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まるでリアルタイム「人群」探知機、「混雑監視レーダー」とは?5分で分かる最新キーワード解説(1/3 ページ)

人体の電波反射をグラフ化して、混雑度レベルを自動判定する「混雑監視レーダー」が登場した。魚群探知機ならぬ「人群」探知機の全貌とは?

» 2016年04月06日 10時00分 公開
[土肥正弘ドキュメント工房]

 個人データを一切取得せずに、特定エリアの人の混雑度をリアルタイムに監視する「混雑監視レーダー」が登場した。明るさや気象条件にかかわらず、人体の電波反射をグラフ化して混雑度レベルを自動判定する。まるで海の魚の群れを探る魚群探知機のような技術だ。

 カメラやBLEビーコンなどが利用できない場所や条件でも機能が発揮でき、プライバシー侵害の心配もない新しい監視手法は、人の行動のビッグデータ解析にまつわる課題解決への一布石となるかもしれない。

「混雑監視レーダー」って何?

 24GHz帯の小電力な電波を特定のエリアで発射し、その反射波を受信して、エリア内の人の混雑度をリアルタイムに判定、表示するシステムだ。2016年2月、NECマグナスコミュニケーションズ(以下、NECマグナス)と光波、ナビッピドットコム(以下、ナビッピ)が技術実証を発表した。NECマグナスのネットワークSIの技術を生かし、レーダーモジュールの光波、地図情報サービスのナビッピと協力した成果だ。

レーダーモジュール 図1 実験で使われたレーダーモジュール(出典:NECマグナスコミュニケーションズ)

 まずは実験システムを見てみよう。図1は、実験に使われたレーダーの送受信機だ。手のひらサイズ、ちょっと厚めのタバコの箱のような形状で、重さもタバコ箱と同等の印象だ。前面中央に見えているのがレーダーの送信用と受信用のパッチアンテナだ。レーダーと聞けばパラボラアンテナを連想してしまう筆者には軽い衝撃だった。

 レーダーモジュールを人の身長よりも高いところに取り付け、別に設置された制御ボックス内の制御PCにより、対象エリアに電波を飛ばし、その反射を検知してデータを取得する。データ量が膨大になるので、制御PCは余計なデータをそぎ落とし、解析用のシステムへと制御ボックス内蔵のルーターを介して送信するという仕組みだ。

レーダーモジュールと制御ボックス 図2 実験でのレーダーモジュール、制御ボックスの設置例(出典:NECマグナスコミュニケーションズ)

 実験はNECマグナスの敷地内の道路で行われた。同時に実験用に撮影したカメラ画像と、計測結果をグラフ表示したものとを比較のために並べて表示したのが図3である。

混雑度レベル判定実験の様子混雑度レベル判定実験の様子 図3 混雑度レベル判定実験の様子。左図は混雑度レベルが低い場合、右図は混雑度レベルが高い場合(出典:NECマグナスコミュニケーションズ)
混雑度判定画面の例 図4 混雑度判定画面の例(出典:NECマグナスコミュニケーションズ)

 グラフ部分を詳しく見てみよう(図4)。横軸が装置からの距離、縦軸が反射した電波のレベルを示している。グラフの赤い線は、人がいない状態(初期状態)の電波反射のレベルであり、緑の線は、計測時のリアルタイムデータ、黄色の線は、初期状態と現在の状態との差を表している。

 その右側にある「判定結果」は、管理者があらかじめ設定した「混雑度レベル」を示すメーターだ。図3のように、人が数人程度なら混雑度レベル3、十数人ならレベル8というようにレベル判定をリアルタイムに表示できる。各レベルの設定は管理者が自由に行える。

 お分かりの通り、このシステムは正確な人数計測を意図したものではない。あくまで混雑度を測定し、レベルを判定するものだ。「人が多い」か「少ない」かは、場所により、目的によって異なる。混雑度レベルは、実際のシーンを測定し、適切なレベルしきい値を設定することになる。

 レーダーにより判別した混雑状況は、クラウド上の地図情報サービスと組み合わされ、スマートフォンやPCなどのWebブラウザ、あるいはデジタルサイネージなどにリアルタイムに表示できる(図5)。その情報を見れば、さまざまな施設内や屋外の特定エリアでの混雑状況を利用者が即座に把握できることになり、混雑回避が合理的にできるというわけだ。

サービスイメージ 図5 混雑監視レーダーによるサービスイメージ(出典:NECマグナスコミュニケーションズ)
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