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多品種帳票の自動処理:IQ BotとTegakiの最新情報

» 2021年01月15日 10時00分 公開
[元廣妙子RPA BANK]

2021年9月13日、RPA BANK はキーマンズネットに移管いたしました。
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RPA BANK

手書きの文字を高い精度で検出できるOCRエンジン・Tegakiと、RPAのグローバルリーダー・Automation Anywhereとの一体型ソリューションが発売されます。固定帳票はもちろん、多品種の準定型帳票を扱う業務がどれほど簡単な事前設定で自動化できるか、デモンストレーションを用いてご説明いただきました。

■記事内目次

  • 会社紹介・製品紹介
  • 一体型プラットフォームに組み込まれている「IQ Bot」の強み
  • 自動化ソリューションとしての「IQ Bot」の強み
  • IQ Bot×Tegakiで可能になること
  • まとめ
  • ソフトバンクからサービスのご紹介

会社紹介・製品紹介

佐野千紘氏(オートメーション・エニウェア・ジャパン株式会社 セールスエンジニアリング本部 シニアソリューションセールスエンジニア): ご視聴いただきましてありがとうございます。オートメーション・エニウェア、セールスエンジニアの佐野千紘と申します。本日は「多品種帳票の自動処理:IQ BotとTegakiの最新情報」というタイトルでお話をさせていただきます。

最初に、弊社をご存知ない方もいらっしゃるかと思いますので、簡単に会社紹介をさせていただきます。弊社は、RPAのグローバルリーダーとして認定いただいているRPAのベンダーで、ご覧いただいている数字の通り、全世界に40カ所以上の事業所があります。

弊社では、RPAのbotをデジタルワーカーと呼んでいますが、既に210万以上のデジタルワーカーを4,000社以上で使っていただいています。1社あたりに換算すると約525botですので、「せっかくRPAを導入したにも関わらずなかなかスケールしていかない」、「50以上のbotが動いている企業は少数」という日本のRPAの状況の中で、非常にまれな存在であることが分かっていただけるかと思います。

なぜこのようにスケールしているかと言いますと、デスクトップ型のAutomationで問題になっている管理面の容易性やセキュリティ等にフォーカスしながら、スケールしやすい作りを組み込んでいるだけでなく、製品開発をデジタルワークフォースプラットフォームという考え方で行ってきた点が大きな理由として挙げられます。これによって、今回のテーマであるRPA、そしてOCRも、一体型のシームレスなプラットフォームとしてご利用いただけるのです。

こちらのスライドですが、RPAなどによる自動化プロジェクトは、ツールを入れて終わり、ではありません。RPAの前後でさまざまな工程が発生してきます。こちらの図で言いますと左上のところです。まず「発見・抽出」と書いてありますが、自動化するプロセスが社内のどこに眠っているのかを見つけます。

そして今度はデータの構造を「把握」し、データをロボットが処理可能な形に作り変えなければなりません。それができて初めてロボットが動き、その効果をきちんと分析して、それ以降のRPAのスケール化につなげていくPDCAのサイクルが回るようになります。成功の秘訣はここにあり、このPDCAのサイクルを効果的に回していただけるよう、弊社が提供しているプラットフォームが次の図です。

先程のサイクルの図の通りですね。それぞれの工程に応じたソリューションを、プラットフォームの中に一体型で組み込んで提供しています。一番左が「Discovery Bot」と言いまして、最近新しくできたソリューションです。別途ウェビナーの機会等もございますが、プロセスを発見する、埋もれている自動化の機会を見出すことにフォーカスしたソリューションになっています。

2番目は「IQ Bot」と言い、「データの理解」と書いてありますが、弊社のプラットフォームに組み込まれたOCRのソリューションです。RPAとOCRと言いますと「OCR連携」という言葉が非常にポピュラーになっていますが、単純に連携しているというよりは、プラットフォームの中に一体型に組み込まれているようなイメージです。

次は単純な連携と、プラットフォームに一体となって組み込まれていることの違いは何なのか、一体型で組み込まれるメリットはどのような点なのかをお話ししていきたいと思います。

