松尾研究所がAI研究開発の新会社を設立した。「第3の知能」創出と国際的な競争力を持つ組織作りを目指す。
松尾研究所は2025年6月5日、AI研究開発企業「Third Intelligence」の設立を発表した。これまで松尾研究所が推進してきた新たなAIの研究開発をカーブアウトする形で立ち上げられ、「第3の知能」創出やグローバルでの競争を目指すという。
Third Intelligenceは、東京大学大学院工学系研究科教授の松 尾豊氏、元エウレカCEOの石橋準也氏らによって共同で設立された。代表取締役CEOには石橋氏が就任し、松尾氏はChief Scientistとして参画する。所在地は東京都文京区に置かれ、今後はAI研究者や開発者の採用を積極的に進め、グローバル基準の研究開発組織を目指す。
背景には、大規模言語モデル(LLM)をはじめとする生成AI技術の進化や、OpenAIやAnthropic、Googleなどが主導する国際的な開発競争の加速がある。現在、米中を中心に業務現場へのAI導入が進む一方、日本企業では基盤モデルの開発やそれらを活用した価値提供において、グローバル規模での存在感を示すことができていない。
松尾研究所は、年間30〜40件にのぼる共同研究や35社以上のAI関連スタートアップの輩出実績を有しており、研究と産業応用の両面で基盤を築いてきた。また、既存のAI技術の限界を乗り越える新たなアプローチの研究も進めており、Third Intelligenceではこの知見と人材ネットワークを生かした事業の創出を目指す。
Third Intelligenceでは米国や中国をはじめとするトップ企業と対抗するためのチーム編成を進めている。金融・投資領域での実績を持つ篠崎 晋一郎氏(取締役CFO)や、大規模言語モデル「Tanuki」の開発を主導した畠山 歓氏(Head of AI Development)、松尾研究所に所属していた安野貴博氏(社外取締役)、20年以上の企業投資経験を持つ塩野誠氏(監査役)など、多様な分野の専門家が集結している。
今後はグローバル基準の研究開発環境を基軸に知力の追求に加えて、思考や会話、行動、成長をするAIを生み出し、日本発のAI技術を通じて便利で豊かになる社会の実現に向けて取り組んでいくとしている。
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