顕在化する。それがWebアプリによる通信トラフィックの急増だ。

 一般的なWebブラウジングなどでは1アクセス当たり数セッション程度で済んでいたところが、代表的なクラウドサービスOffice 365を例に見ると、クラウドサーバとの間にセッションを常時数十も張ることもある。これが全社的に導入されると、従来のネットワークインフラではさばき切れないトラフィック量になってしまう。

 特に問題が大きいと思われるのが、多数の拠点を閉域網やVPNでつなぎ、限られた数のWebプロキシやファイアウォールに集中するネットワーク構成をとる企業だ。全社のWebアプリのトラフィックがインターネットの接続点に集中することで、インターネットアクセス全体の速度が大幅に低下してしまう。

SaaSアプリまでの経路が問題の可能性も

 さらに拠点間通信網もトラフィック増で速度が低下する。速度やトラフィック量に応じてコストが上昇するこれらの回線では、回線増強によるコストでクラウド化のメリットを相殺しかねない。実際、先行してOffice 365を導入した企業ではこれらの課題が顕在化している例も少なくない。

「インターネットブレークアウト」で何ができるか

 このような課題への対応策として近年注目を浴びるのが「インターネットブレークアウト」(ローカルブレークアウトとも呼ばれる)だ。

 下記記事ではインターネットブレークアウトの仕組みや技術の詳細を紹介しているので、本稿と併せて読んでほしい。

 以降では、インターネットブレークアウトの概要とどう効果があるのかを紹介する。

 もともとSaaSはクライアントとクラウドサーバとの間をSSLで通信するため比較的セキュアだ。このメリットを生かせば、必ずしも全ての通信を社内経由で通す必要はない。拠点に設置したルーターなどからクラウドサービスへのアクセスのみをインターネットに逃がして(ブレークさせて)しまう。これが「インターネットブレークアウト」だ。インターネットブレークアウトにより、数少ないゲートウェイの負荷、そしてそこまでの接続に使われる拠点間通信網の負荷を下げ、ネットワークの速度低下を防げる。

 このように、インターネットブレークアウトによって、クラウドサービスのトラフィック問題を解決できるのだが、その実現は簡単ではない。クラウドサービスのトラフィックをブレークさせるには、ルーターにクラウドサービスの宛先を設定する必要がある。クラウドサービスによっては、連携しているサービスへのセッションも同時に使われていたり、サービスの変更があったり、また新たなサービスも日々登場していたりするため、管理者がいちいち手動で設定を行うにはハードルが高過ぎる。このような課題を解決するのが、SD-WAN(Software-defined Wide Area Network)だ。

インターネットブレークアウトを実現する製品、サービスはどんなものか

 SD-WANはソフトウェア定義型のWANを指す。従来、専用機器を使って構成してきたネットワークを仮想化し、ソフトウェアで制御できるようにしたものと考えると分かりやすいだろう。本来はネットワークを仮想化し柔軟な運用を行うことを目指したものであるが、これをインターネットブレークアウトに応用したSD-WAN機能付きルーターやUTM(統合脅威管理)が続々登場している。

 特に、1台でルーターやファイアウォールなど、多数の機能を持つSD-WAN対応UTMは、高いセキュリティを持つインターネットブレークアウト環境を構築でき、リモート管理も容易に作られているので、支店や営業所、工場など、システム管理者が常駐しない拠点に最適だといえるだろう。

 これから全社的なクラウドシフトを検討している企業、そして既に導入していてネットワークのパフォーマンス低下が気になっているネットワーク管理者は、インターネットブレークアウトの導入を検討したい。

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