一体型プラットフォームに組み込まれている「IQ Bot」の強み

こちらがIQ BotとRPA、弊社のAutomation Anywhere A2019というプラットフォームを使って実現できる、一般的な処理のフローです。例えば注文書の処理の場合、複数のフォーマットの注文書をまとめて複合機でスキャンしていただくか、あるいはメールで受け取るケースもあれば、メールで受け取った画像のデータを特定のフォルダにしまいます。

そうすると、どの会社から来た注文書かは特に意識することなく自動でアップロードし、そこからIQ Botで自動処理を行っていきます。特に問題がなかったデータに関してはそのままCSVを出力し、誤りを検知したケースは人間による検証に回し、訂正した内容を次回以降の処理にフィードバックした上で、訂正の結果を反映させてCSVを出力します。一度CSVができ上がれば、それを使ってRPAで後続システムに入力したり、それ以外のデータと突合して確認をするといった自動化のフローが組めるのです。

こちらをご覧いただいて、率直に「何がそれほど特別なのか」、「RPA連携はこういう事ができるのが普通ではないか」と思った方もいらっしゃるかもしれません。実際にRPAとOCRの連携というと、「こういうことがやりたくて検討を始めたけれども、実際はなかなか難しい」と回りまわって弊社にご相談いただくケースが多くなっています。なぜ一見当たり前に見えるこのスムーズなフローの構築が他のソリューションだと難しいのかと言いますと、次の図をご覧ください。

まず、OCRに分類機能がなければ、アップロードの部分が手作業になってしまいます。注文書を例に挙げますと、AIの技術等を使っていない場合、送られてきた注文書がA社のフォーマットなのか、B社のフォーマットなのかを自動で振り分けるのはなかなか難しいです。実はOCRのプロジェクトは、アップロードやそのために必要な振り分けの処理等を、人間が手動でやっているケースが多く見られます。あるいはその振り分けを自動でやろうとすると、比較的高額な別料金がかかるケースが見受けられます。

また、RPAとOCRが一体型になっていない製品の場合は、RPA・OCR連携と言いつつも、APIの開発が必要になったり、結構長いシナリオを作り込まなければならないことがあります。弊社のRPA「A2019」とOCRの組み合わせであれば、IQ Botを呼び出すための非常に基本的な処理が大体4ステップぐらいで完結します。しかし、例えば違うOCRシステムにログインしてテンプレートを選択する等、人がやっている操作を記録してロボット化するパターンであれば、botが40ステップから70ステップぐらいに膨らんでしまうケースもあります。この部分を自動化するために必要な技術を、次の図で説明します。

プラットフォーム自体が分類の機能を内蔵していなければ、この部分を自動化する事はできません。IQ Botの場合は、既にこの機能が標準機能として内蔵されています。今ご覧いただいている図の5つのファイルは、上3つがA社のフォーマット、下の2つがB社のフォーマットです。B社の左側は2ページで1ファイルになっています。

この5ファイルをIQ BOtにアップロードすると、AIがこれらの帳票の分類を行い、3対2に分けます。上の3つがフォーマットAのグループ、下の2つがフォーマットBのグループというように自動で分類されるのです。つまりA社のフォーマット、B社のフォーマットという違いを気にすることなく一度にアップロードし、その後を機械の処理に任せるというフローが実現できるのです。

続きまして、こちらの図です。適切な誤り検知の機能がない場合、せっかくOCRでデータ化しても、結局人間が全件目検証をするケースが多くのプロジェクトで見られます。IQ Botでもそういったケースが0かと言えばそんなことはありません。ユースケースやお客様のポリシー、あるいは要望によっては全件目検証をお勧めするケースもあるのですが、紙の情報をデータにすることで結局何がしたいのかを掘り下げていくと、OCRのプロジェクトは「紙が文字になった」ことで終わりではなく「紙を使っている業務のプロセス全体を自動化したい」場合が大半なのではないかと思います。そうであれば、良いケースと誤りを検知したケースをロジカルに切り分けて、良いケースはしっかりと自動化率を高めていき、誤りはきちんと検知する仕組みの実装が必須です。

これに対してIQ Botで何ができるかというのがこちらの図です。「多彩な条件でロジカルに誤りを検知することで自動処理の妥当性を高められる」と書いてあり、誤り検知の例を挙げています。

1つ目は、日付や数字等の型に一致しているかという検知です。要は、日付が入るはずの項目に日付ではないものが入ってきた場合、OCRが何らかの読み誤りをしている可能性が高いということです。

