“壊してもいい”が現場を変えた 岩塚製菓、生産性1.3倍を生んだDX定着の条件

現場DXは、ツールを入れるだけでは実現しない。岩塚製菓では、業務を測り直し、失敗を責めず、データを支援と評価に使った。数値を根拠に動く社内文化を土台に、包装工程の生産性を前年比約1.3倍に高めた過程を追う。

 米菓の製造・販売を担う岩塚製菓では、お中元やお歳暮の時期になると、ギフト商品の包装工程が一気に忙しくなる。本社などの間接部門をはじめ、全社体制で応援に入って大量の注文を処理する。こうした繁忙期の光景が、長年繰り返されてきた。

 繁忙期には、1日約6000件の注文を処理する。ただし、これは注文の件数であり、1件当たりの商品数はそれぞれ異なる。商品が1個だけの場合もあれば、30個をまとめて購入する顧客もいる。そのため、例えば午前中に3000件の注文を処理したとしても、「作業の半分が終わった」とはならない。件数の処理数だけでは「あと何個包むのか」は分からないからだ。

以前は紙で工程の進捗を管理していた(提供:岩塚製菓)

 しかも、包装工程の進捗(しんちょく)や処理能力を正確に把握する仕組みはなく、生産を統括する製造本部とのやりとりは電話が中心だった。現場には「今日中に終わるのか」「あと何人必要なのか」と問い合わせが相次いだ。当時、長岡工場で包装工程を管理していた岩塚製菓の武山浩太朗氏(DX推進室係長)は、紙に記録された情報から数値を計算し、「終わると思います」「10人ほど必要です」と答えていた。

 「注文量が多く、現場全体が慌ただしい中で、私は電話対応に追われて仕事が進みませんでした」(武山氏)

 こうした状況は少なくとも15年以上続いていた。他の製造ラインでは自動化が進んでいたが、ギフト商品の包装工程は自動化が難しく、繁忙期も限られるため、設備の減価償却を考えると採算が合わなかった。そのため、「その時期だけ人を集めれば乗り切れる」と考えられ、抜本的な見直しの対象になりにくかったという。

 改善の起点になったのは、2008年から誰も更新してこなかった一つの数値だった。

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