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崩れ去る境界防御、IoT対応も急務 ITセキュリティはどうなる?すご腕アナリスト市場予測(5/5 ページ)

» 2016年02月18日 10時00分 公開
[登坂恒夫IDC Japan]
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足元のセキュリティ投資は「標的型攻撃対策」が中心

 さて、以上のようなITとセキュリティ動向の中で、現状のセキュリティ投資はどのように推移しているのかも気になるところだろう。IDCでは2016年1月、2015年上半期までの実績に基づいたソフトウェアとアプライアンス製品を含めた国内情報セキュリティ製品市場の2015年〜2019年の予測を発表している(図2)。

国内情報セキュリティ製品市場の2015年〜2019年の予測 図2 国内情報セキュリティ製品市場の2015年〜2019年の予測(出典:IDC Japan)

 ソフトウェア製品の市場規模は前年比5.8%増の2284億円、その内SaaS(Software as a Services)型セキュリティソフトウェアの市場規模は前年比15.3%増の142億円と推定した。また、セキュリティアプライアンス製品市場の市場規模は前年比0.3%増の415億円と推定される。

 調査結果からは法規制による需要拡大、各種のサイバー攻撃事件に触発された外部脅威対策への関心、多層防御や未知の攻撃への対策などへの投資が多くなっていることが見て取れる。これは標的型サイバー攻撃への対策を意図したものが多いと考えられる。

 標的型メール攻撃や未知の脆弱性を狙うゼロデイ攻撃は企業規模を問わずに仕掛けられており、しかもセキュリティインシデントの多くは表面に現れない形で頻発していて、問題が表面化したころには深刻な被害がでていることがある。これは年金機構事件やその他の標的型サイバー攻撃事例からはっきりしており、危機感を抱いている企業や組織が多くなっているようだ。

 この種の攻撃を前提にすると、セキュリティ侵害発生を前提としたソリューションが不可欠になる。リスク管理の一環として、インシデント情報収集、分析、監視、管理が可能な能力が必要だ。

 数あるインシデントのうち、リスクを生むものを可視化して、迅速な対処を可能にするためのツールがいる。そのようなツールを「標的型サイバー攻撃向けサービス」とくくり、IDCではその実態を調査(2015年10月公表)している。

 これによると、2014年の国内標的型サイバー攻撃向けセキュリティサービス市場は3406億円、前年比成長率8.6%。2014年〜2019年の年間平均成長率7.1%、2019年には4799億円と予測される。この数字を他の情報セキュリティサービス市場の数字と合体したグラフを図3に示す。明らかに標的型サイバー攻撃向けサービスが、セキュリティサービス市場をけん引している状況が分かる。

標的型サイバー攻撃向けサービス市場とそれ以外の情報セキュリティサービス市場 図3 標的型サイバー攻撃向けサービス市場とそれ以外の情報セキュリティサービス市場、2014年〜2019年(出典:IDC Japan)

 ツールの種類でいえば、サンドボックスやSIEM、各種のフィルタリングツールなどの製品の伸び率が高く、セキュリティサービスの中ではマネージドセキュリティ、セキュリティ監視サービス、インシデントレスポンスサービスの伸び率が高くなっている。

 逆に落ち込んでいるのは従来型のファイアウォールやスパムメール対策のホスティングサービスなどだ。エンドポイントセキュリティでは、アンチウイルスは落ち込みもせず増加もしない状況だが、エンドポイントのインシデント可視化製品が伸びており、注目に値する。

 このような調査結果からは、ユーザー企業や組織の中で従来の境界防御セキュリティの限界は認識されてきていることが推察される。またSIEMやエンドポイントのインシデント可視化への関心の高まりは、これからの分散型セキュリティへの転換の下地を構成するものとして捉えてもよいだろう。

 IoTに関連するセキュリティ投資はまだ明確な形で見えるようになってはいない。しかし、やがて本格的に到来するDX社会を目前に、現在の環境の中でもビッグデータを対象にしたアナリティクス技術を磨くことは可能だ。

 今後は大企業中心に、第3のプラットフォーム技術を上手に使ったDXがビジネス戦略として積極的に展開されることになるだろう。それに伴い、データの重要性は高まっていく。来るべきDX時代に備え、新時代のセキュリティの在り方を検討するのは、まさに今だ。この記事が一部で行き詰まりを見せているセキュリティ対策の見直し、再点検に生きるところがあれば幸いだ。

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