2つ目は、型番、電話番号、メールアドレス等の形式に合致しているかという検知です。3つ目は、特定の選択肢のいずれかに完全一致しているかという検知です。都道府県名であったり、支払い方法であったり、いくつかの母数の中から正解が決まる場合ですが、そういった形式での検証も可能です。

最後の検知は、数式による検算という面白い方法です。例えば、注文書や請求書等の明細行で、「数量×単価」が金額欄と一致しているか確認することができます。もし読み取り結果が異なる場合、そのいずれかの項目をOCRが読み誤っている可能性が非常に高いということです。OCRが読み誤りを起こして、なおかつこの検算が合っている可能性は極めて低いため、この形式で検証しています。

同じ理屈で、例えば税抜きの金額と消費税を足したものが税込価格と一致しているか、あるいは明細行の金額の合計が、合計欄から読み取った合計の金額と一致しているか等、多彩な検算を行いながら、自動処理の妥当性を高めつつ、誤りはきちんと誤りとして人間の検証に回すというフローの構築が可能になっています。

以上のようなフォーマット分類の機能と、適切な誤り検知という2つの特徴によって、このように非常に自然なフローでOCRを使っていただくことができます。これが、IQ BotというOCRのソリューションが、デジタルワークフォースプラットフォームという、一体型のプラットフォームに組み込まれていることの強みでした。

自動化ソリューションとしての「IQ Bot」の強み

これまではプラットフォームとしての強みをお話ししてきましたが、次は紙業務を自動化するソリューションとしてのIQ Botそのものの強みを見ていきたいと思います。IQ Botの強み、得意分野は「準定型帳票の構造をフレキシブルに取得すること」だと言えます。具体的なイメージが湧きづらいかもしれませんので、これから説明していきます。

最も端的に言うとすれば、こちらのイメージです。「異なるフォーマットの準構造データ」と書いてありますが、これは注文書や請求書等の帳票のことです。異なるフォーマットの画像の情報から、共通の構造化データを取り出す、というのがIQ Botでできることです。

例えば、今図でご覧いただいているのは3つのフォーマットの注文書です。税込みの価格が書いてあるのか、税抜きの価格と消費税だけがそれぞれ書いてあるのか、あるいは請求先、請求元の住所がそれぞれ書いてあるのか否か等、書いてある項目も違えばそれぞれ絵柄や配置等も帳票によって少し違いがあるのですが、IQ Botはその中から後続処理に必要な情報を抽出して、共通構造のCSVに落とすことができます。

このようにしてバラバラのフォーマットの帳票から構造を揃えたデータを取り出すことで、後続の処理でRPAによる自動化ができるようになるところが一番のポイントであり、これが「準定型帳票の構造を取得する」という意味です。

しかも、そのために難しい設定をしなければならなかったり、大量の帳票サンプルを読み込ませて専門のデータサイエンティストのような人をアサインしなければならないかといえば、必ずしもそうではありません。

非常に直感的で使いやすく、簡単に始められて、しかも開発者にスキルが高い人がいればそのスキルをパワフルに活用できるプラットフォームになっています。もしもプロジェクトにPython等を使いこなせるメンバーがいる場合には、抽出したデータの最終的な加工や成形等がしやすくなります。この点が準定型帳票の構造を取る際のフレキシブルさに関わってくるところですね。

ほかにも準定型帳票の構造をフレキシブルに取得する特徴があります。例えば可変の明細行を抽出する機能があります。今ご覧いただいている帳票は、明細行のデータによって行数が1つ1つ変わります。最初は2行、2行、1行、1行、次が4行となっていますが、これらを賢く1データずつ抽出するのは他社のOCRではなかなかできないことで、多くのお客様に「IQ Botだとできるのですね」と言っていただけるような特徴になっています。

次がページまたぎの明細です。これも注文書や請求書だと非常に多いと思うのですが、1ページ目の最後にあるこの「天然ハーブのど飴」の次に、2ページ目の明細も切れ目なく読み取れていることが分かると思います。こちらに関しても、「IQ Botであれば非常に簡単にできるけれども、一般的なテンプレート型のOCRだとこの辺りが難しい」というお客様が多くいらっしゃいます。

