Bluetooth Low Energyの策定とAppleの「iBeacon」の登場で、屋内の位置測位や情報のプッシュ配信などへの活用が期待される「Beacon」。初めて学ぶ人向けに基礎知識を徹底解説する。
モノのインターネットと称されるIoT時代に突入し、その通信手段としてさまざまな無線技術が注目されている。中でも話題となっているのが、Bluetooth Low Energy(BLE)を利用した「Beacon」と呼ばれる仕組みだろう。BLE Beacon端末が発するビーコン信号をスマートフォンなどのデバイスがキャッチすることで、屋内の位置測位や情報のプッシュ配信などへの活用が期待されている。今回はBeaconに関する基本的な情報について詳しく紹介しながら、今のトレンドや今後の方向性など、今知っておきたいBeaconの基礎知識をお届けしよう。
一般的にビーコンとは、無線局などから発射されている電波を移動体側の受信装置で受け取り、位置情報などを取得する仕組みを指しており、この際に発射される電波のことをビーコン信号と呼んでいる。世の中では、航空機や船舶、自動車などの位置特定や情報取得のためにさまざまなビーコンの仕組みが用いられているが、ITの世界では長年Wi-Fiを利用するための無線LAN技術の中でアクセスポイント同士がその位置を知らせるための信号として用いられてきた。
現在もっとも注目されているのが Bluetoothが発するビーコン信号を活用する「Beacon」という仕組みだ。 Appleが提供するiOS7より「iBeacon」という規格で標準搭載されたことから注目を集めるこの技術は、位置測位技術の中でも屋内でのロケーションを的確に把握できる「Micro Location技術」の1つに分類され、スマートフォンと連動することで、屋内の位置測位や情報のプッシュ配信などさまざまな用途への展開が期待されている。
なお、今回紹介するのはBluetooth Low Energy(BLE)を用いたMicro Location技術が中心だが、他にも音波や可視光を使ったMicro Location技術が存在している。音波Beaconは既に山手線の車内に設置されており、実用化されている技術の1つ。音波Beacon対応のアプリをダウンロードすれば、今すぐにでも使うことができるようになっている。
一般的にBeaconを使う場合は、店舗や工場内にビーコン信号を発するBeacon端末を設置しておく。位置測位が必要であれば数十メートル間隔に設置して必要なエリア設計を行い、情報のプッシュ配信を行う場合はその商品の近くや店舗入り口などにBeacon端末を配置して利用する。
情報のプッシュ配信では、専用アプリがダウンロードされたスマートフォンを持って店舗にいくと、Beacon端末からのビーコン信号をスマートフォンがキャッチし、その情報が格納されたサーバにアクセス、商品情報やクーポン券などがスマートフォンに送信されるというのが一般的な構成になる。
なお、位置測位に関しては、3点からの電波を計算する三角測量技術を用いることで高精度な位置測位が可能になるが、実際には歩行者自律航法(PDR:Pedestrian Dead Reckoning)や地図補正を行うマップマッピング技術を組み合わせて高精度な位置測位を実現している。
店舗などに設置されるBeacon端末は、さまざまなタイプのものが存在している。給電できない部分に設置する場合はボタン電池式のものが多く利用されており、屋外ならソーラー型、PCにつなげて利用するUSB給電型、充電して何度でも使えるリチウムイオンUSB充電式のものも存在する。他にも電波に指向性を持たせたBeacon端末もある。
これまでBeacon端末は、電源を起動するために電源監視回路を内蔵した電源ICと二次電池などの大きな蓄電素子が必要だった。しかし、2015年3月に変形自在で電池交換不要なBeacon端末を富士通研究所が開発した。何と電源不要で曲げることも可能なBeacon端末で、さまざまな場所に容易に設置できることから大きな話題を呼んでいる。太陽電池による電力量で起動できるようになっており、天井蛍光灯のすき間やLED電球の表面などに取りつけることで電池交換が不要になっている。
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