議事録作成の時間を約7割も削減 飛島建設がAI音声認識の実体験を語る
飛島建設は、取引先との定例会議の議事録作成に時間と労力がかかりすぎるという悩みを抱えていた。AI音声認識を活用して議事録作成を自動化しようとしたが、当初は認識の精度がイマイチだったという。しかし、あるブレークスルーによって、最終的には議事録作成の時間を約7割削減した。どのようなブレークスルーがあったのか。
飛島建設は、取引先との定例会議の議事録作成に時間と労力がかかりすぎるという悩みを抱えていた。数十のプロジェクト現場で、ベテランの従業員が議事録用のメモ取りに時間を取られおり、「もったいない」と感じていたという。
そこでAI音声認識を活用した議事録作成、書き起こしサービスを導入した。だが、当初は認識の精度が“イマイチ”だったという。同社はある工夫を施すことで、音声認識の精度を上げ、会議の内容を自動的にテキスト化することで、議事録作成の時間を約7割削減した。飛島建設の担当者が、AI音声認識の活用ポイントとその実力を語った。
会議内容の文字起こしに膨大な時間がかかっていた
飛島建設は、青函トンネルやヤマハスタジアムといった数々の大プロジェクトを手がけてきた建設会社だ。近年は「スマートな未来へ」というスローガンを掲げ、防災や環境といった分野で認知度を上げている。
同社は、社外の工事発注者や設計会社と協力しながらプロジェクトを進める。案件によっては、会議で話し合った内容を議事録にまとめ、発注者などに提出する必要がある。飛島建設の吉川清峰氏(建築事業本部 建築DX推進部ICTグループ)は次のように語る。
「当社の事業は『建築』と『土木』に大別されますが、建築事業本部だけでも数十のプロジェクトが並行して進んでいます。各プロジェクトの現場は月に1~2回程度のペースで定例会議を実施しており、建築事業本部では月に数十~百数十時間を社外会議に費やしています。会議内容の文字起こしに時間と手間が掛かることが問題になっていました」(吉川氏)
中には綿密な内容の議事録を求めてくる。録音した内容を何度も聞き直して文字に起こす必要があり、議事録の作成には会議の何倍もの時間がかかった。現場によっては、録音データではなく会議中の手書きメモを基に議事録を作成していたが、この方法にも課題があったという。
「若手のメンバーが議事録のためのメモを取ることが一般的だと思いますが、当社ではチームのナンバー2、ナンバー3に当たる人がその作業を担当することもあります。打ち合わせでは専門用語が飛び交いますし、複雑で高度な内容が話し合われるため、経験の浅い若手ではなかなか内容を理解できないからです。ベテランがメモ要員になることに、「もったいない」という気持ちを抱いていました。また必要なことがらを書き漏らすリスクもありました」(吉川氏)
会議の文字起こしに膨大な時間と手間がかかっていたこと、ベテランが会議のメモに時間を割かなければならないことなどが課題になっていたのだ。
ピンマイクの導入によって認識精度が飛躍的に向上
2020年5月頃、建築事業本部でDX(デジタルトランスフォーメーション)推進を担当している吉川氏らは文字起こし業務の効率化に乗り出した。会議の音声を自動的に文字起こしできる5つのサービスの機能を比較し、そのうちの3つを試用した。サービス選定で最も重視したポイントは、文字起こしの精度だ。
「face to faceの会議やリモート会議など、さまざまなシーンを想定して実証実験を行った結果、アドバンスト・メディアが提供する『AmiVoice ScribeAssist(アミボイス スクライブアシスト)』の精度が高いと分かりました。また、競合サービスはクラウドに録音データをアップして文字起こしをする仕組みで、通信環境が悪い現場ではうまく機能しない恐れがありました。一方、AmiVoice ScribeAssistはPCにインストールするパッケージ型ソフトウェアであるため、通信環境が悪くても利用できます。クラウドにデータをアップしないという点で、セキュリティの懸念も払拭(ふっしょく)できました」(吉川氏)
ただしコストがネックとなり導入をためらっていたと、飛島建設の名取祥一氏(企画本部 DX推進統括部)は話す。
「数十カ所ある現場それぞれにAmiVoice ScribeAssistのスタンドアローンライセンスが必要になった場合、各現場での社外会議が月に1~2回程度であることを考えると、提示されていた月額費用では費用対効果が出ませんでした。そこでアドバンスト・メディアの担当者の方に相談し、クラウドライセンスを導入することにしました。使用するライセンス数を絞り込むことで導入コストが削減できたことが導入の決め手になりました」(名取氏)
2020年秋にはAmiVoice ScribeAssistの導入が正式決定し、同年末には現場での活用が始まった。しかし活用し始めたばかりの頃は、文字起こしの精度が期待していたほど高くはないという課題が浮上した。会議の録音データを音声認識させたところ、多くの誤認識が発生したという。