次もページまたぎと少し似ているのですが、明細の行数が変わることによって、例えば合計や総量といったような項目が何ページ目にくるか分からないケースもあると思います。そういうケースであっても、IQ Botであれば簡単にデータを取得できます。

IQ Bot×Tegakiで可能になること

さまざまな強みを紹介してきましたが、決してIQ Botが万能で、あらゆるユースケースに対する最強のOCRソリューションだというわけではありません。当然IQ Botには弱みもありまして、そのために今回手を組ませていただいたのがCogent Labsさんです。

名前をご存知の方も多いと思いますが、Cogent Labsさんの「Tegaki」というソリューションとIQ Botがインテグレーションしたことが最新のニュースになっています。こちらのプロジェクトは、Cogent Labsさんにとっても弊社にとっても、お互いにこれまで手が届きそうで届かなかった領域にアプローチするような、非常にWin-Winなプロジェクトとなりました。

ここから先は、Cogent LabsさんのTegakiというOCRのエンジンがIQ Botに組み込まれることにより、かつてのTegakiが届かなかった領域にどのようにアプローチができるようになったのか、何が良くなったのか、反対にかつてのIQ Botの弱みをTegakiがどのように克服したのか等を話していきたいと思います。

これまでIQ Botの得意分野は、準定型帳票の構造をフレキシブルに取得することだと申し上げてきましたが、一方のTegakiの得意分野は何かと言いますと、名前の通り手書きを含む定型帳票を高い精度で読み取れるところでした。

今ご覧いただいているのは、IQ Botが従来得意としてきた帳票の一覧です。先程のページでTegakiの強みとしてお見せした、フォーマットが固定の定型帳票と言われるものは、この上段の真ん中にある申込書と、左下にある勤務管理表ぐらいではないでしょうか。他は、準定型帳票、要するに発行元によってフォーマットが多岐に渡る帳票です。

定型帳票をターゲットとしていた従来型のTegakiでは、この申込書や勤務管理表といった、定型帳票以外の帳票にアプローチしづらいという現状がありました。それがIQ Botと組むことによって、精度の高いエンジンを適用しながらこれらの領域に手が届くようになりました。

また、申込書や勤務管理表といった帳票には、一部の項目に手書きが含まれていたり、あるいはかなり解像度の低い状態でスキャンされていることも多く、正直なところこの辺りはこれまでIQ Botが苦手としてきた領域です。

IQ Botは自動化ソリューションに組み込まれたOCRのプラットフォームであり、利用いただく帳票に応じて、最適なOCRを画面から選んで切り替えて使っていただくようになっています。

今ご覧いただいている上の4段が、これまで提供してきたOCRエンジンの一覧です。例えば、一番上のTESSARACT4は日本語にほぼ対応していません。ABBYYは手書きが対応していないことに加え、帳票の解像度に依存して精度がかなり揺れ動くところがあります。3段目のMicrosoft Azure Computer Visionに関しては、日本語に全く対応していないわけではありませんが精度としては劣り、4段目のGoogle Visionに関しては、手書き、活字、共に精度は非常に良いのですが、ポリシー上帳票をクラウドのサービスに投げられないお客様が多い日本で、クラウドでしか提供をしていないため、エンジンを提案しようとしても実際にはできないケースがありました。

そのような中で今回TegakiがIQ Botに組み込まれ、オンプレミスで提供されることになります。日本語の活字及び手書きを高い精度で抽出し、かつオンプレミスのソリューションとして提供できるようになったことが今回の連携の特徴になっています。

早速ですが、こちらがIQ Botが実際にTegakiと連携して動いているデモンストレーションです。(デモンストレーションが流れる)こちらはIQ Botのマッピング画面ですが、例えばお客様コードであれば「お客様コード」というラベルに対して値がどこにあるかを紐付けます。そして中身の文字の読み取りの部分をTegakiがやっています。「お客様名」も正しく読めていますね。活字と手書きが混じった「発行日」も読み取れていますし、「納期」も活字ですけれど読み取れています。

次が表です。IQ Botにおける表の抽出は、ご覧のように表のカラム名と列の幅を教えるという、少し面白いマッピングの仕方をします。1つ1つのデータの場所を教えるわけではなく、あくまでも列の名前と列の幅を教えるというオペレーションになっています。このようにしてマッピングのトレーニングをさせ、抽出結果を見てみますと、ご覧のようにきれいに読み取れています。フィールドの項目は先程見ていただいた通りきれいに読み取れていますし、活字の項目も読み取れています。

