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多数のRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)ツールがひしめく中、中堅・中小企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)推進の切り札として注目を集める株式会社FCEプロセス&テクノロジー(東京都新宿区)のRPA「ロボパットDX」。2017年10月にリリースされてから約3年で1,200ライセンス超が企業に導入され、活用されている。
このRPA「ロボパットDX」のさらなる有効活用に向けて、導入企業における取り組みの共通項やDX推進のマネジメント手法を紹介するイベント「RPAロボパットDX 導入企業事例発表会」が、2020年12月8日にオンラインで開催された。
本稿では、同イベント第2部の導入企業2社による事例発表の模様をダイジェストでレポートする。
まずはじめに、株式会社光洋のストアオペレーション部 部長 兼DX推進担当の佐茂好則氏より、ロボパットDXによる人材育成と組織力強化のためのマネジメント方法が紹介された。
「SUPERMARKET KOHYO」「マックスバリュ」「PEACOCK STORE」といった地域密着型のスーパーマーケットを展開する株式会社光洋は、2020年5月にロボパットDXを導入。開発期間約半年、開発者3名で約40体のロボットを完成させ、年間で3,600時間以上を創出した。その結果、手作業で行っていた業務をRPAに置き換えられただけでなく、成果につながる“新しい道しるべ”を作ることに成功したという。
佐茂氏はロボパットDXにより実現したことの具体例として、「ポイントカードの販売枚数・利用率の可視化による販売力の強化」「発注業務の自動化による一元管理の達成」などを挙げ、RPA導入には、パソコン業務の業務仕分けができるというメリットがある、と強調。RPA導入によりPCで行っている業務と操作手順の可視化を行うことになり、結果としてPC業務全体の見直しにつながるという見解を示した。また、親しみを持ってもらうために、ソフトウェアロボットに「アトム」という名前を付けていることも紹介した。
続いて同氏は、株式会社光洋のDXの取り組みについて説明。同社は顧客や従業員、社会に真に求められる企業となるために、テクノロジーを使って「基礎的満足度」を高め、それによって創出された時間で人にしかできない業務を行い、「付加価値的満足度」を高めることを目指しているという。そしてそのためのきっかけにはRPAがふさわしいと考え、導入に至ったことを明らかにした。
次に佐茂氏は、なぜロボパットDXを導入したかについて解説。過去に別のRPAツールを導入した際、開発者を孤独にしてしまったことや、完全な形のロボットを作ることにこだわった点を反省点として挙げ、これらを踏まえて「チームで協力しながらの開発が必要」「業務の一部分だけのロボット化も可」とする導入方針を新たに定めたと説明した。
そしてこれらの導入方針に加え、開発技術や安定性、標準化や費用という4つの判断軸から複数のRPAツールを検討。併せて代理店や利用企業、ベンダーに対するヒアリングも行った結果、自社にふさわしいRPAツールだとして、ロボパットDXの採用を決断したという。
現在社内でロボパットDXを開発している担当者は、導入方針に従い、チームで協力しながら開発しやすくなるような“道しるべ”を作成。一連の業務のどの部分をロボット化しているかが一目で分かる“道しるべ”の導入により、開発しやすい環境が整っただけでなく、経営層からも「アトムならこの業務ができるのでは」「このロボットを社員全員で統一して活用するように」との声がかかるようになった。
ここまでRPAを社内に浸透できたのは、「本当に必要な業務は何か」を考えたからだという。「今行っているが本当は必要のない業務は何か。逆に今はないが、あってほしい業務にはどんなものがあるか。それを常に考え続けていた。その結果、新しい価値を作り出すことに成功した」(佐茂氏)。
そして佐茂氏は、DX推進において最も大事なことは「業務の可視化」であるとして、本社業務や店舗業務を組織的に見直すため、「本社業務改革タスクチーム」を新設したことに言及。全ての業務を一覧化して、やめる業務や簡素化・標準化する業務、集中化・移管する業務などのカテゴリーに仕分けし、それぞれに対して「業務整理」「業務手順書作成」「RPAによる自動化」などの対策を講じたと明かした。
併せて同氏は、RPAを単に今ある業務の置き換えに使うのではなく、業務自体をやめたり絞り込むことが大切だと強調。「従業員が成果につながる業務に着手できるような環境を作り出すことが、DX推進のためのRPAの役割だ」と述べ、セッションを締めくくった。
