IT資格の保有状況/前編
今、IT資格を取るならどれ? ランキングに見る「急浮上の資格」と「不動の資格」
IT資格に求められるのは、知識の習得か、専門性の証明か、それともキャリアアップか。資格保有者への調査から、人気資格や実務での評価、学習方法、企業の取得支援制度を整理する。
生成AIをはじめ、新たな技術やサービスが次々と登場するIT業界。求められる知識の変化が激しい時代だ。IT人材に求められる知識やスキルが変わりつつある今、取得しておくべき資格はどう変化しているのか。
キーマンズネットが実施した2026年の調査(実施期間:2026年10月2日~16日、回答件数:205件)で、IT資格の保有状況を尋ねたところ、最多の資格は保有率48.2%。回答者の約半数が取得していた。結果を詳しく見ると、定番資格の根強さに加え、資格選びで重視される実利や、企業の支援姿勢の変化も見えてきた。
AI時代でもIT資格は「新しさ」より「基礎」を重視か
現在保有しているIT資格を聞いたところ、最多となったのは「基本情報技術者」(48.2%)。上位3資格の顔ぶれが2021年から6年連続で変化は見られない。技術やサービスが次々と登場するIT分野だが、資格の保有状況では、長年支持される定番資格が強さを見せている。以下の図は、主要32資格のうち、読者が保有する資格をランキング形式でまとめたものだ。
この背景には、ITの仕事で必要となる基礎知識を体系的に学べることや、資格が自身の知識・スキルを確認する目安として定着していることなどが考えられる。新しい技術への対応が求められる時代だからこそ、基礎を固める資格の価値が見直されている可能性もある。
保有資格の2位は「ITパスポート試験」(29.2%)、3位は「応用情報技術者」(26.3%)だった。さらに「情報セキュリティマネジメント」(19.7%)が続く。ネットワークやセキュリティ関連の国家資格に加え、「G検定」(7.3%)や「生成AIパスポート」(6.6%)といったAI関連資格も保有されている。
難関資格より基礎資格? 「仕事に役立ったIT資格」ランキング
保有資格のランキングだけでなく、「最も業務に役立った資格」でも「基本情報技術者」(18.2%)が最多となった。「ITパスポート試験」と「応用情報技術者」(いずれも8.0%)が続き、保有率の高い資格が業務で役立った実感でも上位に入っている。
基本情報技術者やITパスポート試験は、ITに関する幅広い知識を体系的に学ぶ機会となる。情報システム部門やエンジニアだけでなく、DX推進や業務部門でIT活用に携わる人にとっても、共通の知識基盤を持つことは有用だろう。こうした幅広い業務への応用可能性が、保有率と実用性の双方で上位に入る一因なのかもしれない。
一方、次点には「情報処理安全確保支援士(登録セキスペ)」(6.6%)、「G検定」「ネットワークスペシャリスト」「ITコーディネータ」(いずれも3.6%)などが並んだ。特定分野の専門資格も挙がっており、資格の価値は保有者の多さだけでなく、担当業務や専門領域との相性によっても変わると考えられる。
IT資格で「業務知識が身についた」は53.3%、給与改善は8.0%
IT資格を保有していて「特に役立ったと感じることはない」と回答した人は23.4%だった。一方、何らかのメリットを感じている人が多数を占めた。
具体的には「業務に必要な知識・スキルが身についた」(53.3%)が最多。「専門性を高めることができた」(31.4%)、「現在の仕事に役立っている」(29.9%)、「自分のスキルや知識を客観的に証明できた」(29.2%)と続いた。
この結果からは、資格取得のメリットが、知識の習得と実務への活用だけでないことが分かる。「社内での評価、信頼につながった」(19.0%)という回答もあり、資格が自身の専門性を周囲に示す手段になっているようだ。
ただし、資格取得がそのまま昇進や待遇改善につながるわけではない。「給与や資格手当などの待遇改善につながった」は8.0%、「昇進や昇格につながった」は5.8%、「新しい仕事、役割を任されるきっかけになった」は3.6%だった。
資格は、取得しただけでキャリアを変えるものというより、身に付けた知識を業務で生かし、専門性を示すことで価値が生まれるものと考えた方がよさそうだ。企業側にとっても、資格の有無だけを評価するのではなく、実際の業務や役割と結び付けて活用することが重要になる。
IT資格選びで最も重視するのは「業務に役立つこと」が55.5%
では、取得する資格を選ぶ際、何が重視されているのだろうか。
