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インメモリ? クラウド? データベースの新技術とライセンス問題を整理するIT導入完全ガイド(3/3 ページ)

» 2016年06月15日 10時00分 公開
[宮田健キーマンズネット]
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各社のクラウド化への対応

 今や個別に最適化したシステム運用体制を維持するのはコスト面、人的リソースの面で難しく、データベースシステムといえども、例外とはいえなくなってきている。一時的な負荷への対策やバックアップ、フェイルオーバーサイトとしてパブリッククラウドを利用するケースは少なくない。主要な商用データベース製品ベンダー各社ともクラウド対応を進めているが、アプローチが異なっている。ここでは概要を整理しておこう。

Oracle Database 12c

 オラクルのクラウド環境へのアプローチはコンテナ技術やプラガブルデータベースといった概念から分かるように「データベースの運用」の自動化や効率化を重視したものだ。また、オラクル自身がPaaSやIaaSとしてデータベースサービスを提供しており、データベーススキーマ単位で利用できるサービスや、Exadataなどのデータベース専用マシンを使ったサービスもある。いずれも、Oracle Databaseユーザーを前提としたサービスといえる。

 ユーザーからすると、データベース管理ツールである「Enterprise Manager」を介して、「コンテナ」単位で複数の「プラガブルデータベース」を一括して管理できるようになる。その際、コンテナの上のプラガブルデータベースの実態がオンプレミス/クラウドのいずれにあっても、まとめて操作できる。

図4 Oracle CloudのWebサイト 図4 Oracle CloudのWebサイト

SQL Server2016

 オラクルが提案するクラウドとは逆のパターンでハイブリッドクラウド環境を提供するのがSQL Server 2016だ。マイクロソフトでは、自社で展開するクラウドサービス「Microsoft Azure」上で「SQL Database」を展開している。SQL Server 2012までは、両社は「似て非なる」実装だったが、SQL Server 2016はSQL Databaseと同じものが提供されるようになる。

 また、前編でも言及した通り、SQL Server 2016では「Stretch Database」というMicrosoft Azure上のコンピュータリソースを柔軟に利用できる機能が盛り込まれる。

図5 SQL Server 2016の機能イメージ 図5 SQL Server 2016の機能イメージ(出典:SQL Server Blog)

 オラクルが考える「オンプレミスの延長としてのクラウド」もマイクロソフトが考える「クラウドネイティブな設計をオンプレミスに延長」するアプローチも、全く同じアーキテクチャの環境をクラウドにも置くことで、管理を共通化し、リソースの調達を自動化していこうという考え方は同じだ。

SAP HANA

 SAP HANAは開発環境でのみMicrosoft Azureを利用できたが、2016年5月にはついに本番環境でも動作を保証できるようになった(AWSなどは既に認定済み)。SAPとマイクロソフトはパートナーシップを強化しており、Office 365のようにマイクロソフトが提供するクラウドサービスとの連携もより緊密になることが発表されている。

 SAP自身も、HANAをPaaSとして利用できる環境を用意しており、クラウド対応についての選択の幅が広いといえるだろう。

図6 SAP HANAの認定IaaSプラットフォームには、AWSやMicrosoft Azureの文字が並ぶ 図6 SAP HANAの認定IaaSプラットフォームには、AWSやMicrosoft Azureの文字が並ぶ(出典:SAP)

「新技術の取り込み方」「どう使っていけるか」の包括的判断が必要な時期に

 ストレージを構成するハードウェアは日々進化しており、それを置き換えるだけでも大きな高速化が実現できる時代になった。さらに各社データベースエンジンも性能を向上し、それら最新のハードウェア技術を享受できるよう、アップデートしている。

 そのため、もし現在データベース処理の高速化を狙っているのであれば、まずは「フラッシュストレージ」などの導入を行うというのが1つの解になる。そしてシステム更改時にデータベースエンジンおよびストレージの機能を最大限に活用するため、現在利用しているデータベースエンジンのアップグレードに追従することをお勧めしたい。

 また、現在ではデータベースソフトウェアのライセンス体系の変化や、クラウド利用における各社のポリシーが明確になってきている。長期的なシステムの保証を得るために、あるいはクラウドのメリットを享受するために、今後数年のデータベースシステム更改では、データベースそのものを乗り換える判断が必要な場合も出てくるだろう。

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