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若気の至りも帳消しにできるかも、「忘れられる権利」とは?5分で分かる最新キーワード解説(1/3 ページ)

若気の至りでネット上に書き込んだ、あの情報を何とかしたい。「忘れられる権利」に関するEUや米国、そして日本の状況は?

» 2014年03月05日 10時00分 公開
[土肥正弘ドキュメント工房]

 今回のテーマは、EUの個人データ保護規則案に登場した「忘れられる権利」だ。SNSをはじめITサービスが収集、蓄積する膨大な個人データの何を守り、どう利活用できるのかについて重大な問題提起となった。

 若いころに思わず投稿してしまい、今になって後悔する「しまった」投稿も、ネット上から削除できる時代が到来するかもしれない。規則案は審議中ですが、結果はどうあれ、今後も絶対に忘れたくないキーワードだ。

「忘れられる権利」とは?

 忘れられる権利は、SNSなど各種オンラインサービスが保有する自分の個人データについて、サービス業者に申請すれば削除と頒布中止を求められる権利のこと。2012年1月に公表された「EUデータ保護規則案(以下、保護規則案)」の条文に盛り込まれた言葉「rights to be forgotten」の訳語だ。

 SNSに投稿した自分のプロフィールやプライバシーにかかわる情報は、登録や投稿時には公表したいと思っていても、後で「しまった」と思うことが多い。削除しても、既に内容が他のサイトにコピーされ、さらに別のサイトからリンクを張られていても不思議はない。

 子どものころに書き込んだ内容が、分別ある大人になってみると恥ずかしくて仕方がないこともあるだろう。SNS業者側に個人データの消去を実施させることを法的な拘束力をもって保障するのが忘れられる権利だ。

データ利用の同意撤回や期限切れで、業者がデータを消去する仕組み

 このキーワードは、EUデータ保護規則案の「第17条 忘れられる権利と消去する権利」という条項に登場した。規則案は、1995年に採択され1998年に発効した「EUデータ保護指令(以下、保護指令とする)」の改定版だ。保護指令が採択された時には想像できなかったグローバルなインターネットサービスの進歩など、IT環境変化に適合するように個人情報保護の在り方を見直している(現在審議中)。

 例えば、保護指令では個人情報が不正に収集された場合や内容が正しくない場合のみ、削除を求める権利が認められている(保護指令の影響を受けて策定された日本の個人情報保護法も同様だ)。一方、保護規則案では、それに加えて本人がデータ利用の同意を撤回したり、同意した保有期間の期限が切れたりした時にも管理者に消去してもらう権利を保障しようとしている。

 また、第18条ではSNS利用者が他のサービスに乗り換える際に、管理者に妨害されることなく自分の個人データを一定のフォーマットで入手し、他のサービスに移転する権利も保障することもうたっている(データポータビリティ)。

 当初は「個人データのコピーやリンクがある第三者のサービスでも、元データを持つ業者の責任で削除すること」まで提案されていた。例えば、Facebookに書き込んだ個人情報が誰かのブログや他のSNSサイトにコピーされたり、その情報へのリンクが張られていたりすれば、これらの削除もFacebookの責任で行うとされた。

 これなら、なかったことにしたい個人データを、本人は苦労せずに、ネット上からさっぱりと「忘れられる」ことができる。個人情報保護をEU憲章で基本的人権の1つとするEUだからこそ、そこまで徹底した対策が考えられたとみることもできるし、多国籍サービスが欧州をこれ以上席巻しない防波堤にしようとしたという見方もあろう。

 しかし、現実的にはそこまでのルール化は難しかった。結局、サービス業者側の負担を軽減して、業者は「データの削除を通知するためのあらゆる合理的な措置をとる」ことが保護規則案に記された。さらに、通知義務についても2013年10月の欧州議会修正案で削除されている。

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