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まるでリアルタイム「人群」探知機、「混雑監視レーダー」とは?5分で分かる最新キーワード解説(3/3 ページ)

» 2016年04月06日 10時00分 公開
[土肥正弘ドキュメント工房]
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混雑監視レーダーの今後

 この技術は必ずしも混雑度監視だけにとどまるものではない。例えば、水面での電波反射を測定できるところを利用すれば、水害や冠水などの災害時の状況把握に役立てられる(こちらはプールでの実証実験が行われている)。

 レーダー送受信機を一定間隔に並べて自動車や歩行者の状況を調べれば、交通量調査目的にも使えよう。もちろん、夜間の防犯対策や、農場や牧場などの鳥獣被害対策にも利用可能になりそうだ。

 もっともコスト面では図5に示したイメージで、今のところ30万円ほどの費用がかかる見込みということで、監視カメラシステムはじめ他のセンサーと価格で競合することになるだろう。やはり、人間を監視対象としたシステムへの応用が最もこの技術の特徴が生きるのではないかと思われる。

 ビッグデータ時代といわれる今日において、プライベートデータの取り扱いにはますますデリケートな配慮が必要になる。その中にあって、一切プライベートデータを取得することなく人間行動の監視が可能なこの技術は、1つの方法論としても重要なものといえそうだ。

関連するキーワード

レーダー

 Radio Detection And Rangingの略語であり、電波による探知と距離測定を行う技術のこと。主にマイクロ波かミリ波が利用され、電波を発射する送信機と、その電波の反射波を受け取る受信機を組み合わせて使う。測定できるのは対象範囲の金属や人体、水などで、それがあるところの距離と方位が分かる。電波は可視光線よりも波長が長いので、霧の中などの視界が利かない環境でも遠くにあるものが検知可能だ。

「混雑監視レーダー」との関連は?

 混雑監視レーダのレーダーモジュールは、移動体検知センサー用として認められている無線免許が不要な「特定小電力無線局」に当たる、技適マークを付与されたものとなっている。移動体検知センサーとは、主として移動する人または物体の状況を把握するため、それに関する情報(対象物の存在、位置、動き、大きさ等)を高精度で取得するために使用するものであって、無線標定業務を行うものと定義されている。その目的の範囲であれば、自由に設置して利用可能である。

カメラを利用した「人流統計情報」取得実証実験

 本文で触れているのは、2013年に独立行政法人情報通信研究機構(NICT)が計画していた「大規模複合施設におけるICT技術の利用実証実験」のこと。大阪駅ビル内に92台のデジタルビデオカメラを設置、同所を通行する一般利用者を撮影した上、災害発生時等の安全対策への実用に資する人流統計情報が作成可能か否かを検証する実験だった。

 しかし、発表に対して新聞や市民団体から懸念の声が上がり、中止を要請される事態になった。法的な正当性や社会的な不安への検討が行われ、2014年8月に第三者機関の「映像センサ使用大規模実証実験検討委員会」による調査報告書が公表された。カメラによる個人撮影とそのデータ利用に関する国内の議論が高まる1つのきっかけになった。

「混雑監視レーダー」との関連は?

 カメラによる監視に付随するプライバシー権や肖像権の問題、一般人の嫌悪感や不安感の元になるプライベートデータをどのような形でも取得しないのが混雑監視レーダーの特徴だ。用途は限られるが、カメラによる監視の課題を回避できる1つの手段となる。

技適マーク

 電波法の技術基準に適合している無線機であることを証明するマーク。無線局の免許を受けずに利用する場合は、無線装置にこのマークがないと国内で利用できない。また無線局免許を申請する場合でも、このマークがあると手続きを大幅に簡略化できる。

「混雑監視レーダー」との関連は?

 混雑監視レーダーのレーダーモジュールには無線局免許がいらない「特定小電力無線局」の中の「移動体検知センサ」として技適マークを取得した機器が使われている。

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