新型コロナウイルス感染症の拡大防止策として多くの企業が半強制的に取り組み始めたテレワーク。新入社員研修への影響や、ワークライフバランスへの影響は出ているのだろうか。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行に伴い、緊急事態宣言が発効されてからもうすぐ2カ月になる。テレワークや時差出勤など感染拡大防止策が求められる中、企業の人事・労務管理ではどういった変化が起きているのだろうか。従業員のワークライフバランス管理やオンラインでの新人研修実施状況などテレワークと人事労務管理に関する調査リリースをまとめた。
プログラミングやアプリ開発のオンラインスクールを運営するキラメックスは、2020年度の新入社員研修を実施したIT企業の研修担当者を対象に「新型コロナウイルスの影響下における新入社員研修と配属」をテーマに調査した(調査期間:2020年5月7〜15日、回答者数90人)。その結果、64%の企業がオンラインで新人研修を実施していることが分かった。
それによると、新入社員研修を「オンラインで実施」した企業は全体の38%、「オンラインとオフライン両方実施」した企業は26%、「オフラインで実施」した企業は36%となった。オンライン研修は、在宅勤務のまま実施できるだけでなく「遠方にいる社員でも研修を実施できた」「研修用の場所の確保が不要だった」など、オフィスでの社員研修よりメリットがあるという声も挙がった。
一方、今後の研修や社員教育について全体の83.3%が不安に感じていると回答した。不安な点として「研修を受ける社員同士のコミュニケーション不足」(43.3%)「研修を受ける社員のモチベーション維持」(38.9%)「例年同様のレベルまで育成できるか」(27.8%)などが挙がった。
リクルートマネジメントソリューションズ組織行動研究所は、従業員規模300人以上の企業でテレワーク経験がある一般社員664人と管理職253人を対象に「テレワーク緊急実態調査」を実施した。テレワークの「ワークの質」「ライフの質」「業務ストレス」とテレワーク習熟度がワークライフバランスにどう影響しているかを調査した。一体、何割のビジネスワーカーがテレワークでワークライフバランスが変化したと感じているのだろうか。
テレワーク環境下におけるワーク、ライフ、バランスの変化のパターンを可視化するため、テレワーク経験者における、「ワークの質の変化」「ライフの質の変化」「業務ストレスの増減」を尋ねたところ、回答者の40.3%は、ワークの質、ライフの質、業務ストレスともに変化していないことが分かったという。一方、ワークの質とライフの質が相乗的に向上し充実したとする回答者は23.1%いたものの、その半数は業務ストレスの高まりを感じていた。さらに、ライフの質のみ向上し他が変化していない回答者が21%で、ワークとライフともに質が低下したと感じている回答者も一定数見受けられた。
回答者をテレワーク習熟度別に見ると、テレワーク歴が長く実施頻度も高い群では「ワークの質・ライフの質が共に向上、業務ストレス減少」タイプが増加した。その一方、テレワーク歴が浅く現在の実施頻度が高い群では「ワークの質・ライフの質が共に低下」タイプが多くなった。
同研究所の主任研究員、藤澤理恵氏は「テレワークにおける、ワークの質やライフの質の向上、業務ストレスのマネジメントには『慣れ』の要素が影響することが分かりました。今、不満を感じている人も環境が整い経験が増えることで状況は改善し、テレワークのメリットも享受できるようになりそうです」とコメントしている。
米国のビジネスワーカー2000人を対象にCitrixが米国の調査会社OnePollと共同で実施した調査によると、テレワークに取り組んでいる従業員の64%が「1カ月間以内にオフィスに戻ること」に対して不安を抱いていることが分かった。
オフィスに不安を覚えなくなるまでどの程度の期間が必要かという問いに対する回答は以下の通り。
その他、従業員の安全を確保するため、雇用者が全従業員のマスク着用や使い捨て手袋の着用、消毒剤の準備といった対策を取らない限り、テレワークの継続もしくは最低限の出社にとどめたいという意見も挙がっている。
Citrixの最高人事責任者(Chief People Officer)ドナ・キンメル氏は「新型コロナウイルスによる影響が続く中で業務再開の準備を進める企業は、従業員がオフィスへの復帰に対して抱いている懸念や期待を理解しなければなりません。従業員の大半はいまだ不安を抱き、自分自身や家族をリスクに曝すことがないように確証を求めています。雇用者はこのことを自らの計画に織り込む必要があります」と指摘している。
フルタイムでオフィスに復帰することに不安を感じなくなるためにはどうすれば良いのだろうか。同調査では次のような回答が寄せられた。「全従業員を対象とした定期的な検査と健康診断」(51%)、「有効なワクチン」(46%)、「会社が接触/移動追跡アプリケーションを導入」(44%)、「政府が接触/移動追跡アプリケーションを導入」(38%)、「病欠に関する柔軟な指針」(28%)。その他、3%の回答者は仕事に対する考え方が変化し「フルタイムでオフィスに復帰することは望んでいない」と回答した。
キンメル氏は「今回の調査が明示しているように、企業は今後、進展を望むなら在宅勤務と従来のオフィス勤務の両方に対応した柔軟なモデルを長期計画に組み込む必要があります」と助言している。
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