キーマンズネット会員654人を対象に、「音声コミュニケーション」をテーマに調査を実施した。読者からは「スマホ利用時、音質が悪く聞き取れない場合がある」「電話帳登録がないので番号だけではどこからの着信なのか分かりにくい」などの課題が寄せられた。
キーマンズネット編集部では2023年に注目すべきトピックスとして「セキュリティ」「SaaS」「電帳法/インボイス」「Windows 11」「社内ヘルプデスク」「音声コミュニケーション」「デジタルスキル」の7つのトピックスを抽出し、読者調査を実施した(実施期間:2022年11月11日〜12月12日、有効回答数654件)。企業における2023年のIT投資意向と併せて調査結果を全8回でお届けする。
第6回となる本稿では「音声コミュニケーション」の調査結果を報告する。働き方とともにコミュニケーションの取り方も変わり、「電話」の役割が変わりつつある。固定電話(ビジネスフォン)から音声コミュニケーションが可能なアプリケーションへと変化している。その実態を探った。
音声コミュニケーションの在り方が変わろうとしている理由として、働き方の変化が考えられる。まず、現状の就労形態について尋ねた。全体では「恒常的なテレワーク」が23.7%、「テレワークとオフィスワークのハイブリッド型へ移行」「テレワークを終了し、オフィスワークへ移行」を合わせると45.3%となり、7割弱がテレワークを取り入れた働き方を経験したと回答した(図1)。「恒常的にテレワーク」とした割合は従業員規模5001人以上(37.8%)が最も高く、その次が10人以下(29.2%)であった。なお、東京都が実施した調査「テレワーク実施率調査結果をお知らせします! 10月の調査結果」(2022年11月16日発表)によれば、都内の従業員数30人以上で週5回以上テレワークを実施している企業は21.8%であり、キーマンズネットの調査結果と符合する。
恒常的にテレワークとした割合が23.7%あるということは、オフィスと同じように音声コミュニケーションを必要とする組織が、同程度存在することが推測できる。
アンケート調査によれば音声コミュニケーション基盤のうち、最も多かったのが従来型のPBX(構内交換機)であり、31.3%を占めていた(図2)。クラウドPBXの割合は11.8%だった。従業員規模別では、101〜500人と501人〜1000人でクラウドPBXの割合が約15%だった。
クラウドPBXを使っていない組織は、後述するようにそもそも組織外部との音声コミュニケーションを必要としていないか、携帯電話やビデオ会議サービスなどを「転用」している可能性がある。
固定電話の台数を聞いたところ、従業員数が多いほど、1人1台ではなくなっている現状が分かった。5001人以上の組織では5000台以上(1人1台に相当する)が32.4%だが、10台以上100台未満が4.1%、10台未満が4.7%であった。つまり5001人以上の組織のうち、約1割はほぼ固定電話を廃止しており、新しい音声コミュニケーション手段を取り入れている可能性がある。この傾向は1001〜5000人規模の組織では17.2%とさらに高い。
クラウドPBXを「導入済み」「導入予定」とした回答者に、利用しているまたは利用を予定している製品について、17製品の中から選択式で尋ねた。その結果をまとめたのが図3だ。
最も多かったのは「Teams Phone System」(21.4%)、次に「Zoom Phone」(16.7%)だった。
Teams Phone Systemは組織の規模が大きいほど回答割合は高く、「5001人以上」(34.4%)、「1001〜5000人」(28.0%)だった。逆に「10人以下」(0.0%)、「11〜100人」(4.2%)と小規模な組織に弱い。
Zoom Phoneは「10人以下」(15.4%)、「10〜100人」(29.2%)であり小規模な組織に強い。「5001人以上」(19.7%)にも受け入れられているが、中規模組織に弱い傾向があった。
3位以下は「ひかりクラウドPBX」(12.1%)、「Arcstar Smart PBX」(10.7%)、「Webex Calling」(7.4%)と続いた。ひかりクラウドPBXは11〜100人の規模ではZoom Phoneと同率首位、Arcstar Smart PBXは101〜500人で23.8%と首位だった。
クラウドPBXの導入予定を聞いたところ、「導入を検討中(時期未定)」「導入を検討中(1年以内)「導入を決定」を合わせると、現在は未導入だが導入を予定、検討中とした割合は19.5%となり、導入済み(13.5%)よりも多い(図4)。1年以内の導入に限っても5.4%に達した。
小さな組織ほど導入予定が少なく、10人以下では80.0%に達した。「1001〜5000人」では59.0%、「5000人以上」では58.8%となり、小規模組織と比較すると低い数値を示した。
比較的導入コストが低いビデオ会議サービスや携帯電話ではなく、クラウドPBXを導入するには相応の理由がある。
図4で「導入予定はない」と答えた読者以外に対して、クラウドPBXの要件を聞いた(複数回答可能)。
子項目の中でも、次の5つに回答が集まった(図5)。「社外電話をPCで取りたい」と「PC間での内線」はどちらもほぼ半数に当たる48.4%だった。「電話業務をテレワーク対応したい」(34.0%)、「代表電話をPCで着信、発信したい」(31.2%)、「受電業務の効率化」(30.7%)が続いた。いずれもクラウドPBXでなければ実現が難しい要件だ。
図4で導入済みと回答した読者に満足度を聞いたところ、最も高い割合を示したのが「おおむね満足している」(54.5%)だったが、一部に不満(21.6%)と不満が多い(3.4%)という回答もあった。
自由記入回答によれば、満足した理由として、固定電話やスマートフォンではできない音声コミュニケーションを評価する意見が挙がった。
満足ではない理由を見ると、電話機固有の複雑な要件を満たさない場合がある他、音声コミュニケーション製品によっては機能が不足していたり、使い勝手が悪かったりすることが分かる。例えば「テレワーク者と出社者で着信グループを使い分けできず、フロア受付電話がテレワーク者端末でも鳴ってしまう」といった例だ。
音質についてはネットワークの品質や容量にも依存するため、満足したという回答と満足ではないという回答がどちらも多かった。
クラウドPBXに求める機能要件は組織の規模や業務形態によって異なる。最適な製品を選ぶには、音声コミュニケーション製品の仕様だけでなく、想定した利用方法における使い勝手について十分な検討や検証が必要になりそうだ。
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