コロナ禍の到来で、世界中の従業員が就業環境に関するニーズを見直すことになった。しかし、日本の人事領域にはコロナ禍前から課題が山積みだという。日本オラクルに課題の解決策と今後の取り組みを聞いた。
コロナ禍の到来で世界中の従業員が就業環境に関するニーズを見直した。その結果従業員は安定した給与だけでは不十分に感じるようになり、ワークライフ・バランスを推進し、キャリア・アップの機会があり、従業員の意欲を高め、自身の意見を聞き入れてくれる組織で働きたいと考えるようになった。
こうした要望をできる範囲で実現するため、マネジャーと従業員はお互いの要望を正しく理解する必要がある。しかし、マネジャーはさまざまな職場の課題に追われ、チームのニーズを把握してメンバーを支援することができていない状況だ。
日本オラクルは組織における従業員エクスペリエンス向上の取り組みを支援している。同社の新井哲也氏に、日本の人事領域の課題や解決策、今後の取り組みを聞いた。
まず、コロナ禍以前から日本の人事領域において存在する課題を聞いた。
「歴史的に、日本の人事領域におけるシステム投資は、賃金計算などの給与や労務管理に比重がかかる構造でした。しかしながら昨今は、ESG(環境・社会・ガバナンス)経営などの流れもあり『人的資本経営』が注目され始めています」(新井氏)
人的資本経営とは、人材を「資本」と捉え投資の対象とすることで企業価値を高めていく経営手法である。人的資本経営を実現する上で人事が取り組む課題として、「人的資本開示」がある。これは、従業員が企業に貢献すると同時に、企業側が従業員の幸福についても定義して施策を実践することだ。「いわゆる従業員エクスペリエンス向上と連動して実施されることが多い」と新井氏は述べる。
しかし、人的資本開示をしようとしても、歴史的に日本企業はそもそも人材の分析に対する経営層の優先度が低く、システム設計や投資が不十分なケースが多いという。結果として、表計算ソフトやファイルサーバを複数管理し、データが散在することになる。
人事担当者は、散在するデータを手作業で集計してレポートを作成するという膨大な業務負荷がかかった結果、人的ミスや一貫性が確保されないデータ、迅速な報告が難しいといった課題が生まれた。
Oracleは、10年以上前から給与計算など事務手続きをサポートするだけでなく、人材の能力を引き出し、企業価値を引上げるソリューションを設計・開発してきた。「Oracle Cloud HCM」を含む「Oracle Cloud Applications」は、人事を含め財務管理、サプライチェーンなどあらゆる企業活動のデータを完全に統合したデータとして一元的に管理する目的で設計されている。
「統合管理されたシステムにより、各種人事情報の集計スピードの速さや品質が確保され、複数の切り口を掛け合わせた分析が容易になります。経営層から要求される各種数値を早く割り出すことができ、迅速な経営判断に貢献できます」(新井氏)
同じような仕組みの人事システムであっても、実際には買収した製品をインタフェースで連携させているケースが多いという。それでは、それぞれのソリューションから一元的に情報を収集することが困難で、データの整形に人が介在せざるを得ない。「オラクルが提供している一元的にデータを管理できる仕組みは、人事の業務効率を向上させ、より戦略的な人事業務に集中できるよう支援できます」(新井氏)。
日本オラクルは2022年10月4日、「Oracle Fusion Cloud Human Capital Management」の最新のアップデートを発表した。チーム・メンバーのスキルを管理できるポータルやパフォーマンス評価機能、従業員の意見を集めるソリューションなどを追加した。
「従業員エクスペリエンスの向上に役立つ2つのソリューションのアップデートを発表しました。1つ目は『Oracle ME』で、従業員の心理的な安全を確保したり、働きやすさの向上を支援したりするものです。2つ目は『Oracle Dynamic Skills』で、機械学習を用いて上司が気付かない従業員の才能を割り出します。例えば、市場の人材募集要項から同一ポジションのプロフェッショナルに必要なスキルを洗い出し、スキルの習得を推奨できます」(新井氏)
Oracle Cloud HCMは、四半期ごとに機能がアップデートされるクラウドサービスだ。今回の発表は、従業員エクスペリエンスの向上を目的とするマネジャー向けに拡張したものである。
「従業員エクスペリエンス領域を支援するOracle MEの各機能(従業員への各種ガイドサービス、チャットbotによる社内問合せや、パルスサーベイなど)については、企業側のメリットや効果を、具体的に説明していく予定です。より定着させ、より効果を生んでいくためには運用設計が極めて重要であることから、オラクルだけではなく、コンサルティング会社など当社のパートナー様と協業し、日本企業の求める人的資本についてさらに効果的な提案をしていきたいと考えています」(新井氏)
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