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買収を続けるERPベンダー、中小の製造業と流通業の業務をどう変える

Epicorは、PIM(商品情報管理)ベンダーを買収し、製造業や流通業において、顧客が何をどのような理由で購入しているのかを可視化できるようにした。

» 2024年07月23日 10時00分 公開
[Jim O'DonnellTechTarget]

 製造業や流通業の企業を中心にERPを提供しているEpicorは、製品情報管理ソフトウェアのプロバイダーである「Kyklo」の買収によってERPの機能を拡張した。

 中小規模の組織、製造分野の複雑な要件の扱いや、小売りと卸売りに強みがあるEpicorのERPはどう進化したのか。

Kykloの買収に関するEpicorの戦略

 KykloのPIM(商品情報管理)アプリケーションによって、製造業者や流通業者はeコマースサイトやカタログ、マーケットプレースなどのさまざまなチャネルでコンテンツを配信したり情報共有したりできるようになる。

 Epicorのジョン・カリコ氏(製品管理担当 バイスプレジデント)によると、「製造業者はKykloを使用することで、B2Bコマースアプリケーションを介して製品ラインに関するデータを販売業者に配信できる。これはEpicorにとって魅力的なセールスポイントになる」という。

 これは製造業者による製品のマーケティングに役立つ。また、Kykloには何がどのような理由で売れているのかを可視化するビジネスインテリジェンス(BI)機能も備わっている。

 カリコ氏は、次のように述べた。

 「Kykloのコマースサイトで商品を販売すると、その商品を販売している全ての流通業者は、その商品や商品のアップデートをプッシュでき、売れ行きも確認できる。情報共有することで、流通業者全体でそのコンテンツを販売できる」

 Epicorは2024年5月、BIやAI関連の機能をERPに統合したデータプラットフォームである「Epicor Grow」を発表した。これは、製品の製造や流通、販売において、顧客がより多くの情報に基づいて意思決定できるように設計されている。

 Epicor Growは、Epicorが2022年に買収したローコードおよびノーコードのBI開発環境である「Grow」をはじめとして、Epicorが最近買収した企業の製品を中心に構築されている。また、2023年に買収したラストワンマイルの流通アプリケーションである「Elite Extra」や、2024年5月に買収したAIベースの在庫計画および最適化アプリケーションである「Smart Software」の技術も含まれている。

 カリコ氏は「Epicor Growは、顧客が自社のエコシステムからデータを取り出し、ERPや関連するアプリケーションを含むデータを活用して、スマート予測や在庫最適化など特定のユースケースのためのパイプラインの構築を可能にする」

 また、カリコ氏によると、Kykloはパイプラインのアプリケーションに製品情報を追加するという。Kykloのソフトウェアは、異なるアプリケーション間でもデータが正確で、正規化され、クリーンであることを保証する。

 今回の買収に関する取引条件は明らかにされていない。

 Epicorは、バンコクとニューヨークに拠点を置くKykloを完全所有し、業務はEpicorに統合される予定だ。カリコ氏によると、Kykloのアプリケーションは、製造業者向けのPIMを含む「Direct Commerce」や、コンテンツ管理アプリケーション向けの「Managed PIM」を含み、単独で購入可能なオプションとして提供されるという。また、EpicorはKykloの製品開発に投資する予定だ。

PIMはカタログのマスターデータを扱う

 調査企業であるConstellation Researchのレイ・ワン氏(アナリスト)は、次のように述べた。

 「Epicorの強みは、製造や流通、商取引分野における中核的なサービスと調和の取れた買収をしていることだ」

 また、ワン氏は「PIMに関するKykloとの連携によって顧客は商取引の鍵となる商品カタログを簡単に構築できるようになる。優れたPIMシステムは商品のマスターデータであり、これはEpicorのCPQ(仕様選定、価格算出、見積作成)と同期して、コンテンツや在庫、価格を処理する機能を持っている」とも述べている。

 Technology Evaluation Centersの業界アナリストであるプレドラグ・ヤコブレビッチ氏によると、Kykloのアプリケーションを自社のプラットフォームに統合することは、Epicorにとって意味のあることだという。特に、最近買収したSmart SoftwareとElite Extraと組み合わせることで、その効果が発揮されるとのことだ。

 これによってEpicorとERPは、自動車部品カタログや商取引、流通のビジネスを営む企業にとって大きな存在になるはずだ。PIM機能はeコマースやカタログにとって重要なものだ」(ヤコブレビッチ氏)

 また、ヤコブレビッチ氏は、次のようにも述べた。

 「マーケティングと商取引向けのPIMは、エンジニアリングチームにとっての製品ライフサイクル管理と製品データ管理と同じくらい重要なものだ。SalesforceのクラウドPLMである『Propel』は、PLMとPIMを連携させて、設計エンジニアリングチームと営業チームが同じページで作業できるようにする長年の取り組みを進めている」

 「Kykloの新機能だけでは、EpicorはトップのERPベンダーと競争することはできないが、自動車部品小売業者などの中堅企業を含む中核顧客基盤に対して良好な機能を確保することは、市場におけるEpicorの良い立ち位置となる」(ヤコブレビッチ氏)

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