プライバシー保護の観点でサードパーティーCookieの使用が問題になっているが、それに対処するためにGoogleは新技術を開発中だ。しかし、Amazonからも大不評で、周囲からとても“嫌がられている”という。
最近Webサイトを閲覧していると、いわゆる「Cookie法」への対処のために、Cookie使用の同意を求めるポップアップをよく目にするようになった。
Cookieを介してユーザー情報をWebサーバとやりとりすることで、ユーザーはより快適にWebサイトにアクセスできるが、個人情報の収集を目的としたサードパーティーCookieの使用がプライバシー保護の観点で問題になっている。
この問題に対処しようとGoogleはCookieの代替として新たな技術開発に乗り出したのだが、その新技術はAmazonなどのサービス事業者に非常に“嫌われている”という。その理由とは?
GoogleはCookieの代替として「FLoC」という技術を開発しており、2022年までに「Google Chrome」への実装を目指している。しかしこのFLoC、各方面から不評を買っているのだという。Webメディア「DIGIDY」は、2021年6月15日にAmazonがGoogleのFLoCに反対していると報じた。
本題に入る前にもう少しだけCookieについて説明しよう。一口にCookieと言っても、大きく「ファーストパーティーCookie」「サードパーティーCookie」に分かれる。サードパーティーCookieはファーストパーティーCookieと異なり、ドメインをまたいでユーザーの行動履歴などの各種情報を取得できる。
サードパーティーCookieによってユーザーの行動を把握することで、デジタルマーケティング企業はユーザー動向を高い精度で把握でき、ターゲティング広告をはじめとするさまざまなマーケティング活動に利用できる。検索エンジンで気になることを少し検索しただけなのに、あらゆるサイトの広告枠にそれに関する広告が表示されたという経験があるだろう。
こうしたサードパーティーCookieによる情報収集がユーザーのプライバシー侵害につながると問題になっているのだ。現在、数多くの企業がサードパーティーCookieを活用しているが、その一企業にGoogleがある。WebブラウザであるGoogle Chromeをプラットフォームとし、ユーザー情報を一手に握りつつ広告や検索へと生かしてきた。
最近多くのWebサイトがCookieの許可を求めてくるのは、あくまでファーストパーティーCookieの利用であり、自社サイトの利便性向上などの目的でユーザー情報を収集している。
Appleの「Safari」やMozillaの「Mozilla Firefox」といった主要Webブラウザは、すでにサードパーティーCookieのデフォルト無効化を進めている。その流れに沿ってGoogleも、2022年までにChromeでのサードパーティーCookieのサポート廃止を目指している。しかしGoogleのターゲティング広告にはサードパーティーCookieの仕組みが必要ということで、開発が進んでいるのが「FLoC」というわけだ。
FLoCは、ユーザーの行動履歴や閲覧履歴を基に同じ属性を持つユーザーをグループ化した「コホート」(集団)によって、表示する広告を最適化する仕組みだ。コホートは集団であり個人ではないため、サードパーティーCookieのように個人のプライバシーを脅かすものではない、という理屈のようだ。
しかしながらこのFLoCは、ユーザーの絞り込みが可能なのだという。そしてChromeならGoogleアカウントにログインして使うことも多いはずだが、それによるユーザー特定や、ターゲティングも難しくないと識者は指摘する。“Google独り勝ち”の図式が見え隠れするのだ。
こうした点から、各種Webサービス企業はFLoCを歓迎せず、Amazonのように早くもブロック宣言するサービスが出てきたというわけだ。DIGIDAYによれば、Amazon以外にも「WordPress」や「GitHub」といったサービスがFLoCをブロックすると明言したという。自社のユーザー情報をGoogleにタダで渡すようなうかつなことはしたくないというのが本音で、Amazonも同様の思いを持っているからこそ、ブロックを宣言したのだろう。
ある情報によれば、FLoCについて、アメリカ当局が独占禁止法(反トラスト法)違反で調査する動きもあるという。GoogleはFLoCの仕様変更を余儀なくされるのでは、というのがDIGIDAYの見方だ。
当然GoogleはFLoCを無効にしてChromeを使うオプションを用意しているはずだ。そうなったとき、ユーザーのWebサイトの使い勝手に影響が出る可能性もある。現在多くの人がCookieを受け入れているようにFLoCを受け入れることになるのか、それとも各種サービスが許容するようなマイルドな仕様になったFLoCが採用されるのか、程なく明確になることだろう。
上司X: Googleの「FLoC」という技術がAmazonなどから敬遠されて、さてどうするのかな? という話だよ。
ブラックピット: FLoCですか。ほとんどの人は特に疑問もなくCookieを受け入れてきたわけですから、別にいいんじゃないかなと思わなくもないんですが……。
上司X: キミも特に疑問はないと?
ブラックピット: んー、今までファーストパーティーだろうがサードパーティーだろうが、Cookieをパクパク各種サービスに食べさせていて、そこまで個人情報が脅かされていると感じたこともなかったので……。
上司X: でも検索ワード1つで広告の内容がガラッと変わると、いささか気持ち悪くはないかい?
ブラックピット: まあ、そういうこともありますけどね。買い物した後で同じジャンルの品物をレコメンドしてくるのはムカつきますね。こっちはもう買ってしまってるんだよ! というね。
上司X: それがターゲティング広告ってヤツだよ。実際に買ったことまでは把握していないがための「購入後レコメンド」っていうことなんだろうが……。確かに納得はいかない。
ブラックピット: FLoCの件は、多分にサービス提供側のデータ収集における駆け引きみたいな感じもありますけどね。みなさん独自のデータは独自で持っておきたい、やっぱりターゲティングはしたいんじゃないですかね。
上司X: 結局のところ「Google独り勝ち」という状況にさえならなければ、Cookieに代わる新たな技術も受け入れられる気もするんだけどな。個人的には、Webのいろんなサービスが快適に使えればCookieでもFLoCでもいいや、とは思うんだがな……。さてどうなることやら。
年齢:36歳(独身)
所属:某企業SE(入社6年目)
昔レーサーに憧れ、夢見ていたが断念した経歴を持つ(中学生の時にゲームセンターのレーシングゲームで全国1位を取り、なんとなく自分ならイケる気がしてしまった)。愛車は黒のスカイライン。憧れはGTR。車とF1観戦が趣味。笑いはもっぱらシュールなネタが好き。
年齢:46歳
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中学生のときに秋葉原のBit-INN(ビットイン)で見たTK-80に魅せられITの世界に入る。以来ITひと筋。もともと車が趣味だったが、ブラックピットの影響で、つい最近F1にはまる。愛車はGTR(でも中古らしい)。人懐っこく、面倒見が良い性格。
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