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深刻なDX人材不足をどう解消? 調査で分かった対策企業の「DX人材確保、育成」3つの手法

企業がDXを推進するためには、幾つかの課題をクリアにしなければならない。その1つがDXを進めるにあたって必要な人材の確保だ。キーマンズネットの調査では人材確保に取り組む企業が実践する3つの手法が明らかになった。

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 キーマンズネット編集部では2020年に注目すべきトピックスとして「セキュリティ」「クラウド活用」「情報共有」「DX人材」「AI導入」「RPA」「働き方改革」の7つのトピックスを抽出し、読者調査を実施した(実施期間:2019年11月22日〜12月20日、有効回答数1329件)。企業における2020年のIT投資意向と併せて調査結果を全8回でお届けする。

 第1回のテーマは「DX人材」だ。

調査サマリー

  • DXを推進できている企業は全体の約2割程度
  • DX推進組織の構成は「既存組織の延長」とする企業が4割
  • DX推進企業の半数以上はDX人材が「非常に不足」と回答、特に中堅中小規模の企業で深刻
  • DX人材の確保や育成の課題、対策企業の施策は3つのパターンに分かれる

 近年、デジタルトランスフォーメーション(以下、DX)という言葉が注目を集める。

 経済産業省は、2018年12月に発表した『デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン(DX推進ガイドライン)Ver. 1.0』において、DXを「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」と定義し、日本において多くの企業がDXの必要性を認識して取り組みを進めていると述べる。

 しかし、企業がDXを推進するには幾つかの課題をクリアにしなければならない。その1つがDXを進めるに当たって必要な人材の確保だ。調査からはDX人材の育成や確保における「企業の苦労」が見えてきた。

DXを推進できている企業は全体の約2割

 まず、DXの取り組み状況について聞いた。「分からない」(27.5%)と答えた企業が最も多かったがそれをのぞくと「現在は推進していないが、興味はある」(26.6%)「現在、自社でDXを推進している」(21.1%)、「現在は推進しておらず、今後の取り組みの予定もない」(19.5%)、「現在は推進していないが、具体的な取り組みの計画がある」(5.3%)と続く結果になった。DXを推進できている企業は全体の約2割であることが分かる(図1)。DXという言葉に熱い視線が集まる今、多くの企業が取り組みを進めているかのような印象を受けがちだが、実際に具体的な施策を実施できる段階にある企業はそれほど多くないようだ。なお規模別では従業員数の多い企業ほどDXの取り組みが進む傾向にあった。


図1 DXの取り組み状況

 調査では既にDXを推進できている企業、あるいは具体的な取り組みの計画がある企業を対象に、DX推進のための組織体制の在り方や現在抱える課題、専門人材確保のための施策などを聞いた。

DX専門組織の編成より既存IT部門を中心とする組織が多い

 調査結果では「デジタル企画部などのDX専門組織が推進」と回答した企業が29.3%と約3割を占めた。「DX専門組織と他部門(情報システム部門以外)が推進」(10.5%)を含めるとDX専門組織を編成して取り組む企業は39.8%にのぼる。

 一方「情報システム部門が推進」が22.2%、「情報システム部門と他部門(DX専門組織以外)が推進」が17.9%と、情報システム部門を中心とした体制で取り組むと回答した企業は40.1%と、僅差ではあるがDX専門組織を編成する体制を上回る結果となった。

 この他、情報システム部門でもDX専門組織でもない部門が担当する(「他部門(情報システム部門、DX専門組織以外)が推進」)とした回答が8.3%、情報システム部門とDX専門組織が共同で推進するとした回答(「情報システム部門とDX専門組織が推進」)は7.7%だった(図2)。

 この結果から、DX専門人員による専門チームを編成できないまま、既存の組織の延長としてDXに取り組む企業が少なからず存在することが分かる。


図2 DX推進のための組織体制

5割以上の企業でDXリーダーも問題発見スキルもデータサイエンティストも「足りない!」の惨状

 DXではITスキルだけでなくビジネス開発やデザインなど多様なスキルを持つ人材でプロジェクトチームを編成する手法が注億を集める。だが、一般的な日本の企業において果たして必要な人材を確保できているのだろうか。

 調査では、「自社でDXを推進している」「現在は推進していないが、具体的な取り組みの計画がある」「現在は推進していないが、興味はあるを選択した」とした回答者を対象に、以下の人材についてそれぞれ不足状況を聞いた。

