一般的にソーシャルメディア分析ツールは、マーケティング部門や広報部門が利用するのが一般的で、情報システム部門としての関わりは少ないように感じられるかもしれない。
しかし、昨今のビッグデータを含めたデータ分析のニーズが広がってきたことで、分析を専門に行う「データサイエンティスト」としてのスキルを持った人材が重宝され始めた。ここで活躍できるチャンスがあるのが、これまでさまざまな情報を収集してデータ分析しレポートを提供してきた情報システム部門だろう。
単にデータ分析のみならず、ソーシャルメディアから得られる情報をKPIとして設定し、社内ポータル上で可視化できるようにAPI連携させるといった活用も情報システム部門であれば実装しやすい。データ分析のプロフェッショナル集団として、システムのお守りから脱却する絶好の機会と捉えるべきだ。
ここで具体的な活用例の幾つかを紹介しよう。前述した一般的な活用例以外にも、アイデア次第でいろんなメリットが得られるはずだ。
自社の商品について発言している人が、普段どんな情報に対して反応するのかを調べることで、より口コミされやすい記事のネタが何なのかを見極めることができる。最近では検索エンジンよりもソーシャルメディアから自社サイトへの流入が増えていることから、オウンドメディア(自社サイト)を充実させたいと考えている担当者に重宝されている。
ソーシャルメディアにつぶやいている人の発言の中から参考になるものや改善課題を見つけ出して、課題一覧としてメンバーに共有できるようにする。ソーシャル上の口コミとそれに対する自分のコメントを添付することで、他部門に対しても新たな気付きを与えるきっかけとなる課題共有、管理を行うことができるようになる。
認知度調査など消費者に聞きたいことがはっきりしている場合はアンケート調査の方が有効だが、具体的な項目出しの際にソーシャルメディア分析ツールが用いられる。アンケートに最適な設問をソーシャルメディアの中から導き出すなど、リサーチする前のリサーチのためにソーシャルの声を活用するというイメージだ。
一般的にWebサービスが停止するとアラートが管理者に通知されるため迅速に発見しやすいが、ユーザーが体感しているWebサイトのレスポンス低下は監視ツールだけでは正確なところは分からない。そこで2ちゃんねるの書き込みを監視し、「Webサイトのレスポンスが遅くなった」といったコメントからレスポンス低下を迅速に察知するといった利用方法もある。Webサービスが事業の中心となっている企業には便利に使えるはずだ。
自社のWebサイトに不具合があるとユーザーからクレームが入るものだが、逆に問題なく稼働している場合は誰も何も言ってこないのが一般的だ。しかし、「Webサイトがとても使いやすい」「レスポンスが快適」といったコメントをソーシャルメディアの中から収集し社内で共有することで、情報システム部門のモチベーション維持に活用することができる。情報システム部門に限らず、好意的なコメントが寄せられにくい部署に対してユーザーからの喜びの声を集めてあげることは、モチベーションを低下させない重要な施策となるだろう。
検索結果の上位に表示されやすい第三者のQ&Aサイトに事実と異なる内容が書かれている場合、あまり詳しくない人であればその情報をうのみにしてしまう可能性も否定できない。そこで、誤った口コミに対するFAQを自社サイトに掲載しておくことで、正しい情報が広まるような対策を行っている企業もある。誤った情報をしっかりと見つけ出すことがポイントだ。
株主総会ではさまざまな質問が株主から寄せられるが、事前に想定問答を作るためにソーシャルメディアの声を拾い、指摘されそうな部分を調べ上げるという使い方もある。消費者が普段どのように自社のサービスについて思っているのかを把握しておくことで、株主総会の場面でも役立つ情報が収集できるようになる。
中国では、中国版Twitterとも言われている「WEIBO」がソーシャルメディア分析の情報源に挙げられる。ただし、日本の場合とは事情が少し異なる。
日本の場合はbotによる自動発言システムが動いているが、中国ではシステムではなく人力でbotの代わりをしているケースが多く、ツイートもやらせなどが横行している傾向にあるようだ。スパムフィルターも設定しにくい状況にあるのが実態で、膨大な情報の中から情報を取捨選択するリテラシが求められる。
なお、WEIBOなどソーシャルメディアの情報を取得するには現地にある電話番号を登録する必要があるなど、現地に環境を整備しないと情報収集は難しいという事情もあるため、ソーシャルの声を拾うのはとても大変だ。また、システムというよりも人手でソーシャルメディアの声をレポーティングする方が割安な状況にあるようで、システム利用はさほど多くないといわれている。
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