今ご覧いただいているのが丸で囲んでいる項目なのですが、これもTegaki単体、IQ Bot単体ではなく、組み合わせることで抽出が可能になる項目の1つです。今ご覧いただいているのが表の部分です。先程学習をさせたのは、列の位置と幅だけでした。それぞれのデータがどこにある、何行あるという指定はしていませんが、最終行までこの構造を取得することができ、結果としてもきれいに読み取りができています。これがIQ BotとTegakiが連携したことによりできるようになったことの1つです。このような学習を通じて、シームレスな自動化のフローが実現できるようになります。(デモンストレーション終了)

デモンストレーションで、IQ BotがTegakiと連携しながら、シームレスな自動化のフローを構築できることをご理解いただけたのではないかと思います。

続いてIQ BotがTegakiと連携することを予告してから、多くのお客様に頂く質問についてご説明します。実は「結局、Tegakiが使えるRPAであればどの会社の製品を使っても同じではありませんか?」というご質問を非常に多く頂きます。答えとしては、全然違います。何が違うのかと言いますと、まずこちらの固定帳票に対応するOCRの基本的な設定方法のイメージをご覧ください。

まず、読み取りたい項目について、例えば項目の名前や位置、あるいは「ここには手書きの数字が入る、ここには活字の文字が入る」といった形式を、ユーザーが1つ1つ設定していくイメージです。この図で言いますと、薄いグレーで網掛けになっている領域を決め打ちして、OCRが文字を読み取りにいくような方法が、固定帳票に対する基本的なOCRのアプローチです。この方法のメリットは、範囲指定が正しくできていると、非常に高い精度で識字がしやすいところです。

一方で、限界もあります。どのような限界かと言いますと、まず設定が手間ですよね。IQ Botは、例えば明細行の抽出ですと列の名前と列の幅を教えればその下のデータを勝手に取ってきたのに対し、こちらの固定座標の方式ですと、すべての表のデータを1つ1つ指定する必要があり、少し手間が掛かります。

2つ目は、位置がずれると読み取り結果が変わってしまうことがあります。これが結構深刻な問題で、右側に載せている図をご覧ください。上は「音目太郎」という名前をきれいに囲めているケースです。こういうケースであればかなり高い精度で読み取れると分かっているのですが、例えばスキャン時に帳票が少しずれてしまい、下の図のような本来読みたいところの座標と重ならなくなってしまうケースでは、それに応じて読み取り結果も変わってしまう可能性があります。

3つ目は、明細の柔軟な取得ができないことです。1つ1つ「この位置に情報がある」ということを決めて教えないといけないので、データによって行数が変わってしまうケースには対応できません。4つ目は、アップロードの作業や、その前の仕分けの作業がどうしても手作業になりがちなことです。これは必ずしも固定帳票に対する限界というわけではありませんが、こういったところも一般的なOCRのソリューションの特徴です。

全体的に統括すると、準定型帳票、多品種のフォーマットに対応しようとする時には「1つ1つの帳票に手間が掛かる」、「位置がずれて読み取り結果が変わる」、「フォーマットが多品種になればなるほどアップロードの作業等人間の負担が増える」という課題がありました。

一方で、OCRのソリューションの中には、座標指定ではない別のアプローチを取っているものもあります。いわば自動検出型とでも言うようなOCRの認識方法があります。これはどのような方法かと言いますと、帳票全体を一気にOCRに読み込ませて、どこに文字があるかの認識を、OCRがいずれも自動で行うというアプローチです。先程ご覧いただいたIQ Botが内蔵しているOCRは、全てこのアプローチで文字の認識を行っています。

この方法のメリットには、1つは読み取りの結果が非常に安定することがあります。囲まれた座標と合っているか、ずれているかといった判断が起こり得ず、帳票のどこに情報があろうとAIが文字を自動で検出して読み取りにいくために安定するのです。もう1つは、可変の項目を含む自動分類、あるいはフレキシブルな抽出をしたいのであれば、この方式を用いることが必須の要件になってきます。