  • 関係者の合意形成を醸成しながら、リーダーとしてDXを主導できる人材
  • 社会課題やビジネス課題の背景を理解し、DXの企画・立案・推進などを担う人材
  • DXに関するシステムを設計、実装、構築できる人材
  • DXに関するデジタル技術に詳しく、データ解析に精通した人材

 その結果、いずれの人材についても5割以上の企業が「非常に不足している」と回答(図3)。DXの取り組みを進めている、あるいは進めたい企業であっても、必要な要員の確保に苦心している状況が見て取れる。

 企業規模別の結果では、いずれの人材についても101人〜500人の従業員を抱える企業が、最も多い割合で「非常に不足している」と答えた。

専任人員を置く余裕はないがDX推進を兼務できる超人は存在しないし、そもそもDXが理解できない

 こうした企業は、DX人材の育成や確保にあたって、どのような課題を抱えているのだろうか。

 調査では、「確保・育成の方法が分からない」(51.8%)、「予算が取れない」(44.0%)、「時間がない」(42.8%)という回答が上位に挙がった(図4)。


図4 DX人材の育成や確保における障壁

 その他、フリーコメントでは「企業規模的に専業が見込めないため、片手間となると人の確保が余計に難しい」「優先順位的に急ぐ物件がある」「(人員を育てるための)具体的な案件やプロジェクトが不足している」といった声が挙がり、DX人材の育成や確保に時間や労力を割けない状況が見て取れた。

 その他、「DX人材としての素質や素養を持つ人材の見極めや判定をする知見やノウハウがない。そもそも労働市場にDX人材という概念が乏しい」「DXの意義を誰も理解できていない」といったコメントも寄せられ、大前提として世の中では、DXの意義やその目的、DXの推進に必要な人材像が漠然としており、企業は自社の状況を踏まえた上で、それらの要素を明確にすることからはじめなければならないと考察できる。

DX人材の育成、確保の具体的な施策は……? 調査で見えた各社の「手の内」

 最後に、「今後、DX人材の育成・確保の計画があるかどうか」について聞いたところ、計画があるとした企業は14.5%に過ぎず、分からないとした回答が57.0%、計画がないとした企業は28.5%だった(図5)。


図5 DX人材の育成・確保の計画の有無

 なお、「はい(DX人材の育成・確保の計画がある)」と回答した企業に対し、フリーコメントで具体的な施策を聞くと、外部人材の採用、社内での登用、専任会社の設立という3つのパターンが見えた。

手段1「外部からDX人材を招へい」

 「外部人材の採用」については、専門知識を持つインターンや新卒の採用、DX人材の中途採用だけでなく、海外での人材確保、退職した従業員の復職などの意見が上がった。また、DXそのものをSIerに外注して人員を確保するといった方法が挙げられた。人材難を背景に「高額な報酬を支払ってでも人材を確保する」としたコメントも見られた。

手段2「社内でDX人材を登用、配置転換と教育を図る」

 「社内での登用」に関しては「親会社の案件などの具体的なプロジェクトに、自社の従業員を選抜して投入し、実業務の中で経験やスキル、ノウハウを蓄積させて横展開を図る」「DXの専任組織を立ち上げ、その組織内で教育を実施する」「基幹システムなどのインフラを運用している従業員を配置転換し、OJTを実施する」といった声が挙がった。また、従業員を教育する際は、実業務を通したOJTだけでなく、外部講師による教育研修や、eラーニングなどを活用するという声が上がった。中には「RPA」や「Python」といった具体的な習得技術を挙げる声もあった。

手段3「DX専任会社に人員を集中」

 「専任会社の設立」については、DXを推進するための人材を集中的に投入する目的で、既存の組織とは別に会社を設立するという声が挙がった。

 その他のアプローチもある可能性があるが、価値創出の源泉ともいえるDX人材の確保や教育の方法については、「秘密」「社外に公開できない」とする企業も多く、一般的論から踏み込んだ具体的なノウハウについて知ることは難しい印象だ。


 近年では、熱意と期待を持ってDXに着手したものの「なかなか取り組みが進まない」といった焦りの声も聞こえてくる。中にはPoC(概念実証)を繰り返して、「PoC疲れ」を起こしている企業も存在するという。その背景として、DXを推進するノウハウや具体的な技術に熟知した人材を確保できない、そもそもDXにおいてどのようなスキルを持った人材が必要かも明確化されていないといった現状があるのではないかと考察できる調査結果だった。

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