ビデオ会議をはじめとするコラボレーションデバイスは、従業員の生産性やエンゲージメントに直結する。企業ではどのようなデバイスをどのように使うべきか。
企業においては、デスクトップデバイスから個人用ウェアラブルデバイス、会議室システムまで、従業員は一日中コラボレーションデバイスを使用している。長時間使うものだからこそ、それらのデバイスは従業員の生産性やエンゲージメントに直結する。特にビデオ会議は、ハイブリッドワークおよび社内と社外の関係者間のコラボレーションに不可欠であり、ビデオ用デバイスの重要性は高い。
企業ではどのようなデバイスをどのように使うべきか。
ポジティブな従業員体験を創出するために重要なのは、共同作業をサポートするためのデバイスだ。
Metrigyの従業員体験に関する調査「Employee Experience & Workplace Engagement: 2022-23」では、大半の企業は、従業員体験を向上させる戦略の中で、Webカメラやデスクトップビデオデバイスなどのビデオ会議用デバイスが重要だと認識していた。また、プロ仕様のヘッドセットやイヤフォン、スピーカーフォン、デスクホンといった従来型のデバイスもリストに挙げられていた。
ここからは、従業員体験を向上させるコラボレーションデバイスの活用方法を探っていこう。
アプリケーションと同様に、ビデオ会議用デバイスには、従業員の行動を理解するために使える優れたデータが蓄積されている。Metrigyの調査によると、すでに約41%の企業が従業員のエンゲージメントを判断するためにコラボレーションデバイスのデータを使用しているか、使用する予定であり、43%はその可能性を評価している。企業はコラボレーションデバイスから、1時間ごとや1日ごとのミーティングの回数、ミーティングの平均出席者数、ミーティングの平均時間や合計時間などの指標を収集できる。
コラボレーションデバイスのデータを最大限に活用するために、IT部門は他のビジネスリーダーや人事部門と連携して、この新しいデータソースを「従業員の声に関する調査」などの従来の人事向けデータソースと統合し、従業員のエンゲージメントと体験に関する全体像を把握する必要がある。
例えば、会議に費やす時間と重要なビジネス指標を関連付けることで洞察を得られる。1日の会議時間が増加するにつれて、チームの生産性が低下するケースがある。仮に生産性向上が重要な指標であるなら、これは問題となるだろう。一方、平均的な会議時間の短縮は、エンゲージメントの低下を示している可能性がありこれも望ましくない。こうした関係を把握することで、意思決定の指針となる。
データを収集するだけでなく、それを基に行動を起こすことが重要だ。Metrigyの調査では、多くの企業がデータの活用を途中で止めていることが一貫して示されている。データを収集するだけ、または収集したデータを分析するだけの企業が多く、収集および分析をした後の行動にまで至る企業は少数だ。例えば、生産性の低下に対処するためには、会議の時間に制限を設けたり、会議の間に休憩を義務付けたり、会議を禁止する日を制定したりする方法が考えられる。
部門ごとに使用しているデバイスや手順が異なる場合、会議室に入り、その部屋のビデオ会議システムを立ち上げる方法を把握するのが困難な場合がある。IT部門は、主要な会議アプリにワンクリックで参加できるビデオ会議システムを導入することで、この負担を軽減し、従業員体験を向上させられる。
ワンクリックで参加できるビデオ会議システムの例としては、「Cisco Webex Rooms」や「Google Meet hardware kit」「Microsoft Teams Rooms」「Zoom Rooms」などがある。Metrigyが440社を対象に行ったグローバル調査「Workplace Collaboration: 2023-24」では、コスト削減や収益増加、生産性向上に最も成功している企業の68%は、ワンクリックで参加できるシステムをすでに使用していることが分かっている。
従来の会議室の場合、前方にビデオ会議システムが設置されているが、これでは在宅の参加者が会議室にいる同僚の様子を適切に把握できない。テレワーカーは互いの姿を適切に確認できる一方で、会議室にいる参加者を確認できるのは、それらの人物がカメラの方を向いていたり、特定の場所に座っていたりする場合に限られる。これにより会話が分断され、会議体験への不満が生じる可能性がある。企業は、部屋の複数の場所にカメラを配置したり、部屋の中央にカメラを設置したり、「Logitech Sight」のように前方と中央の両方にカメラを配置するシステムを使用して、より広い範囲で会議室をカバーし、公平性を確保する必要がある。
同様に、会議室にタッチスクリーンを導入することで、参加者がどこにいてもコンテンツやアイデアの共有が可能になり、参加者間の公平性を向上させられる。Metrigyの職場コラボレーション調査は、このようなコラボレーション技術の使用は2023年に約25%増加すると予測した。さらに、会議室ですでにタッチスクリーンを使用している企業は、2022年の段階で47.8%の会議室に導入していたが、2023年にはその割合が64.4%に高まるとした。
一部の統合コミュニケーションデバイス管理ソフトウェアには、ユーザーがウェルネスプロンプトを設定する機能がある。例えば、Poly Lens Appでは、ユーザーが画面を長時間見続けた場合に、目の休憩、立ち上がって体を動かす、水を飲むといったリマインダーを表示できる。
デスクトップデバイスから個人用ウェアラブルデバイス、会議室システムまで、従業員は一日中コラボレーションデバイスを使用している。従業員がこれらのデバイスをどのように使っているか、またどのデバイスが仕事の効率を高めるのかを理解することは、エンゲージメントの高い労働力を生み出し、ポジティブな従業員体験を創出しようとする企業にとっての優先事項であるべきだ。
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