メディア

ITツールに疎いはずが…… コロナ対応で変化したコーセーのコラボレーション文化

コロナ禍で急なテレワーク対応に追われる中、コーセーはWeb会議ツールの定着やコラボレーション文化をどのようにして醸成したのだろうか。

» 2021年12月01日 08時00分 公開
[キーマンズネット]

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行により、企業はテレワークの対応を求められてきた。「大きな会社だがデジタル化はまだまだこれから」という化粧品メーカー大手、コーセーはどんなテレワーク化の道のりをたどったのか。Web会議ツールの導入からテレワークで働く従業員のマインドチェンジまで、コーセーの情報統括部グループマネジャー、進藤広輔氏が同社の取り組みを語った。

本稿は、シスコシステムズが2021年11月18日に開催したオンラインイベント「WebexOne Japan2021」でのセッション「コロナ後を見据えたコーセー情報統括部のチャレンジ 〜ビジネスに直接的に貢献するシステム部門へ〜」基に編集部で構成した。

コーセー 進藤広輔氏

 1946年に創業した化粧品メーカー大手、コーセー。テレワーク移行当初について進藤氏は「コーセーは大きな会社だが、デジタル化がまだまだ進んでいない。正直なところ、“ITリテラシーが高い”とは言えませんでした。情報統括部はまずツールの導入を急ぎ、インフラの整備に手を付けましたがそれだけではコロナ禍の働き方は変えられませんでした」と振り返る。

テレワークで属人的なヘルプデスク文化から脱却

 テレワークにおいて重要なのはマインドチェンジだ。従業員が家の中にいても、出社していた時と同じように仕事ができなくてはならない。進藤氏によるとヘルプデスク対応の属人化がテレワークにおいては顕著な課題だったという。

 家で仕事をしていて「システムが使えない」「ネットワークにつながらない」といったIT周りの課題が発生した時、従来のヘルプデスク業務では、コーセーは情報統括部が電話で問い合わせを受け、直接従業員に回答する形で対応していた。

 「事業部側にも『このシステムについてはAさんが詳しいからAさんに聞こう』という意識がありました。かつてのように出社して働いていればAさんがいるかどうか、何時頃に戻るかなども分かりますが、テレワークになってからは在席しているのかどうかも分かりません。頼りたい人を待っている間にシステムの問題が解決できず、事業部門側の仕事が止まってしまうという問題も起きかねません」(進藤氏)。

 そこで進藤氏は「問題が起きたり質問があったりする時は個人宛にメールや電話をするのではなく、グループアドレスに送るようにする」というアナウンスを全社に出した。問い合わせる側も答える側も属人的だった問い合わせ文化では、チームのコラボレーションに歯止めがかかってしまう。オープンに見えるようにすることで“対応できる誰かが”拾ってくれるような文化へとシフトしたという。

従業員たちの主体的なツール利用が定着

 テレワークに切り替わったことで文化的な課題が浮き彫りになった一方で、ツール面での課題は起きなかったのだろうか。進藤氏によると、Web会議ツールの導入直後はVPNによる帯域の圧迫やPCスペックによる音声、映像の乱れといったトラブルに見舞われたという。

 コロナ禍でテレワーク化の必要に迫られたことで、これまでツール利用に疎いと思っていた従業員たちのITリテラシーが知らぬ間に向上したという“良い変化”も起きた。Web会議ツールとして「Cisco Webex」の利用を続けているうちに事業部門の中でナレッジがまとまってくるようになったという。従業員が上げてきたナレッジとベンダーによるレクチャーを共有することで、主体的なツール利用が定着した。

 さらに、Web会議のオンライン化に成功すると「これまで人を集めてやっていたイベントをウェビナー形式で実施したい」という要望が事業部門側から上がってきたという。

 「Webexだけでなくコーセーでは多数のツールを導入し、従業員向けの説明会を開催しました。すると『すぐに使いたい』『こういう使い方もしたい』といった声がたくさん上がってきました。ツールの利活用には慣れていなくても、長年のビジネスの勘でツール利用のアイデアが生まれる環境になりました。今後も、情報統括部は情報システムを預かる立場としてビジネスをリアルタイムで支えていきたいと考えます」(進藤氏)。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

会員登録(無料)

製品カタログや技術資料、導入事例など、IT導入の課題解決に役立つ資料を簡単に入手できます。