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ハイヒールで踏みつけても壊れない「CNTゴムトランジスタ」とは?5分で分かる最新キーワード解説(3/3 ページ)

» 2015年09月16日 10時00分 公開
[土肥正弘ドキュメント工房]
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CNTゴムトランジスタの特徴と応用

 CNTゴムトランジスタの特徴の一端を、「伸縮性」と「柔らかさ」で他の素材と比較したのが図5だ。洋服によく使われるレーヨンなみの伸縮性をもち、ポリエステルやフェルトなみの柔らかさを兼ね備えている。金属やプラスチックに比較すると際立った柔軟性を持つ。

伸縮性と柔らかさの比較 図5 伸縮性と柔らかさの比較(出典:産総研)

 また、材料として使われている元素は炭素、窒素、酸素、フッ素、ケイ素、硫黄の6種類だ。

 上述したような生体センシングシステムをはじめ、介護ロボットの皮膚などの医療用ヒューマンモニタリングエレクトロニクスへの応用が期待されるが、他にも特徴を生かした応用ケースはさまざまに考えられそうだ。ファッション、広告、ウェアラブルなどへの適用も可能かもしれない。なお、産総研の研究はもちろん産業応用のために行われており、企業からの提案はいつでも歓迎とのことだ。

関連するキーワード

カーボンナノチューブ(CNT)

 炭素原子が六角形状の網の目のようにつながり、中空の筒形となった構造のカーボン。単層の筒形状のものは単層CNT、単層CNTが複数入れ子になった構造をしているものは多層CNTという。

 今回紹介したCNTゴムトランジスタでは単層CNTが使われる。単層CNTは直径が0.4〜50ナノメートル、長さがおよそ1〜数十マイクロメートルだ。

 構造によって電気的性質が異なり、シリコンなどに変わる半導体としての利用に期待される。また、ガスセンサーやバッテリー、光学デバイス、さらにアルミニウムの半分程度の軽量性と鉄やダイヤモンドに比肩する強度を持つことから構造材としての利用も検討され、「宇宙エレベーター」の建造材料としての研究も進む。

「CNTゴムトランジスタ」との関連は?

 単層CNTが持つ金属的特性と半導体的特性を生かし、ソース、ドレイン、ゲート電極にCNTとゴムの複合材料を、チャネルに半導体CNTを用いてトランジスタとして動作するCNTゴムトランジスタが作られた。

ヤング率、許容弾性ひずみ量

 「ヤング率」は、ものを引っ張ったときの「伸びやすさ」を示す値。詳しくいえばフックの法則(弾性の法則F=kx)が成立する弾性範囲における、同軸方向の応力とひずみの比例係数である。ヤング率が高いほど「伸びにくい」ことを示す。

 「許容弾性ひずみ量」は、材料に応力を加えてひずみが生じたとき、応力を除くと元の寸法に戻せる最大のひずみ量のこと。つまり力を加えて変形させても元に戻れるかどうかの目安になる。両方合わせれば、柔らかさと伸縮性が分かる。

「CNTゴムトランジスタ」との関連は?

 本文図5に示すように、CNTゴムトランジスタのヤング率(図では逆数で表示)はプラスチックはもちろん、布よりも「柔らかい」値を示した。許容弾性ひずみ量でも、フェルトやポリエステルと同等に「伸縮性がある」値を示した。

オン電流、オンオフ比

 いずれもトランジスタをスイッチとして用いる場合に重要となる特性値。オン電流は、通電時の電流値であり、これが一定値以上でないと実用的なスイッチとしては使えない。オンオフ比とは、通電状態と遮断状態における電流値の比であり、これが大きいほどスイッチとして優れる。

「CNTゴムトランジスタ」との関連は?

 本文図4に示したように、オンとオフ時のドレイン電流は10の4乗倍、オン電流は−50uAが実現した。これは十分にスイッチとして実用可能な数値だ。

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