とある教育機関は、学生向けに学内ネットワークを自由に開放しており、キャンパス内のどこからでも自由にインターネットにアクセスできるようにしている。授業での個人ノートPCの使用を許可するなどBYODにも積極的だ。利便性の高い環境を整えられている同大学だが、この環境が原因で学生の間では大混乱が起きているという。そのワケとは。
子供の習い事で自転車にて送迎をしている際にスマートフォンを落としてしまったらしい。ポケットの浅い短パンを履いていたせいだろうか、さっきまで収まっていたはずのスマートフォンが見当たらない。
自分がたどった軌跡をくまなく探したものの、いとしのiPhoneは姿を見せてくれない。
慌てて踵を返して自宅に戻り、妻に電話をかけて欲しいとお願いしたところ、電話が鳴っている気配がある。であれば、「iCloud」にログインし、「デバイスを探す」の機能で見つかるはずだが、「位置情報が見つかりません オフライン」という表示が出た。
うそーん。さっき落としたばかりなのに。すごく焦る……。
とある教育機関の学内ネットワークについて聞く機会があった。その機関は、学生向けに学内ネットワークを自由に開放しており、キャンパス内のどこからでも自由にインターネットにアクセスできるようにしている。個人所有のスマートフォンはもちろん、授業での個人ノートPCの使用を許可するなどBYODにも積極的だ。学生のことを考えた利便性の高い環境を整えられている同大学だが、この環境が原因で学生の間では大混乱が起きているという。
同大学では、入学ガイダンス時に、ネットワークにアクセスするための設定をレクチャーするそうだ。ネットワークアクセス時の認証に「IEEE802.1X」におけるTLS認証を採用していて、証明書のデバイス適用が必要で、ガイダンス時にその場で設定してもらうようにしている。しかし、スマートフォンには慣れていても、PCに触れたことのない学生が多くいるようで、非常に苦労しているようだ。一度もPCに触ったことのない学生は、意外と少なくないことを改めて知った。
しかも、初めてノートPCを購入して学内に持ち込む場合は、そもそもWindowsの設定をする必要があり、その際にもネットワーク認証が必要になる。環境が整っていない状況ではTSL認証に必要な証明書を導入できないため、やむなく外部に公開しているゲストWi-Fiを経由してアクセスさせることになるのだが、そのゲストWi-Fi設定のまま授業に入ってしまう学生が少なくないらしい。すると、IEEE802.1Xでの認証が完了できておらず、授業が始まって先生が用意した学内のファイルにアクセスさせようとすると、接続できない学生が続出することになる。授業が進められず、貴重な時間を無駄にしてしまうという。
学生にとってみれば、認証の仕組みやその重要性などを学ぶ良い機会のはずだが、ITに詳しくない先生の授業でそれが起こると、現場で対処できずに大混乱を招くことになる。貸与したPCやスマートフォンを使わせる企業であれば、キッティング段階でその辺りの設定は専門家が実施しているはずだが、BYODを前提とした教育機関の場合、そうはいかないのだろう。
しかも、Windows OSを前提にデバイスを持ち込んでもらう想定が、MacやChromebookを持ち込む人も多く、事前に用意したマニュアルが全く役に立たない事態になることもある。
そんなカオスな現場には、当事者として関わりたくないものだ。
改めて妻に電話をかけてもらったところ、すでに電源が入っていない状態のようで、「電源が入っていないため、かかりません」とアナウンスがあったという。
拾った人が電源を切ってしまったのだろうか。仕方がないので、最寄りの警察署に赴いて、スマートフォンを紛失したことを告げると、紛失届の提出がかないと、届いているかどうかの情報すら教えられないと拒否される。
まじすか……。
やむなく、スマートフォンの番号や機種、外側の色、後日届けられたときの連絡先など事細かに記載して書類を提出したところ、「実はさっき、スマートフォンの落とし物が届いていたんだよね」とニヤリとほほえむ担当の警察官。
落とした私が悪いし、手続きが必要なのも分かるけど、書類書くのに結構時間がかかり、その間ずっと不安だったんですけど! 書類書く前に教えてくれないか!?
しかも、どうやら警察署では、リチウムイオン電池が発火する恐れがあるため、届けられた段階で電源を切ってしまう運用らしい。そうか、iCloudで見つからないわけだ。
スマートフォンが無事に届いたことを喜んだものの、つながることの重要性を改めて認識した、とある土曜日の夕方だった。
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