テレワークの実施は従業員の生産性や企業の業績にどのような影響を与えるのだろうか。米国会計監査院の報告書で調査結果が明らかになった。
2023年8月11日に発表された米国会計検査院(GAO)の報告書によると、週の大半をテレワークで勤務した従業員の割合は2019年の5.7%から2021年には17.9%に増加し、勤務時間のほぼ全てがテレワークだった従業員の割合は2019年の約24%から2021年には38%に増加した(注1)。
GAOは複数の研究をレビューし、テレワークが企業の生産性と業績に与える影響やテレワークをしている従業員の特徴について同報告書にまとめた。
同機関は「私たちの研究によると、多くの場合、特定の業界においてテレワークは従業員の生産性と企業の業績にプラスの影響を与えることが分かった。例えば、中国のコールセンターを調査したところ、テレワークによって生産性が13%向上したことが分かった。また、一部の研究には、企業の業績や経済に対するパンデミックの悪影響をテレワークが緩和したというものもある。しかし、テレワークの長期的な影響を推定するのは難しい。なぜならば、一部の経済効果は時間の経過と共にしか表れない可能性があるためだ」と述べた(注2)。
GAOは「2010〜2021年までのテレワークの動向、2019〜2021年までのテレワークに関する業界別および従業員の特性別の伸びを説明するために、American Community SurveyとAmerican Time Use Surveyを参照した」と述べた。また、同機関は従業員の生産性や企業の業績とテレワークの関係を調査するために44の研究をレビューしている。
「多くの場合、テレワークは生産性にプラスの影響を与えるようだが、一部の仕事はアウトプットが測定できないため、生産性に対する影響は不明である」と同報告書の著者は述べている。また、労働力の減少率や連携に関する潜在的な課題、オフィススペースの縮小によるコスト削減など、まだ完全に測定できない要素があるためテレワークの長期的な影響の推定は難しい。
さらに、テレワークの増加は、高い収入と高い学歴を有する従業員や特定の職種に集中していることも分かった。2021年には管理職の約28%が主にテレワークをしていたのに対して、サービス業の従業員の場合は7.5%がテレワークをしていた。
GAOによると、同報告書は米国におけるテレワークの変化とそれが生産性と企業の業績に与える影響を調査するシリーズの第1弾だ。今後の報告書ではテレワークに影響を与える公共政策やテレワークの長期的な影響、その他の問題に焦点を当てる予定だ。
ほとんどの場合、採用マネジャーはパンデミックによって促進されたテレワークが今後も続くと述べており(注3)、オフィスへの復帰に関する議論が続いている。「人材の獲得と定着は生産性の向上や経費削減と共に、テレワークを維持する主要な理由の一つだ」と、ある人事リーダーは述べる。
最近の報告書によると、オフィス勤務を義務付けることは従業員の定着率を低下させる恐れがあるという(注4)。オフィス勤務を義務付ける企業の従業員は「自身の継続意欲と生産性が低下した」と述べている。一方でテレワーカーは「生産性が向上した」と回答している。
別の調査によると、テレワークが最も成功するのは柔軟で協力的な環境を整えている企業のようだ(注5)。従業員の利益を優先し、従業員の独立性を高め、連携を促進し、柔軟な労働方針を持つ企業でテレワークの文化が発展した。
出典:Remote work improved business performance during pandemic, GAO says(HR Dive)
注1:TELEWORK Growth Supported Economic Activity during the Pandemic,but Future Impacts are Uncertain(GAO)
注2:Telework:Growth Supported Economic Activity During the Pandemic, but Future Impacts Are Uncertain(GAO)
注3:Hiring managers say pandemic-driven remote work is here to stay(HR Dive)
注4:Mandating on-site work could hurt employee retention(HR Dive)
注5:Flexible, supportive company culture makes remote work more successful(HR Dive)
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