なぜ姫路市の救急病院AIチャットは、2週間で正答率最高90%を出せたのか?

生成AIで多くの業務が効率化されるなか、電話対応だけは何十年も変わらない光景が続いている。AIを実務で機能させる鍵は何か。メディアリンクが姫路市との実証実験で示した「ナレッジ循環」の仕組みを読み解く。

 生成AIの導入により、メール返信や資料要約、議事録作成といったテキスト業務の効率化は急速に進んだ。一方で、電話業務の現場だけは何十年も変わらないままだ。なぜAIが普及しても、電話による問い合わせは減らず、効率化も進んでいないのか。

 コールセンター向けITソリューションとAIエージェントを提供するメディアリンクの松田彩花氏は、姫路市との実証実験で得た知見も踏まえ、AIを実務で機能させる条件を整理した。

姫路市が目指す「AIと人の明確な役割分担」とは

 「ChatGPT」の登場から3年以上が過ぎ、LLMの進化によってAIは単なる指示処理から、推論して自律的に動くAIエージェントへと移行しつつある。特にカスタマーサポート領域は自然言語でのやりとりが中心であり、AIと親和性の高い領域だ。

 それにもかかわらず、メールや資料作成が大きく効率化される一方で、電話対応は従来のままだ。電話が鳴れば作業を中断して応対し、メモを取り、担当者へ引き継ぎ、不在であれば折り返すといった流れは今も変わっていない。

 松田氏はその背景として、電話が選ばれる理由を「緊急性」「複雑な要件」「共感・安心感」の3点に整理する。即時の回答が求められる場面や文章化が難しい複雑な相談、さらには不安やトラブル時における感情的なケアなど、いずれも電話が依然として担っている領域だ。

 松田氏は、兵庫県の「ひょうごTECHイノベーションプロジェクト」の一環として、姫路市と共同で実施した実証実験について説明した。同プロジェクトは、県内の社会課題をスタートアップなどの技術で解決する取り組みであり、メディアリンクの提案は2025年に採択された。

 実証の対象となったのは「姫路市休日・夜間急病センター」の相談窓口だ。看護師が蓄積してきた知見をナレッジデータ化し、それを基に生成AIが自動応答することで、24時間365日対応かつ多言語対応可能な相談窓口の実現を目指した。

 同センターが抱える課題は主に3点あった。

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