法人被害45億円、元警視庁が解説「会話もできるAI詐欺」の手口と対策

生成AIによる音声合成の進化で、経営者や上司の声が数秒で複製される時代が訪れた。元警視庁職員やAI音声開発企業のCEOなど3人の専門家が、実演で脅威を体感させながら、最新のボイスフィッシングの手口と、組織が今すぐ取るべき備えを示した。

 AIによる音声合成は、動画の吹き替えや通訳といった用途で急速に実用化が進む。だが同じ技術が、経営者や取引先になりすます「ボイスフィッシング」に転用され、法人口座を狙う不正送金の被害が相次いでいる。

 警察庁によれば、2025年のインターネットバンキングを巡る不正送金は4747件・約103億9700万円に上り、手口の約9割をフィッシングが占めた。電話という人と人との接点は、メール以上に人の判断を直撃する。この脅威にどう備えるべきか。

オレオレ詐欺は企業こそ気を付けるべき時代に 備えの基本は「PTP」

 Fortis Intelligence Advisoryの稲村悠氏(代表取締役)は、大学卒業後に警視庁で諜報(ちょうほう)活動の捜査や情報収集に従事し、人の脆弱(ぜいじゃく)性を突くソーシャルエンジニアリングを研究してきた。その稲村氏がまず示したのは、ボイスフィッシングという手口の性質だ。

 ボイスフィッシングは、ショートメッセージやロボコールなど複数の手段を組み合わせつつ、最終的に人と人との音声通話へ持ち込む点を特徴とする。稲村氏は「メールという媒体を通すよりも、人と人とのコミュニケーションのほうが、人の脆弱性を突きやすくなります」と述べ、音声を介することによる危険性を指摘した。

ボイスフィッシングの典型的な攻撃フロー(出典:セミナー時投影資料)

 稲村氏によれば、ボイスフィッシングは2024年から2025年にかけてさらに高度化し、個人向けの小規模な詐欺から、企業・組織への「初期侵入の入り口」へと格上げされてきたという。

 なぜ企業では被害が深刻化しているのか。攻撃者は、人間の判断の弱点を巧みに突く"電話ならではの手法"を使っているという。

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