AI市場を再活性化させると生成AIに期待が集まる一方で、「今は使い物にならない」との判断を下すユーザーもいる。ビジネスパーソンの率直な評価はどうだろうか。
生成AIをビジネスに適用することで生産性の向上や業務効率化が見込める一方で、解決しなければならない課題もある。ビジネスパーソンは、今の生成AIをどう評価しているのだろうか。
前編に引き続き、後編では生成AIに対する率直な評価とユーザーお勧めの活用法、そしてビジネス活用を進める上で障壁となる課題や問題点など、アンケート調査(実施期間:2023年6月23日〜7月7日、回答件数:336件)を基にユーザーの見解を紹介する。
IDC Japanが2023年4月に発表した「国内AIシステムの市場予測」によれば、生成AIの市場投入によってAIシステム市場の再成長が見込めるという。生成AIを組み込んだ製品やサービスの発表が続くが、ユーザーは現在の生成AI技術をどう評価しているのだろか。
アンケート回答者に対して「現時点で、生成AIは業務やビジネスで活用できるレベルだと思うか」と尋ねたところ、「課題はあるが活用できるレベル」の声が多く(54.2%)、「未熟であり活用できるレベルではない」とした割合は全体の1割強(12.2%)だった。「十分に活用できるレベルである」とした割合は6.0%にとどまり、おおむね活用できるレベルであるとした割合が多数を占めた(図1)。
「未熟であるが、活用できなくはない」「未熟であり、活用できるレベルではない」とした回答者に対して、「使えない」と考える理由や見解を尋ねたところ、次のような声が挙がった。
コメントの多くが「情報の正確性に欠くため、結局時短につながらない」などアウトプットの精度に関するものだ。また、意図せず著作権を侵害してしまった場合の責任の所在など、現時点では法整備が十分でないため利用にリスクがあるとの声も目立った。時短、効率化のメリットを得るには、まだクリアしなければならない問題が山積のようだ。
続いて、回答者自身がプライベートで「ChatGPT」などの生成AIサービスを利用しているかどうかを尋ねたところ、「利用している」が過半数で52.1%、「利用していない」は47.9%だった。「利用している」がわずかに多いものの、ほぼ回答を二分する結果となった(図2)。
プライベートで生成AIを「利用している」とした回答者に対して、おすすめの活用法や便利な使い方についてフリーコメント形式で尋ねたところ、思わず微笑んでしまうような回答や、なるほどと感心してしまう回答が寄せられた。
対して、生成AIをプライベートで「利用していない」とした回答者にその理由を尋ねたところ、「インターネットで調べた方が早い」「自分で調べた方が有意な情報が取れる」などの声が挙がった。
情報収集を目的とする場合では「間違った内容をあたかも真実であるかのように回答する」など誤情報が含まれることもあるため、独自で調査した方が納得のいく回答が得られると考える人も少なくないようだ。また「どう使っていいか分からない」「活用方法が分からない」などの声もあったが、これは、今後、サービスの利用が浸透する中で解消されると考えられる。
冒頭に記した通り、生成AIはAIシステム市場に再成長をもたらし得るなど期待が膨らむ一方で、情報の精度やセキュリティや著作権など課題山積の状況だ。
最後に、アンケート回答者に対して生成AIを業務やビジネスで利用するに当たって障壁となりそうな問題や、解決すべき課題について意見を求めたところ、3つの課題に回答が集中した。
1つ目は「法的リスク」の問題だ。アウトプットに混ざった誤情報や法的リスクに適切に対応するためには、チェック体制の構築や利用者のリテラシー教育が必須だ。
2つ目は「セキュリティリスク」だ。リスクを考慮し過ぎるあまり、活用範囲が限定的になってしまうなどが課題として挙がった。
3つ目は「誤情報」に関する課題だ。情報の収集元が明確でないため、情報が正しいか誤っているかを知るすべがないなどの声が集まった。
前編、後編を通して、生成AIの利用状況と課題、業務活用の是非など、アンケート調査結果から得たユーザーの声を紹介した。生成AIの登場によって第4次AIブームの到来とも言われているが、実用的な技術だと認知されるにはまだ時間が必要だ。
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