今回、IQ Botと手を組むにあたって、Cogent Labsさんには一般的に手書きエンジンとして発売している固定座標アプローチのTegakiというソリューションとは別物の、IQ Botに組み込む為の特別なエンジンである「フリーフォームTegaki」というエンジンを開発していただきました。これは決して独占契約というわけではないのですが、今のところRPAと連携しているOCRの中で、このフリーフォームTegakiをRPAに一体型として組み込んで使えるのはIQ Botだけです。このような方法で手書きを含む準定型帳票を扱いたい場合は、今はIQ BotとTegakiに限られると言えます。

まとめ

最後に、これまでの論点をまとめてセッションを終わりにしたいと思います。最もお伝えしたい事は、TegakiとIQ Bot、そしてAutomation Anywhereそれぞれの強みが活きるようなソリューションが、今回提供できるようになったということです。

Tegakiの強みは、手書きを含むデータを非常に高精度で抽出できる点です。そのTegakiの強みに準定型帳票の構造の取得に強いIQ Botを組み合わせ、更にAutomation Anywhereの強みであるプロセス全体のシームレスな自動化を組み合わせ、これらのメリットを全て享受していただけるのが、弊社の提供しているデジタルワークフォースです。

手書きを含む帳票を扱いながら、プロセス全体の自動化を効果的に行いたいというお客様は、ぜひ弊社にご相談いただければと思います。それでは長い時間でしたが、最後までお付き合いいただきまして、ありがとうございました。

ソフトバンクからサービスのご紹介

三田 諭氏(ソフトバンク株式会社 法人事業統括部 法人プロダクト&事業戦略本部 デジタルオートメーション事業第1統括部 RPA営業支援部 営業支援2課 課長): 私共ソフトバンクでは、RPAのご提供を開始して以来、数多くのお客様にご導入いただいております。ソフトバンクでも全社を挙げてRPAを活用しており、社内でのRPA活用で培ったノウハウを基にサービスラインアップやサポート体制をご提供させていただいていることが、ソフトバンクのRPAの一番の特徴です。

殊にAutomation Anywhereにおいては、IQ BotやAutomation Anywhereの最新バージョン、Enterprise A2019をどの販売パートナーよりも先んじてご提供させていただいており、その実績からAutomation Anywhereより、Japan Partner Award 2020、Advanced Solution Awardを頂戴しております。

ご紹介させていただきましたIQ Botをご利用、ご活用いただくために必要なAutomation AnywhereのEnterprise A2019ライセンスを含めてご提案可能でございます。デジタルワークフォーススターターキットと、エンタープライズパックには、Enterprise A2019ライセンスに加えて、IQ Botが利用できるライセンスが含まれております。また、ライセンスのご提供だけにとどまらず、環境構築、導入は元より、スキル習得、ロボット作成・活用に至るまでの導入ステップに合わせたさまざまなオプションサービスをご提供させていただいております。

これらは全て、ソフトバンクでのRPAの活用の実績を基にしたサービスラインアップとなっております。一部ご紹介をさせていただきますと、業務選定支援サービスでは、RPA対象業務の選定、費用対効果の算出、業務フローや手順書を作成させていただき、効率的なRPA導入をご支援させていただくサービスとなります。プランは、標準プラン、診断プラン、業務追加プランをご用意しており、オンサイト、リモートでのご提供が可能です。

初期設定サービスは、Automation Anywhere Enterpriseの初期設定を代行するサービスです。お客様環境や、希望される構成をヒアリングして初期設定を行います。お客様にはOSレイヤーまでのインフラストラクチャーをご準備いただき、ソフトバンクのエンジニアが構成情報ヒアリング、ソフトウェアのインストール、連携DBのインストール、初期設定・動作確認、機能説明を実施させていただきます。

また、ソフトバンクよりAutomation Anywhereをご契約いただきますと、ご契約者専用のヘルプデスクとポータルサイトをご用意させていただきます。操作方法、bot作成、トラブルシューティング等、回数制限無く専用ポータルサイトでお問い合わせしていただけます。IQ Botを操作している中で出てきた質問・疑問は、是非ポータルサイトよりお問い合わせください。

IQ Bot、Enterprise A2019にご興味をお持ちの皆さま、製品・サービスに関する疑問、ご要望がございましたら、是非ソフトバンクまでお気軽にお問い合わせください。皆さまのデジタルトランスフォーメーションを、ソフトバンクがIQ Bot、Enterprise A2019で実現いたします。 

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