一度退職した社員の出戻り(ブーメラン)に関する研究によると、再雇用しても良い場合と悪い場合があるという。その判断軸はどこにあるのか。
退職した従業員が再び求人に応募してくると、自ら去って行ったパートナーが復縁を懇願してきたかのような感覚を覚えるだろう。
テキサス・クリスチャン大学のアビー・シップ氏(ニーリービジネススクール 経営学教授)は「元従業員の出戻りを検討する価値はあるか、それとも水に流した過去のことと捉えるべきかは状況次第だ」と語る。
シップ氏がこうした「ブーメラン社員(出戻り社員)」の存在に初めて気が付いたのは、2005年にコンサルティング会社でプロジェクトに携わっていた時だった。当時、このテーマに関する学術的な文献は何も見つからなかったが、彼女はブーメラン社員に興味をそそられ、これを将来の研究テーマにすることにした。
彼女と研究チームはブーメラン社員に関する研究成果を「Personnel Psychology」(注1)に発表した。彼らはブーメラン社員が、辞めて戻ってこない「アルムナイ(退職者)」とは幾つかの点で異なることを発見した。
まず、ブーメラン社員は早期に会社を辞める傾向がある。これとは対照的に、アルムナイは会社に長く勤務した後に退職する。アルムナイは「多くの経験を積み重ねた上で、『これは自分には合わない』『この職場は合わない』ことに気付く。そして、彼らはそれを解決することができなかった」とシップ氏は語る。
次に、ブーメラン社員は家族の突然の死や深刻な病気、より良いオファーを受けた時に転職を考え、退職する傾向がある。
退職を考える要因は、「押し出される」(風土や職場への不満によるもの)か、「引き出される」(ライフイベントや競合他社からのオファーによるもの)かの違いだ。つまり、ブーメラン社員が前職に戻るのはそもそも職場に問題がなかったためだ。
ブーメラン社員の雇用には幾つかのメリットがある。「ブーメラン社員は、前職のソーシャルネットワーキングや知識、物事の進め方を知っているだけでなく、他社で勤務してスキルセットを広げた。長年経験を積み、学んできたことを前の勤務先で生かすことができる」とシップ氏は述べる。
もちろん、これらのメリットは職場を離れていた期間によって異なる。6カ月間休暇を取って戻ってきた社員は、5年間離れていて全く新しいチームと技術体制に戻ってきた社員よりも、はるかに職場への適応が早い。
企業がブーメラン社員の再雇用を検討する場合、まず考慮すべきことが1つある。「過去の雇用期間で立派な業績を上げたかどうかが非常に重要だ」とシップ氏は述べる。
シップ氏は同分野の他の研究者(注2)の言葉を引用して次のように述べる。「最初は不安定だったけれども、離れている間に学んで成長したと考えがちだが、そうではない。過去の実績こそが将来の実績を予測する最良の材料だ」。
人手不足で採用担当者が人材確保に躍起になっている今、実績のあるブーメラン候補者を排除する理由はない。むしろ、彼らを選ぶ方が良い選択なのかもしれない。
「組織への忠誠心や業績が心配なら、面接を止めることをお勧めする。しかし、長期的な不満以外の理由で退職した優秀な人材とは常に連絡を取り合っておくべきだ」とシップ氏はコメントする。
シップ氏は、ブーメラン社員の業績についてはもっと幅広い研究が必要だという。ブーメラン社員の業績が以前よりも良くなっていることを示唆するものもあれば、悪くなっていることを示唆するものもあり、報告される結果はさまざまだ。また、職種や業種によって、ブーメラン社員の業績が良い場合と悪い場合があるなど、状況に依存する傾向がある。
ブーメラン社員について広く研究されるようになれば、人事担当者はこのタイプの労働者と期待できることをより多く学ぶことができるだろう。シップ氏は「ブーメラン社員についてはまだ学ぶことが多い」と語る。
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