製造現場をデータで「見える化」……でも何のために? 現場とのズレが生んだ悲喜劇

多くの企業が現場でのデータ活用に取り組んでいる。筆者が今回取材した工場では、データ活用の目的をめぐって「すれ違い」が発生していた。改善のために始めたはずのデータ活用は、このすれ違いによってどのような事態に陥ったのか。

 最近、東北地方のある薬品系工場を取材で訪れた。データによって製造現場を「見える化」し、高い生産性を持つ新ラインの実現に生かすというのだ。

 しかし、取材で判明したのは、本社の役員から事前に聞いていた内容と、現場で工員が話す内容に「すれ違い」があることだった……。

役員と現場の“すれ違い” データ活用は何のため?

 筆者はメーカーに新卒で入社しており、新入社員研修で2週間工場に通い詰めた。工場を訪問するたびに当時の記憶が蘇って「エモい」感情が呼び起こされる。

 新人研修ではラインに流れてくる製品を検査して部材を指定の場所に運ぶなど、「お手伝い」程度ではあるが、ものづくりプロセスの一端を実地で体験した。駅から工場に行くバスで決まって流れていたラジオ番組、学生食堂並みの価格で日替わりランチを楽しめた大食堂、同じ工程で働いていた先輩工員と工場に併設された野球場でキャッチボールした昼休み――。ああ、工場は素晴らしい。

 今回取材した取り組みは、現場の導線や作業量のデータを測定し、現場作業を可視化するものだ。

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