最多は「業務に役立つ内容であること」(55.5%)で、「専門性を証明できる」(45.3%)が続いた。「資格の知名度・認知度が高い」(26.8%)や「転職やキャリアアップに役立つ」「資格取得後のキャリアにつながる」(いずれも24.1%)、「企業からの評価が高い」(20.4%)も挙がっている。
知名度や転職での有利さも判断材料ではあるが、それ以上に重視されているのは、現在の仕事に役立つかどうか、そして専門性を証明できるかどうかだ。これは、資格取得を単なる肩書の獲得ではなく、業務に必要な知識を身に付け、その能力を周囲に示す機会として捉える人が多いことを表している。
企業が従業員に取得を推奨する場合も、資格の知名度や難易度だけでなく、実際の業務との関連性や、取得後に担ってほしい役割を明確にすることが、学習意欲を高める上で重要になりそうだ。
IT資格の勉強法、最多は「参考書で独学」 生成AIを活用する人も
試験勉強を開始してから受検するまでの期間は、「4カ月~6カ月」(35.8%)が最多。「1カ月~3カ月」(33.6%)が続き、約7割が6カ月以内に受検していた。
ただし、必要な学習期間は資格によって異なる。「ITストラテジスト試験」や「情報処理安全確保支援士」(登録セキスペ)、「CISA」(公認情報システム監査人)などの上位資格では、平均以上の時間を要する傾向が見られた。資格取得を計画する際には、資格の難易度や自身の実務経験を踏まえ、無理のない学習期間を確保する必要があるだろう。
勉強方法では「市販の参考書や問題集で独学」(73.7%)が最多。「Webサイトやブログなどを利用して独学」(40.1%)、「過去問題や模擬試験を中心に学習」(30.7%)が続いた。
一方、「オンライン講座やeラーニングを利用」(24.1%)に加え、「YouTubeなどの動画で学習」(10.9%)、「生成AIを学習に活用」(8.0%)という回答も見られた。
参考書や問題集による学習が主流であることに変わりはないものの、動画や生成AIも選択肢に加わっている。特に生成AIは、苦手分野の解説や練習問題の作成など、自分の理解度に合わせた学習を補助する使い方が考えられる。
もっとも、今回の調査から生成AIの利用が学習効率や合格率の向上につながっているとまでは言えない。今後、学習手段が多様化する中で、教材を選ぶだけでなく、自身の理解度を確かめながら知識を定着させることが一層重要になりそうだ。
企業のIT資格取得支援に変化 大企業で低下、中堅企業では増加
資格取得を後押しする企業の支援制度にも変化が見られた。
資格取得費用を負担する支援制度が「ある」と回答した割合は54.1%。過半数を占めたものの、2017年の調査開始時と比べると5.3ポイント減少した。
特に従業員数5001人以上の企業では、制度の設置率が7割以上から6割程度に低下している。一方、ここ数年で設置率が増加傾向にあるのが、従業員501~5000人の中堅企業だ。2017年には5~6割程度だった設置率が、7割を超える水準まで伸びている。
全体では制度の設置率が低下している一方、中堅企業では増加傾向にある。この違いは、企業規模によって資格取得支援の位置付けや制度の整備状況が異なる可能性を示している。ただし、今回の調査だけでは、その背景にある経営判断や人材戦略までは特定できない。
では、制度の内容にはどのような違いがあるのか。
支援制度の補填(ほてん)対象を見ると、「試験に合格した場合、会社が受験料を全額負担」(40.5%)が最多。「試験に合格した場合、報奨金が支給される」(36.0%)、「試験に合格した場合、会社が受験料を一部負担」(19.8%)が続いた。
こうした結果からは、合格を支援の条件とする制度が一定の割合を占めていることが分かる。一方、中堅企業では、資格取得に必要な書籍の購入費用や、セミナー・ウェビナーへの参加費用など、学習段階から費用を負担する割合が高い傾向にあった。
資格を取得した後に報いるのか、それとも取得に向けた学習そのものを支えるのか。支援のタイミングによって、従業員が感じる負担や学習への取り組みやすさも変わってくるだろう。
合格時の報奨は明確な目標を示す一方、学習段階での費用負担は、教材や講座を選ぶ際のハードルを下げる効果が期待できる。企業が資格取得支援制度を設計する際には、費用を負担するだけでなく、従業員にどのような知識を身に付けてほしいのか、取得した資格を業務でどう生かしてほしいのかまで考えることが重要になりそうだ。
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