打開策となったのはマイクだ。同社は、AmiVoice ScribeAssistの導入前に、アドバンスト・メディアの担当者から「口元近くにマイクを置く方が、認識精度が高まる」と説明を受けていたものの、「そこまでしなくても何とかなるだろう」と考えていた。しかし、その認識は誤りだったという。そこで、さまざまなシーンで、マイクの種類や設置位置を試行錯誤し、ベストなパターンを模索した。
「10人の参加者がいる会議でカタカナの『ロ』の字状にテーブルを置き、その真ん中にマイクを置いた場合、音声認識の精度はかなり低い結果となりました。そこで、マイクを置く場所を変えたり、録音に使う機材を変えたりして実験を繰り返したのです。最終的に、話し手の口の近くに耐雑音性能が高く感度調整機能を備えたピンマイクを付けたところ、認識精度は飛躍的に上がりました。認識精度はある程度満足のいく水準に達しています」(吉川氏)
録音方法によって音声認識の精度が大きく変わると知った吉川氏と名取氏は、できるだけピンマイクを付けて会議に臨むよう指導した。ただし、全員にピンマイクが行き渡らない大人数の会議では、他の機材を使って柔軟に対応しているようだ。
議事録作成を大幅に省力化、人事部でも導入され業務効率化に貢献
AmiVoice ScribeAssistの導入により、会議の内容を自動的にテキスト化できるようになった。議事録を作成する際は、自動生成されたテキストの一部を微修正するだけでよい。
議事録の作成に費やす時間は、AmiVoice ScribeAssist導入前の3割程度になった。建築事業本部だけでも、「おそらく月数十時間の書き起こし業務を削減できたのではないか」と話す。現在は、議事録を作成するほどではない会議の内容も、自動的にテキスト化し、備忘録として残せるようになった。吉川氏は、AmiVoice ScribeAssistでよく使う機能について次のように語る。
「自動的に話者を識別する『AI話者識別機能』や、テキストの重要な部分に『To do』などのタグを付けられる『タグ付け機能』、事前に登録した単語をテキスト中でハイライト表示できる『キーワード設定機能』などは、議事録作成に役立っています。専門用語などの認識率を高める『単語登録機能』も便利です。建設関連の認識率は、各現場で単語登録を進めるうちに向上しました」(吉川氏)
建築事業本部での成功を受けて人事部でもAmiVoice ScribeAssist のライセンスを利用することになった。従業員との面談で交わされた会話を自動的にテキスト化し、人事評価などの参考資料として保存するようになったという。
「人事部では、毎週火曜日に3人程度の従業員とそれぞれ約30分の面談を行っています。面談時に詳細なメモを取りづらいため、以前はボイスレコーダーなどによる音声データで確認していました。しかしAmiVoice ScribeAssistを導入したことで、人事評価や採用などに必要な情報を保存、共有しやすくなりました。また、担当者がメモから解放され面談に集中できるようになり、人事部でも評判が良いようです。現在は、早口の人や、専門用語を並べて話が長くなりがちな人との面談を中心に、月に5日程度AmiVoice ScribeAssistを利用しています」(名取氏)
他部門にも文字起こしサービスを普及させたい
吉川氏と名取氏は、建築事業本部の一部や人事部など限られた範囲で活用しているAmiVoice ScribeAssistを、社内で横展開できるように取り組んでいる。
「現時点では数現場がAmiVoice ScribeAssistを使っているという状況です。業務効率を高められることを確認できたので、社内で普及させたいと思っています。普及活動の一環として成果事例を社内で発信したところ、経理部門や研究部門といった他部門から問い合わせが何件か届いています。どの部門でも、議事録作成の工数が課題になっていたということなのでしょう」(吉川氏)
飛島建設では建設現場の生産効率を高めるため、さまざまな施策を進めている。例えば、バーチャルで建物を構築する「BIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)」の導入はその一例だ。
「2次元の図面を基に建築工事を実施してみると、製作物がうまく納まらないなど、予期せぬトラブルが生じることがあります。従来は、ベテラン技術者が知恵を出して問題を解決していたのですが、BIMを使ってバーチャルで立体モデルを構築し、建材などを組み合わせて工事前に問題点を洗い出せます。さまざまな分野でIT化を進めているところです」(吉川氏)
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