CADにも生成AI機能が搭載される時代 人手不足の製造業向け、AI活用アイデア3選
製造業の現場では人材不足が問題になっている。業務効率化でこれに対応するには、生成AI活用がカギになる。大塚商会はイベント「実践ソリューションフェア2026」で、3つの活用アイデアを紹介した。
製造業の現場では人材不足が問題になっているが、具体的にはどの程度人が減っているのだろうか。経済産業省の「2025年版ものづくり白書」によると、製造業の就業者数は2004年が1150万人、2024年が1046万人と20年で104万人(約9%)減っている。業務効率を向上させたり、属人化を防いで情報を共有し、新人を育てやすくしたりといった対策を講じることが生き残りの要になる。
これを実現する手段として今注目されているのが生成AIだ。しかし、キーマンズネットの読者調査「生成AIの活用意向と課題に関するアンケート」(2025年1月14日~2月3日)では、製造業領域における生成AIの利用状況は利用割合が28.7%にとどまっている。これはIT系や流通・サービス業と比較しても明確に低い値だ。
製造業の分野で生成AIを活用するとどんなことができるのか。大塚商会が2025年2月に開催したイベント「実践ソリューションフェア2026」で、同社の山内僚介氏(CADプロモーション部)は、3つの活用アイデアを紹介した。
「以前、似たような設計したな」を一瞬で解決したい
製造業では、製品の設計をするに当たって過去の似た製品を流用したい、部品の調達において類似形状の見積もりを参照して部品を安く確保したいという場面やニーズが存在する。過去のデータを流用できるにもかかわらず、それを探し出せずに再度設計してゼロから図面を作ったり、見積もり作業をしたりするのは非効率的だ。
大塚商会が解決策として紹介したサービスは「SellBOT」だ。これはAIを活用して類似の図面を検索するシステムで、ユーザーが入力した図面を基にデータベースを検索し、過去の図面を類似度順にリストアップする機能がある。SellBOTにはORC機能や使用している素材名での検索機能などもある。図面には見積もりの情報などを登録することもでき、見積もり作業にも使える。
図面データは社内で共有され、探し出せない状態では流用できず資産として使えない。しかし検索システムを構築して引き出せるようになれば情報資産になる。さらに、検索時間を短縮できれば本来の設計検討業務に集中できるようになる。記憶に頼って探す必要がなくなれば属人化も軽減でき、業務の標準化につながる。
社内事情を分かっている生成AIチャット
「ChatGPT」をはじめとする生成AIチャットサービスは、標準状態だと世間一般的な内容でしか回答できない。「当社の経費精算フローは?」と尋ねても、ChatGPTがそれを知るはずはない。しかしそれでは活用の幅が狭くなるため、近年では「RAG」という技術で社内のデータと生成AIを接続し、“社内事情に詳しい生成AIチャットサービス”を構築することがある。
RAGは若手社員への技術継承や資料検索を効率的に実行できる技術でもある。システム構築ができれば、「当社の経費精算フローは?」と尋ねたときに生成AIが社内の経費関連資料を参照して、具体的な回答を生成できるようになる。製造業においては、作業マニュアルの理解の深化に使えるという。
従来は作業マニュアルを一通り読むのが普通だったが、RAGを活用すれば生成AIと自然言語で会話することで作業マニュアルの内容について理解を深められる。その他にも過去の仕様書データや以前あった取引先とのトラブル事例、法律、ISOの資料、開発設計書などを接続することで、さまざまな情報についていつでも質問できる状態を作れる。
AI機能付きCAD
近年のCADには生成AI機能が搭載されるケースも増えてきた。便利な機能として山内氏が紹介したのがコマンド予測機能と図面の自動生成機能、AIアシスタント機能だ。
コマンド予測とは、ユーザーが次に使うだろう作業コマンドを予測して補助するAI機能だ。通常のCADでは、GUI上部のリボンメニューで実行したいコマンドを探して使うが、この機能を搭載したCAD「SOLIDWORKS」コマンド予測があれば現在の作業内容に基づいて次に必要になるコマンドをリボンメニューに表示するようになり、コマンドを探す時間を短縮できる。
図面の自動生成機能は、断面図や穴寸法テキストなどの詳細を含む部品やアセンブリの図面を自動的に生成する機能だ。SOLIDWORKSの場合、現状ではまだ手直しが必要だが、部品点数が多いと図面作成の工数は大きくなりやすい場面では特に効果があるという。
AIアシスタント機能は、CAD上で生成AIとチャットできる機能だ。GUIの一部にチャット画面が表示され、生成AIと自然言語でやり取りすることで、質問に応答させたり、CADの機能を操作させたりできる。
すごそうなことはしなくていい
山内氏は「人手不足は待ったなしの状況です。AIの進化で従来は人手に頼っていたところを効率化できるようになってきています。AIの開発となると規模も大きくなりますし時間も大きくかかります。まずは図面検索や見積もりの自動化といったところに特化をして部分的に始めるというところも最初のステップとしてはいいのではないかなと考えています」と締めくくった。
近年では生成AIが注目を集めているが、製造業においては以前から画像認識AIを使って製品の数を数えたり検品したりすることがあった。ねじを手作業で数える状態から、カメラの下を通せばよくなったように、時間をかけて過去の図面を掘り起こす状態から、自動でAIが提示してくれるようになった。
人手不足に対抗するためにも、使えそうな技術を知り、可能性を探ることが重要だ。
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