続いて三和ホールディングス株式会社(アイリンクス株式会社)セルフケア事業 部長 眞子健太氏より、「RPA定着のポイントとグループの垣根を超えた活用方法」というタイトルで発表が行われた。
不動産事業を展開する三和エステート株式会社、住宅事業を展開するMAKIHAUS株式会社、総合通販サービス事業などを展開するアイリンクス株式会社などをまとめる三和ホールディングス株式会社は、グループ全体で働き方改革を推進している。このうちアイリンクス株式会社は、グループのセルフケア事業のほか、レストランの経営や保育園の運営などを担っている。
眞子氏はまず、RPAを導入したきっかけについて言及。2019年1月にトップからの指示を受けてRPA導入を決めたことを明らかにした。2019年2月には、理系大学の出身でSE経験があり、当時通販部門の管理職だった社員を担当者に任命し、RPAツールの選定も任せたものの、他の社員が関心を持たず担当者は退職。RPAの導入はトップと社内の巻き込みが課題になることを痛感した、と振り返った。
その後2019年6月に「技術者に頼らないRPA」をうたう「ロボパットDX」に出会い、RPA導入について親身になってくれるFCEプロセス&テクノロジーの担当者の存在もあって採用を決断。そして2019年8月に「ロボパット部」を発足し、部活動としてロボパットDXを推進していくことを決めた。
部活動として取り組むことにした理由として、眞子氏は次のように説明した。
「以前の失敗を活かし、今度は全社員でRPAに熱くなりたいと考えた。そしてそのためには『部活』という形を取るのがよいのではないかと思いついた」
当初4人でスタートしたロボパット部は、ロボパットDXについての情報の共有や分からないところを教え合うなどして成長。次第にその存在を社内からも認められるようになった。また、社内をも巻き込むような前向きな姿勢が生まれたのは、メンバー選定に起因するところが大きいという。
眞子氏によると、メンバーは年齢・性別に偏りがないように選定。業務内容に精通している社員や部活動発足の1カ月前に入社したばかりの新人、業務の責任者などを集めることにより、自然と活発な意見交換が生まれたという。また、同氏は「FCEプロセス&テクノロジーのロボパットDX担当者にも入部してもらい、監督してもらった。引っ張ってくれる存在がいることは非常に心強い」と顧問の重要性についても言及。厳しい監督の下で活動することで、それぞれのメンバーが実力をつけるのにそれほど時間はかからなかったと強調した。
順調な活動が続く中で「部活といえば大会」という声が上がるようになり、2020年1月に「ロボ部働き方コンテスト」を開催することとなった。これはロボパット部のメンバー4人がそれぞれ自分で考えたロボットを開発し、成果を競い合うというものだ。
コンテストで開発されたロボットには、社員それぞれの実績をエクセルに入力する作業を自動化する「実績集計ロボ」や、在庫状況を共有する「在庫管理ロボ」などがある。眞子氏はこれらの中から「在庫管理ロボ」を挙げ、それまで自分がいなければ在庫管理業務が回らないと考えていた担当者が、ロボパット部に入部することで情報をオープンにして社内に共有することの大切さに気づいたことを指摘。ロボパットDXの導入は、自分で考えることができる社員の育成にもつながるとの見解を示した。
ほかにも、コンテスト開催を通じて同グループの他社から「自社でもロボパットDXを使いたい」という声が聞かれていることや、仮入部を希望する社員がいることを紹介。トップと導入責任者、相談窓口であるFCEプロセス&テクノロジーのロボパットDX担当者、実務現場がそれぞれに向けて適切な働きかけを行っていることが、グループ全体のデジタルリテラシー向上につながっていると説明した。
眞子氏は今後目指すこととして「社員全員のSE化」というキーワードを紹介。これは具体的には「社員全員がロボパットマスターに認定される」「エクセル勉強会の開催」「経常利益の10%をデジタル投資すること」などを指す。
まずは現在ロボパット部で所有している1ライセンスを使い切ることを目指して12名の社員全員がロボットDXで開発ができるようにし、再びコンテストを開催して「競い合いながらもロボットを楽しく活用していきたい」(眞子氏)という。
最後に同氏は、ロボパットDXとロボパット部、FCEプロセス&テクノロジーのロボパットDX支援が掛け合わされることで、単なる業務改善だけでなく、自分で考えることのできる社員の育成とチームの生産性アップが実現できると強調。ロボパットDXを導入したものの、社内チームへの浸透がうまくいかずに悩んでいる担当者に向けて、自社のRPA導入が成功した背景には「FCEプロセス&テクノロジー担当者の熱意と、悩みに寄り添って考えてくれる姿勢があった」ことを明かし、セッションを締めくくった。
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